第28話 ダンタリア帝国軍と交戦
「王女様、プリット大将から前戦で戦うよう命令がきました。前戦の兵士に一言お願いします」
コサミは大佐が兵士に激を飛ばしてほしいようだ。
「みなさん。ごめんなさい。私もみなさんの力になれるように頑張ります。一緒に戦ってください」
「王女様が万能でないことは知っています。ですが王都がこのままでは陥落します。兵力に全く余裕がありません。たとえ王女様であっても敵兵すべてを相手になどできません。それに敵兵にも魔道士がいます。それでもお願いしなければいけなくて情けない」
「気にしないで。私は無理をしてでも国家存亡の危機を救いたい」
「貴族軍が到着するまでの足止めでいいのでよろしくお願いします」
「がんばる。豚組のみんなとダンタリア帝国軍とビッターレ辺境伯軍の足止めをするよ」
「ありがとうございます」
「わたしはこの生活が好きです。それにあまり長く王都を離れるとまたメイド長が寂しがってトイレの中まで入ってきてしまいます」
なんでミサコが嬉しそうにしているの?
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プリット大将から敵軍の足止め命令を受け、王都魔法学院と騎士学院に瞬間移動をし、豚組の面々と再会し、現状と作戦を話す。
「状況が不利なのはわかったよ。でもこの人数でどうやって足止めをするんだい。敵もバカじゃないよ。シラユリがいるなら転移魔法を使えることはバレてると考えた方がいいよ。
きっと指令本部は上級魔道士と騎士で固めてる。
転移した瞬間斬られるよ」
「ヒンセイ、私いいこと思いついちゃったの。
みんなには私の護衛をしてもらいたいの。
これから王都ダンジョンに移動するね」
「ちょっと35階層に行くよ」
「おい、この忙しいときにダンジョンオレンジ狩か?」
「まず、オレンジ採るね」
「やっぱりダンジョンオレンジ狩じゃないか」
「ヒンセイちがうわ。まあそうだけど。じゃあ、採ったから15階層の安全地帯に転移するね」
安全地帯で話をする。
「説明するね。このオレンジ1個を敵1,000人と思って!」
「ミラージュ先生食べてもいいですが、話が終わってから食べてもらえますか。オレンジの数が足りなくなります」
「ごべんごべん。ぶふっ」
「先生口に入れたまま喋らない」
私は地面にオレンジを置いていく。
「見ての通りダンタリア帝国軍とビッターレ辺境伯軍は王都に向かって進軍しています。
このオレンジのように縦に並んでいます。
そこで背後と正面の両面からダンジョンの魔物をけしかけます。魔物が倒されても時間は稼げます。魔物は後で回収して食べればいいですし。
みんなには、ダンジョンで私が魔法を使ってる間と、敵軍に対面したときに護衛してほしいのです。
作戦はこうよ。
魔物に近づいて10メートルくらいまで近づいたら瞬間魔法で魔物に触れて私の魔道カバンに生きたまま入れるの。
魔道カバンの中は亜空間になっているので王城くらいなら入るから大丈夫よ。
ただ生きてるから万が一のこともあるけどね。それで敵軍のすぐ後方で魔物を解き放つの」
「ちょといい?」
カネヨが質問した。
「敵軍の真っ只中に瞬間移動するのは危険じゃないの」
「そう、だから、みんなに護衛を頼みたいの。
瞬間移動した瞬間が一番危険だから私を囲むようにして守ってほしいの。魔物を解き放ったら、すぐに次の地点に移動するわ。一番危険なのは正面に移動するときよ。丸見えだからとても危険なの」
「わかったわ。私はかまわないわよ」
「キレイナありがとう」
「俺だっていいよ」
マリアンナは嬉しさのあまり思わず、ビリットに抱きついてしまった。
別にビリットが好きなわけではない。子供の条件反射だ。
「どうしたのビリット顔が赤いわよ」
「日焼けだ。カネヨ」
「始めるよ。先生ダンジョンオレンジ食べていいよ。でも皆の動きを調整してね」
「これがうまくいったらダンジョンオレンジジュース沢山作ってあげるよ。
さあ急いでいくわよ!」
説明するだけなら別にダンジョンオレンジを採りに来なくてもいいと思うんだけどなあ。“本当はミラージュ先生からダンジョンオレンジを採ってくれないと私もシーシーするよ。”と脅されたのだ。
どうして知っている?
「まず15階層の巨大魔牛よ」
「次は28階層の巨大魔イノシシよ」
「次は39階層の巨大馬虎よ」
「最後は55階層の巨大地竜よ」
「なんとか、終わったわね。1時間もかかってしまったわ。」
「みんな強くなったわね。怪我も少なかったしね。複雑骨折ぐらいだったもんね。」
「違う違う、マリアンナの異次元治癒魔法があるから怪我を気にせず思いっきりできるからだぜ。俺なんか足が明後日の方向に折れてたもんな」
「俺はお前を信じているからできるけどな」
「ありがとう。ビリット」
またまたビリットの顔が赤い。お酒の飲み過ぎ?
