第30話 それぞれの事情

 フタマタ商業国家にはダンジョンがほとんど無いためダンジョン産の希少鉱物が少なかった。特に宝石類とミスリルに至ってはアーメリア王国は大量に産出していた。


 フタマタ商業国家には金鉱山がたくさんあるため財力はある。ダンジョン鉱物の売買契約は向こう3年間はこちらの希望する価格で決まった。

 しかし、貨幣交換価値が不平等であったため実質的にはフタマタ商業国家はボロ儲けであった。


 アーメリア王国としても戦後処理でたくさんの賠償金を手にいれたが、先代王の政権が不安定であったため蓄財がほとんどなかった。それに横に細長い国であるため国境線の警備費用が財政を苦しめていた。

 国内の金山は金の含有量が少なく金山の数も少ない。いつか取り尽くしてしまう。たちまち貿易で外貨を稼ぐ必要があった。


 今回のダンジョン鉱物の売却契約は友好使節団のお手柄であった。

 ダンジョン鉱物については、限りなく生成される。

 ダンジョンはほとんどが王都周辺に固まっている。代々の国王は東海の海産物を得る利益よりフタマタ商業国家と神聖キツソウ国そしてキャデタリ皇国とセマイナ独占国家との国境警備費用の支出が数十倍の国家予算を要していることが国力を損なっていると理解していた。


 であれば、国土を小さくしてでも、オタマジャクシの尻尾を切断するほうがいいのではないかと考えた。

 国民はこれまでの国王が人民を大切にしていたことを知っている。そのような噂が出たときもたとえ軍事費で徴税が多くても負担するので尻尾を切捨てないでくれと直訴してきた。


 そうするうちに200年が過ぎていった。この国は貧乏だが住みやすい国ではあった。ドキュメントの思いは尻尾部分を手放してフタマタ商業国家にアーメリア王国のオタマジャクシの頭と隣接する土地を交換をしてもらいなるべく四角に近い形にしたかった。


 そうすれば尻尾の国民も移住させられるし国家予算の使える額が大幅に増加するから、結果敵に国民は豊になる。兵士も隣接国が減るから死亡者数も減るはずだ。

 だが誰もこのときは気づかなかった。シラユリの蒔いた種が少しずつ大きく育っていた。

 これからアーメリア王国は新たな困難を迎えることになる。

 そしてメンドウ大陸が大変な状況になっていることを誰も気づいていない。

 ただマリアンナだけは言い知れない不安な気持ちを抱えていた。



 ~インキナ共和国軍本部司令室~


 「ハーヤトチリ大佐、ビッターレ辺境伯軍の侵攻状況はどうなっている」

「はい!すでにアーメリア王国の国境を越え、明日には王国首都に到達するものと思われます」

「こりゃあ、アーメリア王国と全面戦争になってしまうな。まずいぞ。大統領からの指示はどうなっている」

「はい!至急討伐軍20万を編成し、アーメリア王国との国境沿いで待機するようにとのことです」

「おいおい、たかだか辺境軍の討伐に20万は多すぎないか」

「ヒラヒラポン大将にくれぐれも時機を誤るなと申されまして。作戦名:”俺は親父のようにはならん“と厳命されました」

「は~。一気にやるのか。あいつは軍にいるときから、“父親のようにはならん。もっとうまく立ち回る。”が口癖だった。


 あいつの父親は平民の出ながらめきめきと頭角を現して短期間で大佐までなった。

 北方方面第一師団がクーデターを起こしたとき、あいつの父親は真っ先に前戦に行くように指示されたが、わずか1万の兵しか与えられなかった。相手は3万だぞ。だがあいつの父親は奇襲作戦を

 駆使し、あと1日あれば平定するところまできた。


 そこに命令したタシマダ中将自らが支援のために3万の兵を引き連れて出兵した。と思っていた。タシマダは背後からクーデターを起こした将軍・兵士ともどもあいつの父親も殺した。


 タシマダ中将は背後から迫るあいつの父親に脅威を感じていた。クーデター軍に食事を提供していた村人は女子供を除き皆殺にした。結果、タシマダ中将はクーデター軍を鎮圧したとして大将に昇進し、国の最高勲章まで受けることが決定した。


 まあやつの栄華もそれまでだったがな。

 祝勝会に浮かれるやつに“将軍さんのことが好きになりました。私をもらってください。”と言われて本気になりやがり、部下が朝起こしに行ったら、やつは舌をかみ切られて死んでいた。


 わずか11歳の女の子は涙を流したまま死んでいた。だが顔は天使のように微笑んでいた。少女はやつが虫けらのように殺した父親の敵を討った。いや、それしか思い浮かばなかった。彼女は父と仲良く暮らしていたが天涯孤独となってしまった。


 やつは反吐へどが出るほどのロ〇〇ンだった。彼女はそれを兵士の食事を準備しているときに知った。それもあってか大統領は女好きだが巨乳のお姉さんしか好まない。


 おっと昔のことだった。“作戦名:”俺は親父のようにはならん“か。

「さてと、命令するか」

「各将校に告ぐ、ビッターレ辺境伯軍とアーメリア王国軍が衝突したら、国境を越えて両軍を総攻撃する。これは訓練ではない。いいか一人も生かすな、住民も皆殺しだ」

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