第3話 いよいよ初顔合わせっ! その前に………

 想いよ届け、きっと良い返事が貰える筈だ。


 雪香(メール)「わぁ………。とても綺麗な桜ですね、ありがとうございます。お陰で癒されました」


 好感度が確実に上がったであろうと思える返事を読んで、遂に俺は次の高い階段ステップを踏みたいと思わずにはいられなかった。


 GW初日、例の煽ってきた友人主催のカレーコンペなるイベントが開かれる。コンペと言っても、要は自信のあるカレーを持って八重桜を見ながら楽しくやろうぜという企画である。


 これに雪香さんを招待する、ハッキリ言って無茶が過ぎると自分で思うが、いきなり二人で会おうよりはワンクッション置いたつもりだ。

 ……とは言え彼女に取ってみれば、まるで知らない人だらけ。正直ダメ元でメールを送る。


 カレーコンペの開催地は茨城県の岩間いわまという場所。雪香さんの家も同じ千葉だが俺の家より南の方だ。

 もし上手くいったら此方から車で送る間は二人でいられるかも知れない。


 雪香(メール)「えっと……分かりました。では友達を誘ってみますね」


 ――ちょ、マジか!? え、友達……来てくれんの?


 これはきっと面白いから後日談を少しだけ明かそう。雪香さん、それはそれは色んな友達に声を掛けて「そんなどこぞの馬の骨とも分からない人達に会いに行くなんて絶対やめなよっ!」………とまあ相当反対意見が多数を占める中、苦労したそうだ。


 然もこの話、結婚後のパーティーにお越し頂いた別の御友人代表から明かされ、そのどこぞの馬の骨と揶揄やゆされた俺の友人達が「違いない」と大いに爆笑したものだ。


 雪香(メール)「友達一人都合がつきましたから行きます。そちらの最寄り駅まで行くので宜しくお願いします。可愛い友達なので期待して下さい(笑)」


 ――決まった……。マジか、正直お友達より雪香さんに逢いたいんだけど、いきなり二人っきりよりは楽かも知れない。


 雪香さんの裏の苦労はどこ吹く風、ところで今んとこ未だに互いの写真を晒してはいないのだが、俺の脳内では既に理想の女性像が出来上がっていた。


 これで調子づいたのか、何しろ埋まったのはGW初日の予定だけ。5月3日からは再び休みだ。

 もっとも向こうは夜勤とかあるからその限りではないのだが無謀にも次の予定をぶち込んでアプローチを試してみる。


 雅樹(メール)「5月3日から5日の間で空いてませんか? 南房総をドライブなんていかがでしょうか? 花摘み出来る公園と良い喫茶店を知ってます」


 俺はまあぶっちゃけなので、こんな無茶を送った訳だが、今になって考えてみると「可愛い友達……」を引き合いに出した雪香さんを試そうとしたのかも知れない。


 ――要は"これはデート、その可愛い友達じゃなくて僕は貴女を誘っている"というカマかけだ。


 これに果たして応じて……くれた、実に拍子抜けする程アッサリと。5月3日、ドライブデートすら決まった。こんなに充実した思いで迎えるGWは人生で初めてだ。


 ――後はカレーを全力で作ろう、おっとその前にBBQばかりしてニンニク臭い我が愛車をどうにかせねば……。


 ウキッウキが服着て歩いているような状態で迎えた前日、不幸が俺に降りてきた。

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