「それでは、現況を再確認したいので王都の軍本部に移転します」
「姫様、この度はご苦労おかけします」
「いいのいいの!プリット大将それより今どんな状況?」
「ダンタリア帝国とビッターレ辺境伯軍の両方とも王都を挟んで膠着状態です。号令待ちとは思いますが、このままでは横に膨れてしまい住民に戦火が及ぶことにもなりかねません」
「そう、まだ間に合うわね」
「説明している暇はないから、もう行くね」
「みんな!私を囲むように配置して」
「行くわよ」
「ミラージュ先生、ダンタリア帝国軍の最後尾までどのくらい距離がありますか。」
「そうね約300メートルといったところかしら」
「ではもう280メートル移動してすぐに巨大魔牛を解放します」
ビリットがマリアンナに聞いた。
「なあ、巨大魔牛が敵軍に向かっていかなかったらどうするんだ」
「大丈夫よ。解き放たれた瞬間に目の前に餌が縦列になって落ちてるのよ。食べるに決まってるじゃない。わざわざ餌のない方に行かないわ」
「お前!王族になってますます恐ろしさに磨きがかかったなあ」
「それじゃあ行くよ」
巨大魔牛は突然目の前に久々の餌が大量にあることでニャッと笑って突進した。
「ドドドドドー。バリバリ。ドーン」
「ギャーーーーーーーー」
突然の巨大魔獣出現にダンタリア帝国軍は抵抗できずにいた。
もう
特に騎士は人との戦いにはその力を発揮するが、アーメリア王国のようにダンジョンが多くないためこれほど大きな魔獣と正面から戦うことがない。
上級騎士や上級魔道士は司令官のまわりに固まっている。
一般兵士は
見るに堪えない光景が広がっている。
足止めのつもりだったが、敵軍がどんどん減っていく。
「すぐダンタリア帝国軍の正面に行くよ」
帝国軍の先頭には上級将校や指揮官はいない。
中央の安全な場所にいるのだ。
しかし、シラユリが見当たらない。
巨大魔牛が突然現れた事で、マリアンナが近くにいることがわかったようだ。
シラユリの能力ではマリアンナに到底かなわない。
そしてマリアンナ並の魔道士はダンタリア帝国陸軍第六師団にはいない。
他国いるかわからないが、他国の魔道士を捜すしかない。
残念だが間に合わない。
シラユリはマリアンナがいると直観で理解した。
逃げながら、まだチャンスはあると考えていた。
すでに種は蒔いているのだから。
少女趣味の聖人たちの国にたくさんの種を。
シラユリの転移距離は短かったが前戦から逃げるには十分であった。
その後シラユリはアーメリア王国とダンタリア帝国そしてインキナ共和国からも消えた。
マリアンナは巨大地竜を解き放った。
突然真ん前に10メートルはあろうかという地竜が現れたのだ。
ダンタリア帝国兵は一斉に火の粉を散らしたように逃げた。
だが地竜にとってはただの餌がうろうろしているだけだ。
ダンジョンの地竜はすばやい。
100メートル走ランナーではないかと思うほどである。
あたりかまわず食い散らかしている。言葉ではもう言えないほど悲惨だ。
「次いくね」
「ビッターレ辺境伯軍後方の木陰に転移したわ。先生どれくらい距離がある?」
「そうね500メートルくらいかな」
「おかしいなあもっと前に行くはずだったんだけど」
「ちょっと遠いわね。敵にはまだ連絡がはいってないみたいね。」
「後方10メートル地点まで転移するよ」
「護衛お願いね」
「巨大魔イノシシを解放解き放つわよ。辺境伯軍はキレイに整列しているから猪突猛進する巨大魔イノシシは全員なぎ倒すかもしれないわね。」
巨大魔イノシシは辺境伯軍を食い散らかすことはなかったが、その牙でまっすぐ突進していった。
兵士は牙で片っ端から放り投げられていた。
魔法使いがあわてて魔法障壁を展開したが辺境伯軍の魔道士の障壁では防ぎきれない。すべて破壊されていた。
おびただしい兵士の死体の山が築かれていく。
「次いくよ」
ビッターレ辺境伯軍の前方1メートルに転移した。
「あれ!おかしいなあ。前に来すぎた。ヤバイ。皆お願い守って」
突然前方に6人の若者が現れて、辺境伯軍は慌てていたが、すぐに攻撃を仕掛けてきた。
多勢に無勢だ。
「ちょっと下がるね」
10メートル下がるつもりが、5メートルしか下がっていない。
「あれ、またー。疲れてるのかなあ?」
「巨大魔馬虎を出すよ。こいつ凶暴だから私もどうなるか知らないよ」
馬と虎を足して2で割ったような面構えの巨大魔獣が辺境伯軍の目前に現れ、兵士を次々と餌にしていく。
いままで放った魔獣がかわいくみえるほど
辺境伯軍の兵士がどんどん消えてゆく。
もう戦争という状況ではない。一方的な蹂躙だ。
ビッターレ辺境伯軍の魔道士が巨大魔馬虎の首めがけてウインドカッターを放ったが、軽々とはじかれてしまった。スピードも密度も大きさも足らなかった。そもそも魔力が足らない。
2時間経過した。
それぞれの魔獣は満腹状態になったようで、動きが鈍い。
敵軍も攻撃しだしたが、満腹だから食べようとしないだけで、攻撃されたら魔獣も反撃仕返す。
3時間が経過した。
敵軍はもう逃げるのみだ。敵軍がまばらに散り始めたので、魔獣が民家に近くなってきた。
「みんな、私の近くに来て、今から後片付けするから。今晩はすき焼きにするからね」
「お前よくそんな気になるなあ」
「まあ、俺もすき焼きは大好きだけど」
「そうでしょう。ビリット」
いつものダンジョンの魔物狩りを楽しむ豚組であった。豚組の面々がマリアンナを守りながら魔物の近くに行き、マリアンナが魔物の首をウインドカッターで落とす」
ダンタリア帝国軍とビッターレ辺境伯軍はその光景をみて、自分たちの行為の愚かさを知るのであった。
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