第31話
「えっ……?」
「リーユ君……キミ、本気で言ってるの?」
「リーユ様、何を言っているのですか!? このクエストはお二人のようなSランク冒険者のみが受注できませんし、あなたのような子どもが遊び半分で行っていい場所ではありません!! 自殺行為ですよ!!」
アリシアお姉さんは呆然と、リーシアお姉さんは小首を傾げ、そしてルナお姉さんは強く𠮟る、という三者三様の反応が返ってきた。
ルナお姉さんが僕に対してムチャ怒るのは当然だ。
お姉さんたちからしたら、僕はただの子どもでピクニック感覚でついていきたいと思われてるのだから……。
でも、違う……違うんだ。
お姉さんたちが討伐しようとしている不死鳥は……とても危険だ。
おそらく二人では、攻略はできない。
「確かにルナお姉さんの言う通り、自殺行為に見えるかもしれないけど……僕は本気だよ!」
「「「………」」」
「それに、Sランクの冒険者しか受けられないなら、僕がお姉さんたちのパーティーに入れば問題ないよ!」
「「「………!!」」」
僕は目を見開いているお姉さん三人に、頭を下げてお願いをする。
「お願い! 僕をアリシアお姉さんとリーシアお姉さんのパーティーに入れて!」
「いいよ」
「「リーシア(さん)!」」
「えっ……」
今……いいよって……。
そんなあっさりと認めてくれると思わなかった僕は、おそるおそる頭を上げる。
すると、リーシアお姉さんが微笑みかけて、頭を優しくなでなでした。僕はそれがとても気持ち良く、目を細めてしまう。
「よしよーし……」
「リーシア……どうして」
「そうです、なぜお認めに……」
不安いっぱいの顔で二人が尋ねると、単純なことだよ、とリーシアお姉さんが僕の顔を見下ろしながら言葉を続ける。
「一緒に冒険してみたい。ただ、それだけだよ」
「えへへっ、やったー!」
冒険してみたい、その言葉は僕にとって嬉しいものであり、言われてみたいセリフでもあった。
それをサラリと言ってしまうリーシアお姉さん……めちゃくちゃカッコイイ!!
そのため、両手をワーイ! ワーイ! と挙げて喜び全開。
すると、アリシアお姉さんとルナお姉さんは、どうしてか重たい溜息を吐いた。
「もう何を言っても無駄のようですね……。わかりました……一緒に私たちと冒険いたしましょう」
「ほ、本当に……大丈夫なんですか?」
「大丈夫だよ! 僕はこう見えても、スッゴく! 強いんだからね!」
アリシアお姉さんに尋ねるリーシアお姉さんに、僕は胸を張ってそう言った。
「それは楽しみだね……ルナ、リーユ君を私たちのパーティー【疾風の花園】に加わる手続きを」
「は、はいっ!」
ルナお姉さんは急いで、受付カウンターの奥の部屋へ向かった。
「お姉さんたちのパーティー……【疾風の花園】って言うんだ……お姉さんたち綺麗だからよく似合ってる! とてもピッタリだよ!」
「ふふ……ありがとうございます」
「リーユ君は女性を褒めるのが上手だけど……将来が心配……」
「えっ? どうして?」
女の人を褒めたら……ダメなのかな……。
そうリーシアお姉さんの言ったことについて考えていると、アリシアお姉さんが僕をお姫様抱っこした。
「つまりですね……私たちのような女に……パク~っと……食べられちゃうのですよ……」
がお~! とアリシアお姉さんが、ワンちゃんのような可愛い笑顔をする。
「あははっ! パク~って何それー! あはははっ!」
アリシアお姉さんの言ったことがおかしくて、僕は腹を抱えて笑い声を上げる。
食べられることが心配ってよくわからないけど、アリシアお姉さんって真面目で正義が第一!って感じがしたから、そんなユニークなところを見たら笑っちゃうよ。
でも、楽しく冒険できそうだ……二人のお姉さんと一緒なら。
そう思っているとルナお姉さんが戻って来て、手続き完了しました、と僕たちに報告する。
「ありがとう、ルナ。それじゃあ私たちは、早速討伐しに向かおう」
「うん!」「えぇ!」
アリシアお姉さんにお姫様抱っこされたまま、僕たちはギルドの出入り口へと歩き出す。
「どうかお気をつけて! ご武運をー!」
背後からルナお姉さんに声を掛けられたので、僕はちらっと顔を出し笑顔で手を振った。
すると、それに気が付いたルナお姉さんが、笑顔で手を振る。
それを見て、冒険者って感じがするー! と感動するけど、すぐさま感情を切り替え前を見据える。
さて、不死鳥さん……これから君を倒しに行くのは、僕が加わった【新生・疾風の花園】だよ……。
よって君の生命のカウントダウンは、今まさに始まっているのだよ……。
クックックッ……首を洗って待っていたまえ……って、これって悪役みたいだよね。
ここは本業に戻らず、素の僕に戻そうか。
というわけで―――。
「アリシアお姉さん! リーシアお姉さん!」
ギルドを出て早々に僕がそう言うと、二人は不思議そうに僕を見る。
「どうかしましたか?」
「やっぱり不安?」
ううん、と言って僕は首を横に振る。
「僕がお姉さんたちのこと……絶対に、守ってあげるからね!」
「「………!!」」
二人は目を見開いてから、互いに顔を見て頷く。
そして、僕に微笑みかけて、こう告げられた。
「よろしくお願いします!」「よろしくね」
「……! うんっ!」
僕は二人にとびっきりの笑顔をして、不死鳥討伐へと向かうのだった。
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