第1話
「あれ…ここはどこ?」
いつも目を覚ます時、天井に大量に貼られている僕の写真を見て起きるはずがそれが無かった。
しかし、その代わりとして天井には高級そうな天蓋があり、横を見てみると僕を抱き枕にして一緒に寝ているはずのお姉ちゃんがいなかった。
「ふぁ~~~。取り敢えず起きて周囲を確認だ」
僕はふかふかのベッドの上で伸びをしてから勢いをつけて上体を起こした。
「う~ん…何か手掛かりはないかな……」
僕はベッドの上から部屋を見渡す。
「やっぱり、どう見ても僕のお家じゃないね。こんなに広くないし―――あっ!」
僕が部屋を見渡すと部屋の端の方に大きな鏡を見つけた。
僕はベッドから降り、すたすたと鏡の前に立つと前世の僕と同じ顔立ちではあるが、髪と瞳の色が違う少年がいた。
えっ…嘘!?
この顔! この金髪! この紅眼!
ま、まさか……僕は!
「―――ユーリ・クラリスタに転生しちゃってる!?」
何と僕は≪
≪NTR≫とは主人公がネトラレてから勇者の力を覚醒させ、女性不信になりながらも旅する中で、再び女性を愛する気持ちを取り戻し、魔王を倒し世界を救う、王道ファンタジーゲームのことだ。
ネトラレってどう意味だ? ネットリテラシー的な意味の言葉なのかな。
まぁ、そんなことよりも―――
「確か、このゲームはお姉ちゃんが僕の顔と名前が同じキャラがいるって理由で買ったゲームでなんだけど……ユーリは序盤の方で殺されたからユーリ目的でプレイしたお姉ちゃんはすぐにやめて、代わりに僕が遊ぶことになったんだ。そして……段々と思い出してきたよ……このゲームでの―――」
ユーリの末路を。
僕の記憶では、王立スターリンク魔法学園にて、主人公アイクと主人公の幼馴染で恋人のライカが一緒にいる時に、悪役貴族ユーリが無理やりライカを連れ去るんだ。
連れ去った翌日、ライカとユーリは恋人のように物凄く仲良しになって友達になって……。
何故かよく分からないけど、二人の仲良くしている様子を見たアイクが突然、勇者の力に目覚めてユーリをフルボッコにするんだ。
そこで僕はある疑問が頭に浮かんだ。
勇者の力に目覚めた理由に気になるけど、一番気になることは、どうしてアイクは怒ったのかな?
ユーリとライカが仲良くなって恋人に友達ができたんだなって嬉しいと思うはずなんだけど……。
だったらアイクもユーリたちと一緒に遊べば良かったのに。
そしたら、ユーリとアイクはまるで―――兄弟のように仲良しになると思うなぁ。
…っと話が脱線しちゃった。ユーリの末路について話を戻すね。
ユーリがアイクにフルボッコされたことで、これまで才能一つだけで勝ち続けたプライドがズタボロにされ自分に自信が持てなくなってしまうんだ。
それで、クラリスタ領で治療に専念するという理由でユーリは実家に帰って来るんだけど……ここから彼の末路が訪れる。
その末路には2つのパターンがあるんだけど……一つ目の末路への動機は分かるんだけど、二つ目の方は…僕には余りよく分からなかった。
一つ目は、悪役貴族という名の通りに相応しく、クラリスタ公爵家は領民に重税を強いてたり、安い賃金で使用人を働かせていることだ。
その重税や安月給で領民と使用人の生活が困窮し、生活を変えるため……クラリスタ家の支配から逃れるために、革命が起きたことでユーリとその両親は領民の反乱により殺されてしまう。
二つ目は、ある程度精神が回復したユーリは自室にたくさんの女の子を呼んで、一緒に大きなベッドで寝ていたら、寝込みを婚約者や姉たちに襲われて殺されるんだ。
どうして、ユーリの姉たちや婚約者は殺したのかな?
ユーリが女の子たちと気もち良く寝ているだけなのに…不思議だ。
ちなみにだか、姉たちが一つ目の革命で死ななかったのは、アイクのヒロインだから逃げ延びることができた…という話だ。
要するにヒロイン枠だから不思議な力で守られたということだ。
そしていざ、こうしてユーリの死因について説明すると…何とも共感できないから可哀想だとか思えないなぁ……。
「まさか…そんな可哀想だと思われない結末を迎えようなキャラに僕は転生を
―――痛ッ!?」
そう独り言を零していると、突然、頭痛が起こった。
「うっ…何かが……流れ込んでくる……これはユーリの記憶……?」
僕は頭の中に入って来る記憶…もとい情報を確認した。
年齢は8歳…前世の僕と同い年…つまり今は、本編が始まるのは15、6歳だから約8年前に、僕は前世の記憶を取り戻したということだ。
性格は…はは~ん、典型的な不器用な子だ。
家族や使用人たちのことが大好きなのにそれを悟られないようにツンツンしている…本当は甘えん坊気質の可愛い性格だ。
いや、おかしいなところがある。だって、余りにも作中との性格が違い過ぎる。
作中では冷酷無慈悲で全ての人を見下すと同時に敵だと思っている…そんなキャラだ。
「もしかして…本編が始まる前にユーリの身に何か起こったのかな?」
そう呟き思考を巡らせるが当然、情報が圧倒的に無いためやめた。
「なら、今の僕がするべきことはアイクの覚醒を手伝った後に起こる、死亡イベントを回避するための行動だ。―――っとその前に、優先することが僕にはある!」
ユーリの記憶を覗く中で、ユーリの家族や使用人に対してのコミュニケーションの取り方の問題。
そして、家族に対して言ってはいけないことを言ったと知った。
まずは、その謝罪をすることの方が最優先だ。
「よし! みんなに謝るぞー!」
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