第39話 夢
翌日、6人は魔法学院の校長室に集合した。
「どう、マリアンナ私の写真。綺麗でしょ。永久に校長でいようかしら」
「マリアンナ、どうにかしてくれない。毎朝同じ事を言うのよ」
「先生こんな写真より本物がいるのだから必要ないですよ。先生の美しさをこんな写真で済ませたらだめです」
「そ、そうね。じゃあ、カネヨ副校長、写真を下ろしてちょうだい」
「ヨッシ!でかしたわマリアンナ」
ダンジョンの70階層安全地帯に瞬間移動した。
以前15階層で怪我をしていた6人パーティーの冒険者も70階層に来ていた。
リサさんが私に向かって歩きながら
「あのときはありがとうございました。あれから私たちもう一度
「そうですか。それはよかった。私たちはこれから今まで行ったことのない90階層に行きます。私のことを知っているし誓約書を書いてもらってるから一緒に行動してもいいですね。
それにB級冒険者が一緒なら心強いし、何より年末が近いので皆でワイワイ騒いだほうが楽しいですしね。あ、これダンジョンオレンジです。よかったら食べてください。
ここには他のパーティーがいらっしゃるので、少し散歩しながらあの丘の向こうまで行きましょう。それでは転移しますね」
「え、どーゆーことです?」
「あ、みなさんは初めてでしたね」
「一応90階層の入口は昨日歩いて確認しましたから、場所はわかりますから転移できますよ」
「そういう意味ではなくて、転移って?」
「とりあえず行きますよ。私の回りに集まってください。人数が多いですからもう少し寄っていただけますか。
はい着きました」
「え~!本当に!」
リサさんだけでなく他の人もビックリしてキョロキョロしている。
「大丈夫ですよ。ここは90階層です。昨日来ましたから
公式にここに到達した人はいないですよ。公式の到達階数は73階層ですからね」
「そう意味ではないのですが……転移って……」
「それではまず、安全地帯があるか捜しましょう。各階層に必ずあるわけでもないようですから。水も確保したいですし、いざというときはいつでも水魔法で出せますが、ミネラル分がある自然の水の方がおいしいですからね。
できればお正月は100階層でドンチャン騒ぎをしたいので、ここからみんなで新たな食材探しをしましょう。今日は12月29日ですから、この3日間で100階層に到達することを目標とします。
遭遇したすべての魔物を倒す必要はありません。おいしそうな魔物のみでいいですよ。それと植物も採取しましょう。肉だけでは体によくありませんから」
この世界は魔力があることを除けば地球に非常によく似ている。海があり、大陸がある。そしてなによりよかったことは1年は365日で1日24時間、しかも
非常に助かっている。
「それでは、まず自己紹介しましょうか」
私たちの紹介が終わって、彼らの紹介をしてもらった。
私が代表のリサ・イイヒトといいます。商家の出です。
私はマナ・イイヒトです。姉と同じ商家の出です。
イパス・クコイテです。地方の騎士の三女です。
ヤジンカ・タマタフです。農家の次女です。
ソレガ・ドウシタです。俺は男爵家の五男だ。
チャック・シメタです。私は鍛冶屋の長男です。
パーティー名は“ヨセアツメ”です。
「それでは紹介も済みましたから、予定を変更して今からこの2日で100階層まで一気に潜ります。できるだけ肉と魚を集めます。31日は午前中植物の採取をしましょう。お風呂はありません」
「えー!温泉行かないの」
「行きません。時間が惜しいです。私の水魔法で洗い流します。大丈夫ですよ。お湯にしますから」
「マリアンナ行こうよ~」
「行きません」
「そんなに言うんだったら、もう温泉に連れて行きませんよ。
「あの~、私たちはいつも水で体を拭いていますから、お湯を出していただけるだけで幸せです」
「先生、魔法に頼り切ったらいけないんですよ。わたしは神聖キツソウ国で学びました。先生も今回学んでください」
「せっかく校長になったからもう学びたくないです」
……みんな無視している。
では、新しい魔物の発見をしましょう。
「魔牛、魔牛、魔牛……」
「おい、マリアンナ心の声が漏れてるぞ。お前新しい魔物を発見するんじゃなかったのか?」
90階層から95階層までに大きな魔物は出なかった。
この階層は海の魔魚が沢山いた。なぜ海の生物がいるのかわからないが、この階層のダンジョンはもしかして海に次元が繋がっているのかもしれない。
他の世界の次元と繋がっているのかもしれない。そう思ったのも最近ふしぎな夢を見たからだ。
”その子は現代日本と似た町並みで暮らしていた。というのも私のいた時代とき少し違っていたからだ。日本語を話しているがやや町並みやファションが一昔前だからだ。若い夫婦が2歳位の女の子に桃を与えている。
「この子は本当に桃が好きですね」
「マーマ」
「あら私にもくれるの」
「あ~ん」
「美味しいわ」
……その子は東京スカイツリーに来ていた。年は5歳ぐらいの女の子だ。
「ねえねえパパ見て建物が豆みたいに小さいよ。人が多いのにこことても綺麗だね」
「そうだな。東京スカイツリーができてまだ半年だからな」
「ねえここで暮そうよ。いつでも空が近いよ。ママよく空を見て戻れるかな……、て言ってるからここならお空が近いよ」
「そうね、そうできたらいいわね」
……その子は10歳ぐらいになっていた。服装は平民のようだ。
