第12話 マリアンナの卒業
卒業式の翌日、王都の冒険者ギルドに登録に行った。
日本では3月31日まで学生の身分だが、この世界は卒業式の翌日には学生ではなくなる。
暗い雰囲気のある建物の中に入ると数人の冒険者がジロッと
「お嬢ちゃん、冒険者になりたいのかい。がんばれよ。へへへ」
豚耳の酒くさい男が嫌みっぽく言う。豚組は好きだが豚はすきじゃない。
牛に限る。
受付けの巨乳お姉さんに
「ぼうけんちゃとうろくちたいのでちゅが、どうちたらいいでちゅか?」
また噛んでしまった。いまだに巨乳お姉さんを見ると噛んでしまう。
「10歳になりましたか?」
「はい!」元気に手を挙げる。
「ではこちらに氏名と誕生日と通り名を記載して、銅貨1枚を納付してください」
通り名? 適当に決めるか! なるべくかっこいい通り名にしよう。
「転生者だからテンちゃん」でいこうか。
通り名はこのとき以来使うことはなかった。
「はい、これで手続は完了しました。あなたは王立魔法学校を卒業していますからCランクから始まりますから、今からでもダンジョンの深部に潜ることができますよ。だけど命の保証はありませんのでくれぐれもお気を付けください。ご苦労様でした」
「はい、ありがちょうごじゃいまちた!」きちんと手を挙げて答える。
とりあえず今日は様子見のため1階層に行ってみるか。
この大陸のダンジョンは下に下に階層がある。
王都のダンジョンはどこまであるのか誰も知らない。
最終階層は未だ不明だ。
過去の最深到達階層は63階層だ。まだ謎だらけのダンジョンだ。
「ダンジョンダンジョンるんるんるん」
人がいっぱいだ。ラッシュのような混雑状態。どうゆうこと?
「お!マリアンナ!」背中から声がする。
「誰?」
「あ~!ビリット・ヤブレタじゃない。どうしたの?」
「いや~どこも雇ってもらえなくてな。男爵家の六男には帰る場所もなくて冒険者になった。そうだ!ミラージュ先生もいるぞ」
「え!先生が」
「そうなんだ。地方の魔法学校に転校させられたけど、そこでいじめにあって、やり返したら先生がいじめをしたとして懲戒解雇になったみたいだ」
「それって、いいがかりじゃない」
「豚組は
「どうしてこんなに人が多いの?」
「今年は国が軍部に国家予算のほとんどを使い公共事業もなく民間が不景気で就職ができなかった者が冒険者になったので、1階層でうろうろしているんだ。
そうそう、豚組全員ここにいるぞ。マリアンナが来たからまた全員揃うな。俺、みんなを呼んでくるよ」
「じゃあ、ビリット頼むね」
地べたに座って待つことにした。
「カネヨ! キレイナ! ヒンセイ!みんな昨日ぶり!」
「マリアンナ、昨日ぶり!!!」
「あ!ミラージュ先生 2年ぶりです。お元気でしたか?」
あいかわらず爆乳だ。
「ねえ、みんなとりあえず、ダンジョンを出て、これからのことを話し合わない!」
一番年下だけど豚組のアイドルだったから3年間クラス委員長をやっていたときの癖で、いつものように声をかけた。
冒険者ギルドの中にある喫茶サボリーナでそれぞれがこれからのことを話し合うことにした。全員ギリギリではあったけれど王立魔法学校を卒業したのでC級だ。先生も王立魔法学校を卒業しているが冒険者の経験がないのでC級だ。
冒険者ランクは下から、F級・E級・D級・C級・B級・A級・特級・超特級・
人害級と超人害級にはF級と超特級のレベル差を超える差があったと伝聞されている。昔のことだから誰も超人害級の能力を知らない。
F級からC級までは級位認定基準に達していれば冒険者ギルド又は地方の認定機関で認定される。B~A級までは中央ギルドか中央認定機関が試験の上認定する。
特級からは人が認定するのではない。特級以上は必ず腕に紋章が現れる。詠唱をしようがすまいが手の先から魔力は放出される。そのせいで腕に紋章がでるのだ。紋章は強い魔力に魔力回路が反応して出ると言われている。
紋章の種類だが”特級は洋梨ほどの大きさのシルバーの星形が現れる。超特級は星形が金色に変化する。保安官のバッジのようだ。記録によれば人害級に達すると突然星形が消えて雪の結晶に似た金色の紋様が現れる。
超人害級は伝聞によれば創始者イイナ伯爵の両手には七色に輝く竜の紋様が出ていた。
特級以上の紋様の真似ができないのはそれぞれの紋様はほのかに光っているのだ。そのため軍部に判ってしまう。軍部に行きたくない者は紋章が現れると肌色の吸光テープを貼付して
