第15話

 修行を始めてから一週間後、エルザがお家にやって来たので僕の部屋にて魔法を教えてあげた。


「エルザ、僕のお膝の上に座って」


「は、はい……。失礼します……」


 エルザが恥ずかしそうに椅子に座っている僕のお膝の上に座った。


「それじゃあ、おへその下を触るね」


「は、はい……!」


 何だがエルザの体温が熱くなったような気がするけど……。


 気のせいか。風邪をひいて様子じゃないし。


 なので僕は、気にせずエルザのおへその下を撫でた。


 すると、エルザの体がビクッと震え、息を荒げていた。


「はぁ……んっ……はぁ……」


「どうかな? おへその下、温かい?」


「は、はい……。とても…温かいです…はぁ……」


 おっ! どうやらエルザは魔法の才能があるみたいだ。


 いや、僕の教え方が上手だからかもしれない。


 もしかして僕ことユーリは、教える才能を持っているということになる。


 それが本当かどうか確認してみよう。


「次はその温かいのを全身に広げようか」


「そ、それは……どうやるのですか……?」


「それはね、こうやるんだよ―――」


 僕はエルザの少し膨らんだおっぱいを大きく撫で回した。


「~~~~~~っ!!!!」


 あれ? さっきよりも体温が一回り熱くなったような。


 瞬間、僕はあることに気が付いた。


 あっ! そういうことだったのか!


 エルザの体温が熱くなってるのは魔力が全身に広がっているからだ!


 だからエルザの体温は段々と高くなって熱くなっているんだ!


 凄い発見じゃないかな! これ!


 教える才能だけじゃなくて、世紀の大発見をする学者さんの才能まで持っているなんて―――人間を超越し過ぎてる存在じゃないかな僕!!


 ううん、今そんなことに浮かれている場合ではない。


 ちゃんと最後まで教えないと!


 その義務が僕にはある!


「エルザ、熱いの全身に広がった?」


「はい……全身に熱いの広がりました。ですが…まだ行き渡っていないところがあるので―――もっと大きく撫で回してはくれませんか?」


 エルザが少し振り返り、蕩けた表情に額に汗を浮かべていた。


 そうなんだ! まだエルザは全身に魔力が行き渡っていないんだ!


 よーし、全力で撫で撫でするぞー!


「分かった! おりゃりゃりゃ―――」


「あんっ……! ユーリ様……激しい~~~っ! 

 熱いのが私の中に来てます~~~っ!」


 どうやらこれでエルザも魔法の発動できる準備が整いつつあるみたいだ!


 後もう少しだ、頑張って続けよう!



