第9話
「いただきます! もぐもぐ……」
「ふふ……」
僕がテーブルに乗っている料理をパクパク食べているとエルザは料理に手を付けず僕を見つめていた。
「ふぇるは、はふぇふぁいの」
(エルザ、食べないの?)
「いいえ……いただきます」
僕が食べるように促すとエルザは食べ始めたので、僕も再び食事を進めた。
「もぐもぐ……。ふぇるは! ふぉいふぃーね!」(エルザ! 美味しいね!)
僕がエルザの顔を見てそう言うと、エルザはナイフとフォークを置いて花柄のハンカチを取り出しそれを僕の口元に当てた。
「むぐっ」
「ユーリ様……お口が汚れていますよ……」
「っぐ。ありがとう、エルザ!」
「ふふ…。性ど……妻として当然のことですよ」
「「「「ぐぬぬぬ………!」」」」
食堂の扉からこっそり覗いている四人の女性がハンカチを噛みながら睨んでいるけど、微笑ましく食事を終えることができた。
食事を終えた僕とエルザは外に出て、庭にあるちょっとした花畑に向かった。
「綺麗ですね……。どの花も色鮮やかです」
「でしょでしょ! エルザ!
このお花さんたちを摘んで花冠作ろ!」
「はいっ!」
僕が笑顔でそう言うと、エルザが元気よく返事をしてくれた。
どうやらエルザは凄くお花さんが好きなようだ。
うんうん、連れて来た良かった。
それから僕たちは、作った花冠を交換し頭に乗せ合った。
「エルザ可愛い!」
「ユーリ様もとっても可愛いです!」
「「あはははっ!」」
「「「「ぐぬぬぬぬ!!」」」」
又してもこっそりと覗いている四人の女性が更にハンカチを噛みながら睨んでいるけど、楽しく遊んだ。
そうしているうちにエルザはお家へと帰る時間になり、屋敷の門の前で挨拶をしていた。
「また来てね、エルザ」
「はい、必ず近いうちにまた会いに来ます。それでは……」
エルザは品性を感じる綺麗なお辞儀をして、寂しそうな笑顔を僕に見せてから後ろに待機している馬車に乗った。
そして、それに続くように護衛の騎士さんたちもお辞儀をして馬車に乗ると馬車が進み始めた。
僕はその馬車に向かって手を振りながらこう思った。
最初会った時は死なないようにと思ったけど、エルザにプロポーズをしてからは、一緒に食べたり花冠を作ったりして楽しかったな。
それに何といってもエルザが飾りの笑顔じゃなくなって、本物の笑顔になってくれたことが一番嬉しかった。
もしかして…この気持ちが恋ってことなのかな?
ずっと笑顔でいて欲しいって……。
そうなると、僕とユーリは恋のライバルだね!
いやいや、それはどっちも僕だよ!
自分でそうノリツッコミをしていると、後ろから物凄い殺気を感じた。
あっ、ヤバいかも。
僕がゆっくりと後ろを振り返ると―――見たことのない形相をしたお姉ちゃんたちとサーシャがいた。
「ど、どうしたの……みんな……」
「ユーリ様……どういうことですか?」
「どうしてあの女にプロポーズなんかしたの?」
「せ、性奴隷になって下さいって……どういうことなの?」
「あの女の何処に惚れたというのだユーリは」
僕は真っ黒で虚ろな瞳をしたみんなに囲まれながらそう聞かれた。
答えるしかないよね……これは。
じゃなきゃ、この状況から抜け出せそうにないね。
僕はもう一人のユーリ…名付けて『闇ユーリ』の声が頭に聞こえて来たことを伏せて説明した。
すると、みんなは僕から少し離れたところに移動し顔を寄せて何やら話し始めた。
「ゆ、ユーリ様は……」
「性奴隷のことを……」
「お嫁さんのことだと……」
「「「「勘違いしていた……!」」」」
その光景を見てハブられたと思い悲しい気持ちになったけど、解放された安堵感の方が大きかった。
みんなの会話が終わり、再び僕の目の前に来たが様子がおかしかった。
あれ? ちゃんと説明したはずなのにどうしてまだ怒ってるの?
そう疑問に思っていると―――
「ユーリ様はプロポーズを致しました」
「その事実に変わりないわ!」
「だ、だからユーリには罰として……」
「私たちによる修行を―――」
「受けてもらいます!」「受けてもらうわ!」
「受ける……!」「受けてもらう!」
仁王立ちをしている、みんなからそう告げられた。
罰として修行か……。
そんなの当然断るに―――
「修行…受けさせてください……」
決まっているわけないので、全力で頭を下げお願いした。
そうしないと、みんな許しそうにないからね。
うん、これが最善の選択だ。
最善……なのかな?
~sideエルザ~
「はぁ…ユーリ様……好き」
「「………!」」
私が突然、馬車の中でそう呟くと護衛の騎士二人が驚きますが、そんなことは気にせず私はユーリ様を思い浮かべます。
まさか…単なる道具である私にユーリ様は人として見てくださいました。
性奴隷…としてですが……。
そう告げられた時は驚きました。
しかし、ユーリ様は性奴隷のことをこのように思っていました。
永遠に共にありたい。
来世のその来世もずっと傍にいたい、寧ろいて欲しい。
毎日愛し合いたい。
赤ちゃんを1000人作りたいほど愛し合いたい。
エルザしか愛せない。
エルザの事しか考えられない。
私をそのように愛して下さる方がいたなんて。
「ふふ……」
「「ひっ!」」
私は馬車の車窓から見える満月を見ました。
あぁ…月が満ちています。きっとあの月も私たちの愛を見守って下さっています……。
そうですよね? 愛しいユーリ様。
だから…絶対に私から
―――離れてはダメですよ?
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