第23話 王都軍部に異動
わたしはトッテル村の健康相談が終わって午後から出勤した。
医療班の目のまわりがまっ黒で疲れているようだったから、こっそり治療魔法をかけてあげた。
金色のシャワーが部屋全体に出てしまったけど、なぜか、みんな見えなかったみたいだ。ミサコ大佐は窓際に行って、今日は太陽が反射して
私から離れていくのよ。よほど眩しかったみたいで窓際は水たまりができてたよ。そんな涙がでるほど燻煙作業は辛かったのかなあ。
昼からは暇だった。誰一人怪我人は運ばれてこなかった。
あれから1か月経ったけど怪我人は出ていない。兵士はみんな元気そうだ。わたしを除く医療班は昼休みにはぐったりして寝ている。医療班のみんなには金色のシャワーが見えないみたいなので、毎日そっと治癒魔法をかけてあげた。
ただ、毎日窓際の水たまりを
まだまだ現場を知りたかったのだけど急に王都軍に配属された。
いきなり辞令がでた。
”マリアンナ上等兵、王都軍司令部プリット大将付への異動を命ずる。これに伴い階級を大尉に任ずる。”
楽しかったトッテル駐屯地生活はたった1箇月だった。
命令書一通で終わった。プリット大将って誰なの?
今日から王都軍司令部プリット大将付勤務の第1日目だ。
「マリアンナ大尉入ります」
「おう、入れ」
「あっ!越後のちりめん問屋の隠居の爺ちゃんヨツエモン」
「やめてくだされ。ここではプリット大将です」
「はっ!失礼しました。私は何をすればよろしいのでしょうか」
「そうですな。毎日本部に来て儂たちジジイの相手をしてくだされ。身の回りの世話は儂の傍付メイドがやってくれるから大丈夫です。
ここにいるのはみんな爺さんだから、若者の話に飢えています」
私はジジイたちの話相手をすることになった。退屈だ。現場に戻りたい。王都司令部は王城の中にあるから爺さん以外会うことがないのだ。
爺さんどもは私が話をするとなぜか嬉しそうにする。なかには涙を流す者もいる。よほど孫に話してもらえないのか。
そうそうメイド長のコサミ・カンケリが職場復帰したんだ。
あいつのことはマーメイダと同じくらい好きなんだけど、あいつ、トイレの中まで入ってくるからなあ。もう11歳3か月なんだからやめてほしいよ。
いつもドアの外に出すのが一苦労するんだ。
復帰初日にトイレに入ってきていきなり、パンツを下ろして両足を抱えてシーシーて言うのよ。他のメイドがビックリしていた。
わたしもビックリして、チビッたよ。
◆メイド長のつぶやき◆
あ~うれしい。
やっと私の職場に帰ってきた。これで子作りにも励めるわ。
当分ダンタリア帝国の侵略はないし。
私は姫様をタービン・カイテン中将が管轄する諜報部への異動を申請したのに、プリット・カイテン大将がどうしても姫様の傍にいたいと言うからターピン中将も根負けしたみたい。
姫様にはビータン・チョット執事長として会えるから夫は満足しているみたいだけど。
王族派の重鎮がプリット大将に懇願したみたい。彼らも影出身だから姫様が好きでたまらないのね。
トッテル駐屯地の周辺はダンタリア帝国軍の斥候がウロウロしていて危険度でいえば国内随一と言ってもいい。
しばらく温和しくしていると思ったらダンタリア帝国軍はキャデタリ皇国に侵攻した。
キャデタリ皇国はダンタリア帝国の国土の3分の1しかない。
ここが侵略されるようだったらいずれアーメリア王国に進軍してくる。
ダンタリア帝国の国土は広いが荒れた土地が多い。国民は度重なる戦争と痩せた土地のため飢えている。国民の不満の矛先が国家に向かわないようにするため、常に戦争を仕掛けている。
アーメリア王国は豊だがそれは薄氷の上にあるものなのだ。ダンタリア帝国の侵攻にはまだ時間がある。しばらくゆっくりできる。
だが近日中に要塞の守りを固めないと。
その前に今日はひさびさの温泉日だし体を隅々まで磨いて、このほてった体の
今晩は寝させないわ15回戦フルラウンドよ!ビータン。
◆執事長のつぶやき◆
父さんにお願いしたのに王女様を諜報部にご案内できなかった。できれば朝昼晩と一緒にいたいではないか。
これまでマリアンナ様をたくさんの刺客が襲ってきた。
いくら魔法がすごいといっても後ろに目からあるわけではないから警戒しないといけない。
これまで事前に影が始末してきたが、あのときはヒヤッとした。
王女様が一人で冒険者ギルドに登録に行ったのだ。魔法学校を卒業したばかりだからしばらく伯爵邸で大人しくしていると思っていた。
シラユリはマリアンナ様が就職できないように悪い噂を流していた。どこにも就職できなから伯爵邸に戻ると思ったが、卒業の翌日に、しかも一人でいくとは油断しててた。
俺もイイナ伯爵領に戻るつもりだったがミサコに似合う髪飾りを買うつもりで品定めをしているとマリアンナ様が目の前を通り過ぎていった。怪しい者が数名マリアンナ様を追尾している。マリアンナ様は気づいていない。やつらが斬りかかろうとした。おれは急いで奴らの
「ふー。間一髪だった」
そうか、冒険者ギルドが何処にあるか知らないから転移魔法が使えなかったのか。
油断していた。
少し気を緩めすぎたようだ。
あのときから、心配でならない。
少しでも近くに置きたいのだ。
まあ、おやじのところだから安心だが。
「ただいま。ビータン、まだプリンケーキ残ってる?」
「はい、今日は珍しいブルーベリー味の紅茶もありますからすぐにお持ちしますので着替えたらこちらに来てください」
「うん、ビータンの作ったケーキは世界一美味しいからね」
「おー!この瞬間。これぞ至福だ。これだけはミサコにも譲れない」
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