 そうして僕はエルザのおっぱいを撫で続けたのだが……。


 その光景をとある四人の女性が、ドアの隙間から背の順に頭を重ね―――死んだ顔で眺めていた。


「クソがクソがクソがクソがクソが―――」


「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね―――」


「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す―――」


「消す消す消す消す消す消す消す―――」


 その悪魔のような呟きは、僕とエルザが展開した

≪スペシャルハッピーバリア≫によって防がれ知る由も無かったのだ。


「エルザ、次は魔法を発動してみようか」


「はいっ! ユーリ様っ!」



 みんなの修行を始めたから一年が経ち、僕は9歳へとなった。


 そして、みんなにあることを伝えられた。


「私に教えられることは全て教えた。よくここまで頑張ったな……ユーリ」


「えへへっ、セリスお姉ちゃんのおかげだよ!」


 剣をマスターしたのには毎日欠かさず、素振りに型という地道な努力の積み重ねたという理由もあるけど。


 一番、大きな理由は熱心に剣術を教えてくれたセリスお姉ちゃんのおかげだ。


 まぁ、体育会系な感じがして暑苦しく感じることもあったけど……力が身に付く実感が得られたのは剣術の修行だ。そこは純粋に楽しかった。


「ゆ、ユーリ。魔法のお勉強……頑張ったね。す、すごく偉いよ……」


「ううん、僕が頑張れたのは優しく教えてくれたアリスお姉ちゃんのおかげだよ!」


 そうアリスお姉ちゃんは僕に寄り添ってくれる優しい教え方をしてくれたのだ。


 前世で言うなら“幼稚園の先生”かな?そんな感じがした。


 頑張ったら褒めてくれて分かんないところがあったらとことん丁寧に教えてくれた。


 なので、伸び伸びと僕は魔法の修行を行えた。正直、こういう何かを教える職業は向いていると思った。


「ユーリ! お姉ちゃんが一通りの学問を教えたけど! 勉強続けなさいよ!」


「勿論! 僕も知りたいことはまだまだあるからね。勉強を続けるさ!」


 ミリスお姉ちゃんは相変わらず……。うん、痛かった……。


 でも、勉強自体は楽しかった。知らないことを知るのは好きだから、飽きずに勉強を続けられた。


 いや、きっと楽しく勉強できたのはミリスお姉ちゃんの明るい雰囲気だろうか。


 僕が喜ぶとそれを人一倍共感するように喜んでくれるから勉強を楽しく感じたのだと思う。


 素晴らしいコミュニケーション能力の才能だとそう感じた。


 そして、最後に控えているサーシャだが……。


 僕はそれに緊張していた。


「ユーリ様……」


「う、うん……」


「ユーリ様がモデルとなって頂けたおかげで、私は素晴らしい作品を作ることができました……。本当にありがとうございます……ぐへっ」


 確かにサーシャは料理や洗濯などの家事全般を教えてくれた……。


 しかし、そのモデルという修行が大変というか何というか……。


 サーシャの言うモデルというのは、服をデザインするためのモデルのことだ。


 以前にサーシャが、シ〇ル・フ〇ントムハイヴのような服を作ったことがあったのだが―――それに見事ハマってしまったらしい……。


 そのため、僕のクローゼットの中身は膝小僧出した貴族服で埋め尽くされていた。


 つまりそれだけ……僕は修行と評されモデルを強制的にされ続けた。


 怖かった……物凄く怖かった……。


 あの獲物を捕らえるような鋭い視線を浴び続けるのは……怖かった!


 まっ、着心地が良いから別にいいんだけどね。


 そんなわけで僕は―――


「みんな! 僕に修行をつけて本当にありがとう! 僕、みんなに教えてくれたことを大切にするね!」


 修行をつけてくれたみんなに、心からの感謝を伝えた。


「ユーリ……!」


「ゆ、ユーリ……!」


「ユーリ!」


「ユーリ様……!」


「「「「だ~い好き!!」」」」


「むぐっ」


 そう言って、みんなは僕を囲むように抱き締めた。


 う~ん、正面と左右は柔らかくて気持ちいいんだけど誰かがどの方向に抱き着いているか分からないな……。


 でも、一人だけ分かるけど…答えないでおこう。


 今はこの一年間、修行を頑張ったご褒美をしっかり受け取ることに集中しよう。


 そうは思っても脳裏ではこう考えていた。


 さて、物語が始まるまで7年、どんな風に過ごそうかな?


 ―――楽しみがいっぱいだ。



「はぁ、我と対等となる存在は何処にも現れぬか……。つまらん世界だ……さっさと滅んで無くなってしまえ………」


 とあるダンジョンの最下層にある暗闇の中で諦めたように退屈そうに呟く何か。


 この存在の名は―――翡翠竜エルメダ。


 ≪NTR≫に出てくる七つの竜の一つで主人公たちの前に立ちはだかる敵でもある。


 しかし、エルメダは主人公たちの前には現れていない。


 なぜならエルメダは―――圧倒的な戦闘力を有しているからだ。


 その鱗には刃と魔法は通らず、加えて無限にも等しい膨大な魔力と体力……。


 とてもエルメダより遥かに劣っている人間では勝てるとは思えるはずがない。


 それ故、主人公と戦ったとしても容易に蹂躙できるほどのチート級の敵であるため、あくまで裏設定として存在している。


 果たしてこの竜に勝てる存在などいるであろうか。


 その答えを知るのは―――エルメダだけだ。





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