第14話
そのまた翌日、僕は午前にミリスお姉ちゃんによる勉学の修行、午後にはサーシャによる家事と……モデルの修行を受ける予定だ。
うぅ……。ここ数日、忙しいし大変だよ……。
そんなわけで僕は今、ミリスお姉ちゃんの部屋にて僕の隣の席に座って勉強を教えてもらっていた。
「ユーリ! 分からないところあるかしら?」
「う、ううん。ミリスお姉ちゃんの教え方が丁寧だからスゴく分かりやすいよ……」
「えぇ! 当たり前よ、私はあなたのお姉ちゃんだから!」
そう言って、僕の左腕に抱き着いた。
い、痛い……!
ミリスお姉ちゃんのちっぱいなお胸の骨がゴリゴリと僕の腕に……! 痛いよ……!!
僕はミリスお姉ちゃんに勉強を教えてもらっているが、この骨が擦られる痛みによって全く集中できずにいた。
……が、集中できない理由は他にもあった。
ぷにゅん。
勉強している時ずっと……。
ほっぺとほっぺがくっついて更に集中できない。
距離感が無いのかな?
それにずっと「ふふ……」ってニヤニヤしてるし……。
というか、そんなことを考えている間に、我慢できないくらい痛くなってきた……!
「ぐっ……!」
「どうしたのユーリ? そんな痛みに耐えているような顔して……大丈夫?」
ミリスお姉ちゃんのせいだよ!
ミリスお姉ちゃんの!
そう言いたかったが、傷つくので止めた。
なのでこう、柔らか~く濁す感じで伝えよう。
傷つかないように。
「あ、あのね。ミリスお姉ちゃんのちっぱいが当たって痛くて……その」
「ゆ、ユーリ……!」
ミリスお姉ちゃんが、衝撃の事実を知ったかのような顔をして僕から体を離した。
そして―――ミリスお姉ちゃんは瞳から涙が零れ落ちた。
あっ、やらかしたか僕!?
「み、ミリスお姉ちゃん! あのちっぱいが痛いってだけ!
嫌いってわけじゃ―――」
「う、うるさい! ユーリのおっぱい聖人! 巨乳バカ! もう~うわ~んっ!!」
「待って! ミリスお姉ちゃん……」
大泣きしながら部屋を出て行くミリスお姉ちゃんに手を伸ばすが、足が動かず追いかける事が出来なかった。
なぜなら、ミリスお姉ちゃんのちっぱいを肯定したのに、怒った理由が分からず追いかけるのは、失礼でどう謝ればいいのか分からなかったからだ。
「はぁ……どうしよう」
「どうかしたのですか? ユーリ様」
声のした方へ顔を向けると開いた扉の前に心配そうな顔をしているサーシャが立っていた。
「サーシャ……」
「今、ミリスお嬢様が走っていくのが見えたのですが……何かあったのですか?」
「………」
僕は少しだけ考えた。
ミリスお姉ちゃんと何があったのか話すことを。
でも、それで何も答えないのは余計に心配かけちゃうよね……。
ちゃんと説明しよう。
「うん…実はね―――」
僕はさっきの出来事を正直にサーシャに話した。
「それでミリスお嬢様は……」
「うん。だから謝りたいんだけど、何で怒ったか分からなくて……」
「まぁ確かに、ユーリ様がミリスお嬢様がそのことを気にしてることは分からないのは当然ですね…。
そして、それを悪気無く伝えたことも―――」
サーシャは何を呟いているのだろう?
全く聞き取れない。
しかし、僕はサーシャの言葉を待つことしかできないので待ち続けた。
すると、サーシャは暫くの間、顎に手を当て考えていると溜息を吐いた。
「……仕方ないですね。ユーリ様、クッキー作りましょう。そのクッキーを謝罪の印として、ミリスお嬢様にお渡しすることが本日の修行の内容と致します。よろしいですか?」
サーシャの問いかけにハッとなった。
なるほど! サーシャはそのことを考えてたんだね!
確かに、それならミリスお姉ちゃんと謝りに行きやすいし仲直りもできる!
「うん! 早速、作ろう!」
「はい。では、参りましょうか」
サーシャが手を差し出したので、それを掴み手を繋いだ。
そして、一緒にクッキーを作るための厨房に向かった。
その途中―――
「ぐへっ……。(ユーリ様の手)最高……!」
サーシャが満面の笑みを浮かべて、涎を垂れ流していた。
そんなにお腹が空いてるんだサーシャ。
意外と食いしん坊なのかな?
なら、せっかく作るならおいしいクッキーを作らないとね!
そう張り切りながら厨房へ向かった。
「そうです。薄~く伸ばして下さい」
「うん! よいしょ…よいしょ……」
「ふふふ……」
僕は今、めん棒を使ってクッキーの生地を伸ばしている。
そんな僕の背後からサーシャは手を重ね、生地を伸ばすのを手伝ってくれた。
何だかこうしてると……前世のお姉ちゃんを思い出して来た。
こうやって後ろから包丁を持っている僕の手に添えて、食材の切り方を教えてくれたりしてもらったな……。
懐かしい……。
そんなことを思い返しながら、サーシャに温かく見守られ、無事にクッキーを作ることができた。
「やった! できたよサーシャ!」
「はい。よく頑張りましたね……ユーリ様」
僕が綺麗にラッピングされているクッキーを持つとサーシャが頭を撫でてくれた。
よし! 準備はできた!
「サーシャ! 早速、行こう!」
「はい、行きましょうか」
僕たちはミリスお姉ちゃんを探しに向かった。
「後はここしかないけど……」
「そうですね……。残りはユーリ様のお部屋しかありませんが……。念のため、中にミリスお嬢様がいるか確認致しましょう」
「……そうだね。中に入ろうか」
そう言って僕は扉を開けると―――僕のベッドの上で枕に顔を埋めているミリスお姉ちゃんがいた。
「うぅ……。ユーリ……ユーリ……!」
もしかして、今までずっとここで泣いてたんだ……。
そこまで悲しませてしまったのか僕は……!
ミリスお姉ちゃんを悲しませたことに胸が痛くなった。
すると、僕たちが入って来たことに気づいたのか、凄い勢いで顔を上げた。
「ゆ、ユーリ……! あの…その……!」
「ミリスお姉ちゃん」
僕は目を赤くし慌てふためくミリスお姉ちゃんに近づいた。
そして、自分で作ったクッキーを差し出し頭を下げた。
「へっ?」
「正直、何でミリスお姉ちゃんが怒ってるのか分からないけど!
ごめんなさい、ミリスお姉ちゃん!」
どうかな? 受け取ってもらえるかな? 仲直りできるかな?
そう不安に思っていると―――
「うふふ……。いいよ! ユーリのこと、許してあげる!」
ミリスお姉ちゃんが笑顔でクッキーを受け取ってくれた。
「わぁ~~~~っ!
ありがとう、ミリスお姉ちゃん!
やったよ、サーシャ! 仲直りできたよ!」
「ふふふっ。良かったですね、ユーリ様」
僕が少し振り向くとサーシャは微笑んでいた。
そして、ミリスお姉ちゃんに謝罪と仲直りが出来た僕は―――
「よーし! それじゃあ、みんなで一緒に食べよう!」
「「おぉ~~~っ!」」
ラッピングされたクッキーを上に掲げると二人も同じように掲げた。
そうして、仲良く一緒に世界で一番おいしいクッキーを食べた。
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