第25話 ダンタリア帝国の侵攻

 今日は温泉日、いつものメンバーとダンジョンオレンジジュースを飲んでくつろいでいるところですの。

 最近の私はただの運転手とバーテンダー。


「あ~あ、癒やしがほしい」


 10月ももう終わり。

 日本ではコスモスの季節。


 そういえば花見をやってなかったわ。コサミに言って花見の準備をしてもらいましょうか。そういえばコサミの顔を見てないわね。副メイド長に言って明日はコスモスで花見をしましょう。



 突然、王都軍本部から直通通信がかかってきた。


「大変です。ダンタリア帝国が攻めてきました。プリット大将至急お戻りください」


「どこを攻撃してきた!?」


「はい、旧イイナ伯爵領です」


 油断していた。

 ダンタリア帝国は隣国のキャデタリ皇国に侵攻していたのでこちらには当分侵攻してこないと思っていた。


「姫様、至急全員を王都に運んでくださいませ」


「ミリミリ中佐、兵の規模はどれくらいだ」

「侵攻してきたのはダンタリア帝国陸軍第六師団3万人であります」

「なに!第六師団は2万人ではなかったか?」


 指揮官は名をシラユリ・ビッターレという。

 影の調査によるとシラユリはタップリ・ビッターレと結婚したことまでは分かっている。

 ダンタリア帝国内の貴族図鑑を調べたが、タップリはダンタリア帝国の人間ではないようなのだ。


 正体はわかっていない。


 シラユリはダンタリア帝国の皇太子ラズマウ・イタンヘと何度が密談をしていたようだ。

 残念ながらシラユリは皇太子と会うときは転移魔法を使って密談する。しかも短時間のため影が彼女の所在を発見することがとても困難なのだ。


 影はダンタリア帝国のすべての貴族用レストランでウエイトレスとして働いてその機会をうかがっていたため、たまたま情報を得ることができた。


 影はその内容を身振り手振りで顔を赤らめて実演してくれた。


「準備はできたの。あのときの約束は守ってもらうわよ」

「ああ、問題ない。第六師団は君のものだ」

「今日も君の左足がほしい」

「私、人妻よ」

「知ってる。それがいいんだろう」

「あなた変態ね。ビッターレも変態だけど」

「お前に言われたくない」

「親指もいいかな」

「超変態ね。嫌いじゃないけど」

「もう1万人追加してくれる?」

「小指もいいか」

「う~ん、デリーシャス!いいぞ1万人追加だ」

「あ・り・が・と・う」


 ここまでが話の内容であります。


 このとき、シラユリは”今回のアーメリア王国侵攻が成功したらダンタリア帝国を併合してから、この男は私専属の椅子にでもするか。まあ、もう少し役に立ってもらおうかしら”と考えていた。


 ラズマウもシラユリと全く同じことを考えていた。”この作戦が成功したら俺が専属の椅子になってやるか!”




 ここはアルメニア王国、王都軍本部作戦司令室。


 下士官らしき兵士たちが右往左往していた。

 ドキュメント王とプリット大将もダンタリア帝国軍の動向を確認している。


「ミリミリ中佐、今どのあたりまで侵攻している」

「はっ!プリット大将、現在のところ旧イイナ領トッテル駐屯地を突破したところであります。ただいま一部の兵士を残して本隊は王都を目指して直進しております」


「シラユリの存在は確認できたか」

「いいえ、特級逃亡犯シラユリは確認できておりません。それらしき馬車は発見しましたが、影武者の可能性もあります」


「皆様ご苦労様です。ダンジョンオレンジジュースを作りました。こんなとき何もできませんが、喉をうるおしてください」


「王女様、もったいないであります」

「姫様お休みのところ急がして申し訳ございません」


「あの~、私またトッテル駐屯地に配属してもらおうかな~?」


 無視された。


「突破されたのよね。みんなのことが心配だわ」


 今から瞬間移動して様子を見てこようかしらと考えていると


「姫様、絶対にトッテル駐屯地に行ってはなりませんぞ」

「プリット大将どうしてわかったの」

「そんなにソワソワしていたら誰でもわかりますわい」

「私はみんなの力になりたいの!トッテル駐屯地のみんなには良くしてもらったから」


「姫様にそこまで心配されてみんなきっと喜んでおりますわい」

「そうよね。それじゃ~」


「あ、姫様……」


「トッテル駐屯地のミサコ大佐に至急連絡を入れろ。姫様がそちらに行ったはずじゃ」


「絶対にさがせ」




 ~ここはトッテル駐屯地医療班のトイレの中~


 うっわ~。敵兵がいっぱい。


「あっ!誰か入ってきた」

 ここのトイレは男女共用なの?