「アヤネ大丈夫か。お前魔法が使えるからといってそんなに無理したら体を壊してしまうぞ。俺はお前と一緒にいるだけで幸せなのだから」
「うん。ありがとう。でもいまのままじゃみんな飢え死にしてしまうわ。私のいた世界は皆が平和に暮していたの。そんな世界にしたいから」
「敵兵がきたぞ。逃げるぞ」
……その子は15歳ぐらいになっていた。辺り一面が敵兵だらけだった。味方はすでに怪我人の山だった。大きな竜が現れ辺り一面が吹き飛んだ。敵兵はすべて消滅した。少女は竜に乗り……
……少女は大きな竜と話してる。先程見た竜とは違う竜のようだ。
話の内容は分からないが……少女の両腕が光った
……彼女は戦場に戻っていた。一方的な力を身にまとい彼女は敵兵を殺しまくった。
……彼女は赤ん坊をあやしていた。着ていた服は高級なものになっていた。とても幸せそうだ。
……彼女は病んでいた。心が……
……彼女は床に伏していた。だが顔は幸せそうだ。ときどき笑っている。夢でも見ているのか
……彼女の回りには沢山の花と沢山の人々が集まっている。牧師らしき者が「偉大な魔道士アヤネ様は亡くなられました。倒れられてちょうど3年目の今日彼女は天国に逝かれました。彼女の残した功績は……。
ここで目が覚めた。
私の目からは沢山の涙が
そんな少女のふしぎな夢を見て、彼女は違う世界に転移したのかな。
次元は繋がっているのかな。
なぜそう思ったのだろう。
たかだか夢なのに……。
90階層はわりと小さな魔魚だった。ほとんどが20センチくらいだった。鯛のような魔物が沢山飛んでいる。浮いているのだ。なんでもありだ。襲ってはこないが群れをなしている。魔物蚕で簡単に網を作る。
さすがに蚕は食べない。昆虫食は赤色添加物だけで十分だ。アレルギー反応もある。みんなで走って追い込みし、私が瞬間移動で投網のようにして投げる。なかなか網が開かない。やっと10匹取った。走り回ってくたくただ。
91階層は
鯖と同じかわからないけど鯖アレルギーがあったので、この階層はスルーしてもらった。
みんなごめん。
92階層では景色が変った。
私の大好きな伊勢エビの巨大版だ。
前に食べたものと比べると3倍大きかった。それに尻尾が2本ある。
もうみんな喜んで必死になった。
ちょっと油断した。
海老が爆炎を吐くの?あわてて障壁を張ったけど先生の服が少し焦げた。お尻が見える。先生わりとかわいいパンツ穿いてる。くまさん……。
「普通のパンツならありますよ」
リサさんが親切に言ってくれた。
「ダメ。それ普通のでしょ。私のポリシーに反するの」
一度
「待って~、うさちゃんがいいかな、ぴよちゃんがいいかな、ちょうちょさんがいいかな?」
「どれでもいいでしょ。早く
ダンジョンに戻るとみんな苦戦をしていた。先生にイラッとしていたこともあり爆炎で焼いた。
「しまった。中まで焼けてしまう。刺身が……」
しょがない。
休憩時に76階層の伊勢エビはちょっと小さいけど生で捕ってこよう。
30日は99階層までしか行けなかった。先生がダダをこねて、もうあそこも汚くなっていやだから温泉に行こうよと言いストライキを起こした。
私も先生の体臭がこんなに臭いと思っていなかったから油断した。他のみんなもぜひ温泉に行こうよ。みんなの幸せのためにも、と言うの。みんな臭かったの我慢してたのね。
先生ごめんね。
”ヨセアツメ”の皆を温泉に連れて行くと、ビックリしていた。温泉日でなかったから私たち以外誰もいないけどけっこう賑やかだった。
「わー、シャンプーがある。王都でもあまり出てないのよ。それに高いしね」
「あ~、すごい、この薬風呂、温まるわ。幸せ」
「え~ダンジョンオレンジジュースまであるの。ありがとう。あなたたちと一緒できて本当に良かったわ」
先生も機嫌を直してくれたことだし、今日はここに泊まろうか。
みんなで雑魚寝になるけど、リビングに行こう。
みんなが風呂から上がるまで、直径2メートルくらいの筒を2つと1メートルくらいの筒を作った。
土魔法で作りそのままでは割れるので圧縮し水分を抜き焼成してそれぞれにお湯を入れた。
みんなの服を2メートルの筒にいれる。
当然男女別ね。
男性の下着は2メートルの筒に服と一緒に入れる。
女の子の下着は1メートルの筒にいれる。
全部の筒のお湯を水魔法で交互に混ぜる。洗剤は前もってダンジョンオリーブの実から油をとって作ってある。
固形石けんだけど混ぜるうちに溶ける。
ハーブを混ぜてあるからいい匂いがする。お湯だから早く溶ける。
お湯を入れ替え、最後は風と炎で温風を出して乾かす。
全員のものが15分で終わった。
みんな楽しんだようで温泉からそろそろ出てくる。
男性には着替場にごっそり全部おいてあるので自分のものを選んでとドア越しに声を張り上げて伝える。
女の子にはそれぞれの人用にきちんと分けておく。
先生のものはうさぎさんだからすぐに分かる。
「わあ~、いい匂い、それに何、ふわふわして、下着も真っ白だわ。ほんとうにあなた方と一緒になれて良かったわ。いい正月になったわ」
「まだですよ。明日が
私たちはリビングに雑魚寝した。空には大きな月が出ていた。
今日はお母さんの声がしないからぐっすり寝ることができる。
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