超人害級は200年前の建国時の創始者大魔道士アヤネ・イイナだけだ。彼女が人々に知られたときにはすでに超人害級の紋章が両手に出ていた。
人害級という区分を設けているがこの大陸では2人しか傑出していない。どちらもアヤネ・イイナの孫2人であるがすでに戦死している。
人害級の定義は小国の軍隊一個師団(300人程度)であれば1人で滅ぼすことができるレベルとされている。
超特級は男爵領の小隊(100人程度)であれば1人で滅ぼすことができるレベルとされている。
特級は全部で3人いる。特級は町の警備隊(30人程度)であれば1人で滅ぼすことができるとされる。
そんなこんなで現実的には冒険者の最高レベルはA級とされている。A級だけは3つに別れていて、A・AA・AAAだ。特級になると強制的に軍部行となる。AAAは紋様が現れないが特級に限りなく近い。
A級は50階層のダンジョンであれば1人で攻略できるとされている。通常冒険者登録したらF級から始まる。F級は5階層までしか潜ることができない。E級は7階層までだ。主に植物採集だ。なぜかというと7階層までには強い魔物はほとんどいないのだ。
初等科魔法学園や初等科騎士学園を卒業した場合はD級から始まるがどこのダンジョンであっても10階層までしか潜ることが許されていない。
C級とB級に階層の制限はないが、B級は3人以上のパーティーを組まなければ20階層以上のダンジョンに潜ることができない。C級は5人以上のパーティーを組まなければ20階層以上のダンジョンに潜ることができない。
「先生を入れて6名全員が揃いました。私たち全員C級ですが、先生は商家の出でしたよね。なのでお金の管理をお願いします。ダンジョンには全員で潜りますが、先生は後方で補助要員として待機してください。男子はマッチ程度の魔法しか使えないけど剣の成績だけはよかったわね。ねえ、二人ともそれだけ剣の腕がいいのになんで騎士学校に行かなかったの?」
「騎士学校だったら強いのがゴロゴロいるから一番になれないかもしれないからな。なあ、ヒンセイ」
小さい男だったのね。
「だったら前衛をお願いね。カネヨは火炎魔法が得意だったわね。後方支援をお願い。キレイナは土魔法が得意だから前衛の補佐をお願いね。私は中心にいるから」
「え~! マリアンナはオール2じゃない。先生と入れ替わったほうがいいんじゃない」
「キレイナ。大丈夫。今までみんなには見せたことないけどこれでも全種類の魔法が使えるから。気にしないで」
「まあ、あなたがいいならそれでいいけど」
「それじゃ前途を祝って水だけどカンパーイ」
「マリアンナ。ちょといいか」
「何?ビリット」
「今日は話合いで遅くなったから明日から潜るとして、1階層は15㎝程度のネズミ型の魔物しか出ないぞ。鉱石もないようだし。薬草も生えていない。ピーマンが採れるがお前嫌いだろ。それに7階層まではF級とE級で混雑しているぞ。魔物も子豚程度のものしか出ないようだ。現実的に考えると8階層から攻略したほうがいいと思うが、D級にも残してやりたいから様子をみながら11階層以上を目指そう」
「そうね、そうしょうか」
「じゃ、今夜はどこに宿泊する?」
顔をそれぞれ向き合う。
「決めてなかった。寮を出たんだー」
「俺は冒険者登録で大金を使ったから小遣い程度しか持っていないぞ」
ビリットはポケットから銅貨1枚を出した。
「ビリット、私も銀貨があと2枚しか残っていないの」
「マリアンナはまだいいよ。みんなに聞いたら銅貨数枚しかもっていないよ」
ヒンセイが布袋を振って銅貨3枚を出した。
「え~!パンが買える程度じゃない。わかったわ。今日は私が出すわ。同じ部屋に泊まりましょう」
王都裏通りの古宿にきた。
1泊素泊まり銀貨1枚で6名が一部屋に雑魚寝することになった。
先生の
「あと銀貨1枚かあ~。早くダンジョンで魔物退治をしてお金稼がなきゃあ」
ちなみに、銅貨1枚でパンが1個買える。日本円にして200円位。銅貨10枚で銀貨1枚 2,000円位、銀貨10枚で小金貨1枚 20,000円位、小金貨10枚で金貨1枚 200,000円位、金貨10枚で大金貨1枚 2,000,000円位、大金貨10枚で大判金貨1枚 20,000,000円位、見たことはないけど大判金貨は3キログラムあるから、そうそう持てない。すでに金塊だ。大金貨ですら通常流通していない。マリアンナの小遣いは1月銀貨3枚で6,000円位だから年齢の割には多い方だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます