第18話 クーデター
「コンコン、コンコン」
「奥様ーーーーーー!!!!大変ですーーーーーーー!!!!起きてください!!!。緊急事態ですから開けますよ」
執事長のビータンが慌ててやってきた。
「敵軍が攻めてきました」
「え!どこの?」
「王都第三軍団です」
「どーゆーことですか?」
「クーデターです。王都を陥落させて、政権を奪取したようです」
「詳しくゆっくり話しなさい」
跳ねた髪を直しながら、ベッドから起き上がり衣服を着る。ビータンはいつも私を守っているから裸を見られてもどうということはない。むしろ
「王都は第三軍団1万人と王立魔法学校の教師に一部生徒会が加わって支配していると速報がありました。他の生徒は捕虜になっているようです。冒険者ギルドががんばって抵抗していますが、安全な場所はギルド本部と王都ダンジョンのみです。
問題はこちらに第三軍団3万人のうちの2万人が向かって進軍していることです。すぐに指令本部の立ち上げをお願いします」
「わかったわ。すぐ行きます」
「儂も行こう」
~指令本部にて~
ビータンは急いで変装を解き軍服に着替える。
「タービン・カイテン少将、状況を説明してちょうだい」
「は! 敵軍は我が領にはまだ入っておりませんが、明後日には到着すると思われます。伯爵領の軍部が緊急募兵しておりますが、何分にも急なことで難航しております。それでも現在の伯爵領内の兵の数は1,200名ほどです。ですがこれ以上は間に合いそうにありません」
「他領からの応援はどうなっていますか?」
「はい、残念ながらすでに各地域の貴族は第三軍団を支持しています」
「そういうこと。ずいぶん前から計画されていたようですね」
「我が国にはあと3つの軍団がありますよね。第一軍団と第二軍団はどうしたの?」
「はい、どちらも先週からフタマタ商業国家の軍隊と合同演習をしているようです。とても間に合いません」
「わざとでしょうね。クーデターの主犯は誰?」
「シラユリ大将です」
「え!あの子中将だったわよね」
「いえ、なんだかんだと武功を認められ大将に昇進したようです」
「彼女がマリアンナを狙っていたからあなたたちに監視させていたけど、クーデターを起こすとは思わなかったわ」
「プリット中将の率いる特務軍団1万人が王都にいたでしょ」
「いえ、先週シラユリ大将が神聖キツソウ国との国境警備に派遣しています。こちらに戻るのは日数的にとても無理です」
「それで国王はどうなったの?」
「残念ながら王都広場で国王とその一族・大臣・王族派貴族はすべて処刑されて、民衆に
外国の留学生は一時本国に帰されたようです。
現在こちらの味方はドキュメント様の兄上のチビット辺境伯のみです。ですが、遠方なので3日以内にこちらに来ることは無理です」
「どうやら、シラユリはこちらを全滅させる気で進軍していますね」
「それに隣国の動きもなにやらきな臭いようです」
「しょうがないわ、何もしなければイイナ領内は死体の山となるわ。迎え撃つわよ。領内の人々を城内に集めなさい。領民を保護します。各地域の兵士も城内に呼び寄せなさい。籠城します」
「お母さん、心配だから来ました。私たちも戦に出ます」
「相手はシラユリです。彼女は10年に一人出るか出ないかの特級魔道士です。
ほかの魔道士も連れてくるでしょう。危険です。それに私はあなたを失いたくない。親よりも早く死んでほしくない」
お母さんはわたしを見つめて少し笑った。
「私のショボイ魔法では太刀打ちできないことはわかっています。
モンシロ母様は心を病んでいますから戦うことはできません。あなたは、確かにすぐれた能力がありますが、まだ子どもです。前戦に出すわけにはいきません。単に私のわがままです」
「お母さん今のままでは、どの道敗北します。そうしたら私も殺されるでしょう。だから戦います」
「私はあなたに前戦に出て欲しくないけどこのままでは兵力差は著しいから全滅ね。ごめんね。せっかく帰ってきたのに」
「タービン少将、城内の食糧をすべて領民に解放してください」
「はっ!伯爵様すぐにとりかかります。」
2日間で領内の人は城内に非難して、いよいよ明日戦が始まろうとしている。
皆眠れない夜を過ごしていた。
「敵軍が攻めてきましたーーーーー。我が軍の魔法軍団もがんばってバリアを張っていますが、多勢に無勢で、あちらこちらに穴が開いてきました。あーーーー!東の城門が破られました。飛竜が上空から攻めてきました」
「あ~! メーデー、メーデー、メーデー。岩石が飛んできました。城壁が崩れるーーー!!!」