「それにしても新しい最高司令官は人使い粗いよなぁ。あれでも女かよ。新任挨拶が

 ”なにがなんでもアーメリア王国王都を目指す。決して生き残ろうと思うな。トイレも行くな。垂れ流せ。お前たちの骨は私が捨ててやる”

 だとよ。

 だが結びの挨拶はよかったなあ。

 あれで皆の心は一つになったようなものだ」


 ”いいか、この侵攻作戦に成功したあかつきには、私との1日デート券をくれてやる。言っとくが、私は初めてだからな……(嘘だけど)……”


「俺は最高司令官のことチョット好きかも。黒のミニタイトスカートに黒タイツだぜ。あのムチで叩かれてみたいぜ。俺はいつでも最高司令官の椅子になってやるぜ。俺応募しようかな」

「ああ~!俺の背中を便器にしてほしい」

「おい、早く戻らないと、お前の血を垂れ流すことになるぞ」

「お~怖~」


「バタン」


 シラユリってあんなキャラだったかしら。


 黒のミニタイトスカートに黒タイツかあ~、ちょっといいかも。今度穿いてみようかなあ。ムチもかっこいいなあ~。四つんいにしてパンパンって一度やってみたかったのよ。


「バタン」


 また人が入ってきた。


「マリアンナ様、いらっしゃいますか~。ヤットコであります~。いらっしゃいましたらご返事ください~」


「ガチャ」


「あ、村長さん」

「違うであります。今は魔道具で村長に変装しているであります。我が輩はヤットコ大尉であります」

「ミサコ大佐からの命令で地下要塞にご案内するよう指示を受けました」

「え!ここがトッテル駐屯地じゃないの」

「ここはほとんど張りぼてであります」

「わたしは張りぼてで仕事していたのね」


「本当のトッテル駐屯地はトッテル村温泉の地下にあります。別名トッテル駐屯地地下要塞であります。ミサコ大佐からたぶん医療班のトイレにいると思うから迎えに行ってくれと言われました」


「どうしてトイレにいるとわかったの?」

「はっ!それが、”王女様は医療班の部屋とトイレ以外は行ったことないから、どちらかにいるはずだが、部屋は敵軍でいっぱいだろうからトイレにいるはずだ”と」

「そう、でもあなたよく敵軍の中に入れたわね」


「はい、私は元々トッテル村出身でありまして、敵兵のみなさんに、トッテル村名物のタロタロ芋をリヤカーに積んできてかしまして、兵士の方々に配ったんです。みなさんおいしいおいしいと言って食べてくれました。敵兵ですがうれしかったですよ。お腹が膨れたら気持ちが大らかになるじゃないですか。おかげでトイレに行きたいと言ったら護衛までしていただきまして、外で待っておられます」


「それじゃ出られないじゃないの!」

「いえいえ、ちょっと待ってください。端のトイレに一緒に入りましょう」


「あなた!!背中にまわって両足を持ち上げる気ではないでしょうね!!」


「何のプレーですか!違いますよ!」


「ここは水洗トイレ?」

「はい、ここだけ水洗トイレになっているのは、タンクの中に、よいしょ、これを隠すためなんです」

「この水筒は何?」

「待ってください、中から取り出しますね。ちょっと広げますよ。ミサコ大佐が王女様は本来のトッテル砦を知らないから位置を創成できないから転移魔法で瞬間移動することができないだろうからこれを使えと言われました」


「足元失礼します。王女さまこの魔法陣の上に私と一緒に乗ってください」


「おい!村長、小便はまだか。ほかの兵士がふかし芋をもっとくれと言ってるんだ。早く蒸かしてくれ」


「ちょっと申し訳ありません。小ではなくて大の方なんであとちょっと待ってください。すぐ終わりますから」


「さあ王女さま、いきますよ。妖艶なる天地の神々よ我が魔法陣に御力を与えたまえ、テレポーション」


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