第21話 次なる目的

「お、おはよう、レナ」


「何してたの?」


 相変わらずレナの外見には慣れない。いや、一緒にいれば徐々に慣れるのだが、一度ログアウトするとそれがリセットされるような感覚だ。


「レベルが20になったからな。職業を追加してた」


「へぇ! 何にしたの?」


急所鑑定士アプレイザー・ウィークネス


「急所鑑定士……聞いたことないわね。やっぱり特殊な職業?」


「多分ね。取得条件が『職業:踊る戦士ソード・ダンサーを取得済みの魔物系種族』だっはず」


踊る戦士ソード・ダンサーってのがそもそも聞いたことないわ。私、これでも結構調べてるつもりなんだけど……」


「それだけレアってことか」


「そういうことね。多分運営はレベル80とか90になったときに取得させるつもりだったんじゃない?」


「そうそう、それに伴って、EXスキルってのが手に入ってな——ステータス」



氏名:ミナト

種族:上位百足人グレーター・センチピートマン

職業:百刀流ハンドレッツ踊る戦士ソード・ダンサー急所鑑定士アプレイザー・ウィークネス

レベル:20

HP:370/370

MP:290/290

筋力:895

防御:248

魔力:310

魔防:175

素早:1567

器用:750

幸運:654

スキル:回避lv2、隠密lv2、斬撃lv4、疾走lv3

種族スキル:炎脆弱lv5、超マルチタスク、精密動作lv1

EXスキル:急所鑑定

称号:ユニーク個体


 

「この『急所鑑定』ってやつ」


 俺はレナにステータス画面を共有する。


「なるほどね。多分、急所鑑定士アプレイザー・ウィークネスって職業は、実質このEXスキルを取得するためのものなのよ」


「というと?」


 いまいち理解が追いつかない俺に、レナは説明を続けてくれる。


「急所鑑定士って名前からして、相手の急所がわかる職業でしょ? そしてそれはこの急所鑑定ってスキルも同じ。この職業は急所鑑定ってEXスキルに依存してるのよ。きっと」


「職業の代わりにEXスキルをもらったって感じか?」


「まあ感覚的にはそんな感じだと思うわ」


「つまり損したってこと? もしかして職業選び失敗してる?」


「そんなことないわよ。むしろ急所を感知できるっていう明確なメリットがあるのはプラスよ。……例えばあなたの百刀流ハンドレッツって職業も、明確にメリットを感じたことはあまりないんじゃない?」


 言われてみればそうかもしれない。動きが滑らかになったりというのは感じるが、武器を2つしか装備していない現状では、明確なメリットを享受しているとは言い難いかもしれない。


「その点、常に相手の弱点がわかるってのは強力な武器よ。……何よりその希少性が羨ましいわ」


 これには俺も大きく頷く。やはりゲーマーである以上、希少性の高いレアものに惹かれてしまう。


「詳細を見てみましょうよ。急所鑑定の」


 レナに促され、俺は急所鑑定の詳細を表示させる。



急所鑑定

 常時発動型パッシブスキル。

 敵の急所を鑑定し、様々な色で視界に表示させる。

 以下はダメージ倍率。

 黄→1.1〜1.4 緑→1.5〜1.9 赤→2.0〜



「へぇ、律儀にダメージ倍率まで表示してくれてるのね」


「思ったより便利かもな。このスキルは」


「そうね。羨ましいくらいよ」


「そういえばレナも20レベル超えたんだよな? 何にしたんだ? 職業」


「何も面白くないわ。魔導士ハイ・キャスターよ」


魔法師マジック・キャスターの上位職だったよな?」


「そうよ。今後魔法で戦う以上、いつかは取らざるを得ないわ」


 道理だな。必須職業は今のうちに取っておいた方がいい。


「で、これからどうする? カルティエ大森林からは出るんでしょ?」


「そうだな。……とりあえず、ロイを呼びに大岩に戻ろう。ユーライにも挨拶をしたいしな」


「それもそうね」


 俺たちは大岩に向けて歩き出した。





「これはミナト様。昨日は大蛇を討伐なされたようで」


 出迎えてくれたのはユーライだった。


「あぁ、お陰で上手くいったよ」


 あれは本当に上手くいった。いろんなものが俺たちに味方してくれた。


 そんな話をしていると、大岩の中からロイが出てきた。


「お、おはようございます、ミナト様、レナ様」


「おはよう、ロイ」


「おはよう、ロイくん」


 どうやらレナはロイがお気に入りのようで、『小さいムカデって可愛いよね』などとふざけたことを言っていた。そもそも、現実世界のムカデから考えればロイはバカデカい。


「今日はこれからのことを話そうと思ってな。大岩からしばらく離れることになるかもしれないし、それも含めて」


 さっきレナに言った通り、俺はこのカルティエ大森林から出ようと思っている。そうなると必然的に、ロイも大岩や他のムカデたちと離れることになる。

 無理強いするつもりはないが、多分、ロイはついてきてくれるだろう。


「は、はい! 大丈夫です。覚悟は出来てますから」


 ふんす! とでも音が鳴りそうな気合いの入った声でロイは返してくれる。


「それで、どこに行くつもりなのよ」


 レナが問う。


「俺、やっぱり人間の街に入りたいんだ」


 俺の一言に、ユーライ以外の2人が驚愕に顔を染める。

 ユーライには少しだけこの話をしていた気がする。


「無茶よ! すぐに狩られるだけだわ」


 レナがほんの少し声を張り上げて言う。


「もちろんこのまま入ろうなんて思っちゃいない。考えがあるんだ」


「へぇ。教えてくれる?」


 少し取り乱したレナだったが、すぐに冷静さを取り戻し、今度は興味深そうな視線を俺に向けた。

















 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る