第21話
「エルメダはこれからどうするの? ずっとここにいるの?」
僕はエルメダのことを見ながら尋ねた。
えっ!? スッポンポンのエルメダのおっぱいを見たら危ないよ!
目に毒が入っちゃうよ!……と思うよね。
―――でも大丈夫!
僕が≪収納魔法≫から取り出した体を隠せるほどの大きなローブをエルメダに渡したからね。
なので、現在の僕は目に毒が入らずにエルメダの美人なお顔を見ながらお話しができるのだ。
「も、もうこんな暗い所にいるのは……寂しいである……」
エルメダは恥ずかしいのか顔を真っ赤にして俯いた。
僕はその言葉を聞いて微笑んだ。
だって、あのプライドの高い竜の一人であるエルメダが本音を話してくれたから。
僕にとってはとても嬉しいことだ。
「そっか……。じゃあさ、エルメダ。僕のお家に来るのとエルザのお家に来るの、どっちがいい?」
「絶対ユーリの家じゃ!」
まさかの即答だ。
エルメダの瞳から『エルザの家は絶対に嫌だ!』と切実な思いが伝わって来た。
本当に嫌なんだな……エルメダ。
エルメダは僕の肩を持ち、エルザの方へ振り向かせ。
そしてエルメダは……バシッとエルザへと指差した。
「こんな凶悪で凶暴な化け物女となんか一緒にいたくないわぁあ! 優しき心を持つユーリと共に我は過ごしたいのである! ぜーったいにユーリに家に行くのじゃ!」
「―――誰が……化け物ですって?」
「ヒィイッ!!」
エルザの凍えるような冷たい声と殺気の籠った眼差しにより、エルメダは僕の背中に隠れてブルブルと震えていた。
それを見たエルザはさらに殺気を放った。……背後から赤黒いオーラが見えるほどに。
「私の旦那様であるユーリ様を盾にするとは……随分と生意気なことを致しますね……。殺される覚悟はあるのでしょうか?」
「うぅ……ユーリぃ……たすけてくれぇ……こわいであるよ……」
エルメダが、ひょっこりと顔を出し、涙目で僕を見た。
これまで、エルザに怖い目に遭わされても、助けを求めて来なかったエルメダが、助けを求めた……。
ま、まさかそれほどまでに追い詰められていたのか……エルメダは。
「エルザ、僕たちは友達同士なんだからさ喧嘩をするのはもうやめうよ」
「ですが! この馬鹿トカゲはユーリ様を殺そうとしたのですよ! 許せるわけないじゃないですか! 私の愛する人を傷つけて……!」
エルザは今にも泣き出しそうな悲痛な面持ちで僕を見た。
その顔を見て僕は、エルメダとの戦いを思い返した。
「……まぁ確かに、斬撃は通じなくて、ふざけてるの!って思ったし」
「ぐふっ!」
「渾身の大魔法も通じなくて、バカ強いじゃん!って思ったし」
「ぐふっ…!」
「おまけに死にかけるほど岩壁に吹き飛ばされたり……散々だったよ……エルメダとの戦いは」
「ぐっふ!」
ついにエルメダは、僕による精神を破壊する―――皮肉口撃に耐えられず倒れた。
「す、すまなかった……ユーリ……」
「ははっ! 冗談だよエルメダ! ごめんね?」
エルメダは僕に手を伸ばし、死にかけ寸前のかすれ声に告げた。
それに僕は微笑み、エルメダの差し伸べた手を掴み、立ち上がらせる。
そして、悲しく佇むエルザのほっぺに手を……優しく添える。
「エルザ、僕はエルザのおかげで無事、生きているよ。だからさ―――エルメダのこと許してくれないかな? まぁ結果論になっちゃうけどね」
僕は「あははっ」とエルザに笑いかけた。
「ユーリ様……」
「それにエルメダも反省しているようだし……。そうだ! 二人も握手しなよ! そうすればきっと、エルザも許せるし、エルメダもエルザを怖がらなくて済むよ! どうかな?」
僕はブンッブンッと素早く首を振り、二人の顔を見る。
「わ、我はしてやらんこともないぞ……」
「ほんとっ!」
背後から聞こえたエルメダの照れ臭そうに声に、僕は首だけ動かしエルメダを見た。
すると「ふんっ!」と、どこかのツンデレさんみたいに、そっぽ向いた。
「エルザはどうかな! 仲直りの握手……してくれる?」
「今すぐにでも始めましょう」
僕が上目遣いでエルザを見つめると、エルザはキリっとした声で返した。
「やった! それじゃあ早速、始めよう! エルメダ、こっちに来て!」
僕はエルザから少し離れ、エルメダに向かって手招きをした。
そして、エルメダとエルザはご対面し、エルザは握手をしようと手を差し出したのだが、エルメダは恥ずかしいのか中々、手を差し出そうとしなかった。
「はぁ、じれったいですね」
それを見兼ねたエルザは、自らエルメダの手を掴み握手を交わした。
「む、むぅ……」
「あははっ! やったね!」
不満気な声を出すエルメダであったが、僕は仲の悪い二人が握手をしたことに喜びの声を上げ、僕も自分の手を重ね握手に参加した。
「仲直りもしたし! エルメダは僕のお家に来るから、そのための作戦会議をしないとね」
「作戦、じゃと?」
「あなた、馬鹿なのですか? そんなどこの馬の骨とも知らない女性かつ、角や尻尾がついているあなたを連れて帰れば、騒ぎになるに決まっているではありませんか?そんなことも分からないのですか? あ・な・た・は」
「むき~~~っ!! 何よ……小娘っ!!」
「まぁまぁ、落ち着いて」
睨み合う二人に苦笑いをしながら仲裁した。
でも実際、エルザの言う通りなんだよな……。
さて、どのようにして連れて帰ろうか。
―――作戦を組み立てなければ。
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