「こちらの被害は甚大です。東門は我が軍の死体の山です。さきほど西門も破壊されました。敵は火炎弾を使っています。伯爵様、私も行きます。父のことが心配です」
「ミランダ軍曹あなたは親子で私に尽くしてくれました。
いいですか命を粗末にするのではないですよ」
「クドレイナ伯爵様ありがとうございます。先に逝くことをお許しください」
「私は皆に月並みの言葉しかかけてあげられない。私に母のような才能があれば……ごめんなさい」
「一般人にも被害が及んでいます。伯爵様お下がりください」
「いいえ、子どももたくさん亡くなりました。それなのに私が逃げるわけにはいきません。」
「お母さん!!わたしも前戦に出ます!!!」
わたしのアニメ知識によれば、中世の戦争は相手の頭を取れば終わる。
今回はシラユリを殺せば、この戦争は終わるはずだわ。
出兵しているので敵本部にきっといるはず。それに勝ち戦と思っているはずだからシラユリのまわりは少数と思う。
「ねえみんな、いっしょに来てくれる?」
「腐れ縁だし、いいぜ。こんなクソみたいな戦争早く終わらせようぜ」
「私もいいよ」
「みんないいに決まってるよ」
「僕も行くよ」
「先生もがんばるから」
「じゃ、武器を持ってね。みんな私の側に来て!」
「慌てるな!!!お前杖を忘れてるぞ!!」
「ビリット、杖はいらないの。雰囲気で持っていただけだから」
敵本部テントに瞬間移動した。思ったとおり、数人しかいない。
シラユリもいた。
「う!!臭い。テント内の栗の花の臭いは……」
「みんな、シラユリ以外を
わたしはシラユリの背中に瞬間移動をしてウインドカッターを首に当てた。
見渡せば他の将軍たちもすでに絶命している。
そりゃあ簡単だ。護衛もいないし、皆服を着ていなかったのだから。
勝利を疑って無かったんだろうなあ。
わたしは大きな火炎を作って大空に向かって爆発させた。
爆音が響く。すべてが静寂になった。
それから敵本部将校全員の死体を敵兵に
拡声器を手にして「みなさ~ん、クーデターの首謀者たちは亡くなりました。みなさんは命令されただけと思います。降参するならば、罪を問いません。抵抗するとこうなりますよ。よく考えてくださいね」
兵士は次々に武器を置いていく。司令官がいないのだから戦う目的がない。
敵軍は投降した。
わたしたちはすぐさま王立魔法学校に瞬間移動した。
首謀者たちが校長室に集まっていたから豚組は反逆者を一刀両断にした。校長はわたしが氷結
ここも同じく栗の花の臭いとセーラー服が散乱している。
校長たちの死体を曝し、ミラージュ先生が拡声器で「投降しなさい。そうすれば罪を問いません。逆らう者はこいつらのようになりますよ」
一部の教師と生徒を除き、武器を捨てて投降した。
逆らって攻撃してきた教師と生徒はかまわず先生が先頭に立って一刀両断にした。
ミラージュ先生は豚組の教師をしていたときに他の教師に虐められていたようでかなり根に持っている。
続いて王都の軍本部に瞬間移動し、本部の将校を同じように一刀両断にした。
豚組は強い。
ここでも同じだった。
男も女も……こんなときになにしてるの!!
どうでもいいけど、ここでも栗の花の臭いが充満している。
兵士が命をかけて戦っているのに、どいつもこいつもそれしかないのか!!!
同じように本部将校の死体を曝し、大きな火炎を作って大空に向かって爆発させた。爆音が響く。そしてすべてが静寂になる。
わたしは拡声器を手にし「みなさ~ん、クーデターの首謀者たちはいなくなりました。みなさんは命令されただけと思います。投降するならば、罪を問いません。お母さんが泣いてますよ」
クーデターは防いだ。
アーメリア王国は数日間軍体制になったが、特務軍団1万人と第一軍団の親王派将校たちが軍を掌握した。
今回のクーデターには第一軍団の一部将校と第二軍団の将校が
反逆者は軍法会議にかけられ、中将以上の者は全員がクーデターに荷担していたため公開処刑となった。
少将以下は事の子細を知らなかったため厳重注意を行い、第二軍団は解散し特務軍団と第一軍団に組み入れられた。
特務軍団を第二軍団とする案もあったが、汚名の軍団は嫌だということで、王国の軍部は”特務軍団、第一軍団、新たに結成された第四軍団・第五軍団”の構成となった。
王都は取り戻したが、これからどうなるか誰にもわからない。
でもわたしは、気楽な伯爵令嬢としてダンジョン攻略と温泉三昧でのんびり余生を過ごすつもり。
だった……。
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