第31話 神聖キツソウ国

 使節団はフタマタ商業国家から提供を受けた船舶で移動した。


「すごいモダンな船舶だな」

「あら、ビリット、私は船名が好きだな。かわいい」

「そ~かあ、カネヨお前頭おかしいんじゃないか。フタマタナリキン号だぞ」


 神聖キツソウ国は海岸線から近い位置に首都がある。

 他国からは一番遠い位置だ。使節団が船上で3日間過ごしたある日


「王女様、船舶がこちらに向かって来ます。船舶旗から神聖キツソウ国のものと思われます。白旗を揚げています。どう致しましょう」

「わかりました。様子を見ましょう。みなさん警戒は怠らないようにしてください」


「王女様、船長が上船を求めています」

「上船を認めます」


「これはこれはマリアンナ王女様、この度の我国への使節団の訪問心より歓迎いたします。ただ、現在首都のキツソウ港は大がかりな湾岸工事を実施しております。この船舶の大きさでは入港することができません。そこでこの私がお迎えにきた次第です」


この人怪しいなあ。でもしょうがないか。


「ご挨拶後れましたが私は神聖キツソウ国筆頭神官長のノモリ・ギウラと申します。何分にも小舟ゆえお付きの方は2名までに願えないでしょうか。いえいえ皆さんのご心配はごもっともです。それゆえ私が来たのです。王女様いかがでしょうか」

「わかりました」

「王女様の許可がでましたので、私が到着次第皆様をお迎えするために早急に小舟を10艘向かわせます。それまで、ここで停泊してお待ちください」


 豚組の面々は魚釣りをお楽しみ中だったので、自由にさせてあげた。

 急ぐようだったら、港に着いて転移魔法で連れてくればいい。


 とりあえず仕事もせず部下をガミガミ叱っている老害外交官2名を連れて行くことにした。みんな船舶でのんびり魚釣りをしてね。


「お連れの方は大変申し訳ありませんが、帯刀は短剣のみとしていただけませんか。この船舶は小さいゆえ。」

「そうですか。では我らはそのようにしましょう」

「安心してくだされ。王女様は我国が命をかけてお守りいたします」


 舟は港が目視できる沖合まできた。


「きれいな港ですね。どこで湾岸工事をしているのですか」


「ガチャ、ブス、バタ」


「どういうことですか。この手枷は」

「おい、この女は転移魔法を使うと知り合いから密告があった。足枷もしとけ。」

「他の者は魚の餌にしろ」


「ジャボーン」


 従者2名は海に沈んだ。


「国王に会わせなさい。理由を聞きます」

「何を言っている。これは国王である兄の命令だ!」

「このくそ女」


 どういうわけか転移魔法も治癒魔法も発動しない。


「筆頭神官長もう止めてください。顔にそれ以上顔にいたずら書きしたら。ふははーーー。おかしくて船が漕げないですよ」

「ふう、これぐらいでいいか」


 絵の具でおかめ顔にされた。肌が荒れるじゃない。せめて化粧品を使ってよ!


「おい、首輪もしとけ。この女の能力は驚異らしい。魔力吸収腕輪と足輪も追加しとけ」

「こいつの魔力はどれくらいあるんだ。最初に掛けた魔力吸収腕輪にヒビが入っている」

「いいか、30分ごとに、1個ずつ取り換えろ。いいか一度に取り換えるな。転移魔法を使われたらやっかいなことになる」


ノモリはわたしの顔をじーと見ながら

「これだけ変顔にしたら兄も手を出すまい。ふふふははは俺の女にしてやる!」


 ノモリは恍惚の表情で目前にきた船着き場を見ていた。


「筆頭神官長、沖合の船舶はどうしましょうか」

「そのままにしとけ。へたに動いて本国に連絡されても面倒だ。そのうち始末する」


「城に戻るぞ。そいつは荷馬車にでも積んでおけ」


 この女はたっぷり楽しんでから始末してやる。兄が超ロ〇〇ンだから、そのあとで、徹底的に痛めて、あいつらに曝してやる。この女さえ始末してしまえば、アーメリア王国はいつでも陥落できる。それに今あの国には戦後賠償金がたっぷりある。人質がここにある。身代金もついでに頂くつもりだ。


「筆頭神官長、フタマタ商業国家の船舶に乗船している者にこんなことをして問題が生じるのではありませんか」

「タツ・ギウラお前はバカか、だからいつまでたっても神官長になれないのだ。フタマタ商業国家は形勢がこちらに傾けばいつでも尻尾を振ってくる。警戒することはない。インキナ共和国だって戦後処理で国内は大変なはずだ。アーメリア王国の友好国となってもすぐには派兵できん。

 今日の景色は晴れ晴れとしてる。これで大願成就だ」




 ~馬車は王城に着いた~


「兄様、例のものを連れてきました」

「国王と呼べといつも言っておろう」

「はい、申し訳ございません。兄様」

「もうよい、それより早くその布袋の中味を出せ」


 神官たちが布袋から黒髪少女を出す。


「ノモリ!なんだその変顔の女は!」

「例の女ですが。」

「お前、アーメリア王国の王女は絶世の美人と聞いとったぞ」

「ふはははははーーーもういい。そんなおかしな顔の女に興味はない」

「兄様、申し訳ありません。もう少し美人と思ったのですが」


「まあよい、手枷と足枷の場所が赤くなっているぞ。治癒魔法を掛けてやれ」

「それが兄上、両手両足と首に魔力吸収の魔道具を付けておりまして、通常の魔道士であれば魔力がはじかれてしまいます」

「筆頭魔道士であればできるであろう」

「それが1つであれば筆頭魔道士様であれば大丈夫なのですが、こいつは腕と足にそれぞれ3つずつ付けております。」

「それは困ったのう。もうよい、その変顔はそちに明け渡す。好きにせい。

 それよりまだ殺すなよ。大事な人質だからな。例の金を払わせたら、派兵する。それまでは生かしておけ」


 この女は俺のものになった。もういつでも復讐できる。すぐ殺してもよいのだが、国王の言いつけを守らないと俺の命が危ないからな」


「おい、こいつを、地下牢に閉じ込めておけ。食事は1日1回で、パンと水でよい。3日も閉じ込めておけば言うことを聞くだろう」


「手枷足枷については毎日半分ずつ交換するようにしろ。楽しみは気を長くして待つとするか」

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