第8話

 よし、僕が上手くツンデレユーリの悪役セリフを汲み取ったからユーリの思いがエルザに届き見事両想いにすることができた。


 後は8年後にある主人公覚醒イベントでアイクに勇者の力を発現させてボコられても、死亡フラグを完全に折ったから僕は死なずに済む!


 それにしても…ちゅーされたの一週間振りだな。


 前世では毎日お姉ちゃんとちゅーとしてたら何だか懐かしい気がする。


 でも…お姉ちゃんとのちゅーはエルザのちゅーとは違ってベロを入れて来たんだよね。


 僕のお口の中にベロを入れる意味ってあるのかな?


 まっ、お姉ちゃん喜んでいたし、それでいっか。


 そう僕の胸に耳を当て心臓の鼓動を聞いているエルザを見て前世のお姉ちゃんのことを思い返した。


 なぜ、エルザが僕の心臓を聞いているのか分からないけど、そろそろみんなも本格的に心配しているだろうし戻ろうかな。


「エルザ、みんなのところへ戻ろう。きっと心配しているから」


「もう少しだけ…このままでいてはダメですか?」


 エルザが寂し気な上目遣いでお願いをして来た。


 えっ、すっごい可愛い。


 何かエルザが僕のお嫁さんになるんだって思ったら凄くエルザがキラキラして可愛く見えるんだよな。


 僕もユーリと同じようにエルザのことが好きなのかな?


 う~ん、よく分からないけど―――


「少しだけだよ」


「はい……!」


 甘やかしたくなるのは確かだ。



 僕たちはお姉ちゃんたちとサーシャ、護衛の騎士さんたちが再び客間にいるのではないかと思い戻った。


 すると、僕たちの予想通り客間に戻っていたようだが、回りを見渡してみるとエルザの護衛の騎士さんたちは何処にもいなかった。


「エルザの護衛の人たちはどこにいるの?」


「あ、あの人たちは屋敷の外を探しに行ったから暫くは戻ってこないかも……」


「そうなんだ。エルザ、後で一緒に探しに行く?」


「いいえ、私はユーリ様と一緒にいたいです」


「あははっ。 嬉しいけど、ちゃんと探そう。

 エルザを守ってくれている人だからさ」


「はい……」


 うん、良かった。エルザが護衛の騎士さんたちをほったらかしにして僕と一緒に遊んでたら可哀想だからね。


 それにしても、何でみんな僕たちをぼ~っとした顔で見ているのだろう。


 すると突然、ミリスお姉ちゃんの顔がハッとし僕たちに指差した。


「あ、あなた達…どうしてそんなに仲良さそうにしてるの」


「仲良さそう?」


 どういうことだ?


「だ、だって……! 隣にいるその女、あなたの腕にめっちゃ抱き着いているじゃない!」


「「「………!!」」」


 ミリスお姉ちゃんがそう言うと、ぼ~っとしていたみんながハッとした顔になった。


 しかし、めっちゃ腕に抱き着いているか……。


 僕はエルザの顔を見ると「ふふ……」っとエルザは真っ白な頬を赤く染めて僕に向かって微笑んだ。


 確かに、今日初めて会った時はこうなるとは思わないか。


 僕もみんなも。


 だが、こうなったのにはちゃんとした理由と僕の決意がある。


 それをみんなに教えてあげよう。


 僕はエルザを抱き寄せた。


「ユーリ様……ぽっ」


「「「「なっ!!」」」」


 そして僕は真っ直ぐにみんなを見てこう告げた。


「仲良くなっている理由? 

 そんなの決まっているじゃないか! 

 それは僕がエルザに―――『セイドレイになって下さい』ってプロポーズをしたからだよ!」


「きゃっ……!」


「「「「………」」」」


 あ、あれ? 


 どうして急にみんな黙っているんだ?


 カッコ良く決めたつもりなんだけど……みんなには刺さらなかったか。


 いや、一人だけ刺さりまくっているか。


 現にその一人は僕の胸に顔を擦りつけている。


 エルザ熱いよ……僕、火傷しちゃう……。


 その瞬間、扉がノックされ開かれた。


「ユーリ様、お食事の準備ができました」


 客間に入って来たメイドがそう言った。


「エルザ、ご飯だって。一緒に食べよ」


「えぇ! ふふふ……」


 よっぽどエルザは食事を楽しみにしてたのかな?


 なら、早く食堂に向かわないとね。


 僕はご機嫌なエルザの手を取り繋いだ。


 そして、客間を出て扉が閉じられると、ドンッと膝が崩れ落ちるような音が客間から聞こえた。


「ユーリ様ぁああああっ!!」


「「「ユーリぃいいいいっ!!」」」


 そんな泣き叫ぶ声が客間の中から聞こえて来た。


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