第4話 魔法の鍛錬
魔法の鍛錬は、森の奥深くの誰も訪れない場所でやっている。
俺はすでに土魔法・水魔法(氷魔法含む)・風魔法を使えるようになった。
一応全部詠唱をしている。詠唱を省いてもいいのだが、基礎だから覚えろというのだ。
確かに詠唱をした方が魔法はスムースに出る。
1年間詠唱のみさせられた。
おかげでイメージ通りに魔法が出るようになった。
魔法学園に入学するまで婆ちゃんとの訓練は続いたが副産物もあった。
婆ちゃんはいつも見本を見せてくれるが年中魔力切れで倒れていたから俺の魔力を流してあげたら入れすぎて暴走してしまい婆ちゃんの使っていなかった魔力回路が一気に繋がって魔法の威力が軒並み増加した。
たとえばお城から森までの距離を5回から3回の転移で行くことができた。
最も大きかったのは婆ちゃんの容姿が20代ではないかと思えるほど若返った。
すごく喜んでくれたけど、自分の娘より容姿が若くなってしまったことで娘からどうやったか教えろと年中問い詰められていた……だが胸は大きくならなかった。
元々小さかったのね。
一番喜んだのはチビット辺境伯だ。「もう一人作るぞ」だと。
お好きなように。
俺は4歳になった。うだるほど暑い夏のある日、詠唱を覚えたかテストがあった。
俺は1つずつ唱える。
「妖艶なる天地の神々よ我が手に炎の生成を発動させん、ファイヤー」
「妖艶なる天地の神々よ我が手に風の生成を発動させん、ウインドカッター」
「妖艶なる天地の神々よ我が手に水の生成を発動させん、ウオーター」
「妖艶なる天地の神々よ我が手に障壁の生成を発動させん、バリアー」
「妖艶なる天地の神々よ我が手に転移の力を発動させん、テレポーション」
「妖艶なる天地の神々よ我が手に治癒の力を発動させん、ヒール」
とまあ唱えて合格点をもらう。
「決して人前でその力を使わないのよ。人前で使うときは100分の1の威力に押さえ、必ず詠唱するんですよ」
耳に
俺は
浄化魔法がどうもうまくできなかった。想像ができなかったのだ。アンデッドに会ったことがないんだもん。
浄化魔法は光魔法の一部でアンデットの浄化や毒消しに使うようだ。
婆ちゃんは転移距離が伸びたのだから回数制限も5回以上できるかもしれないと張り切って転移を繰り返して5回目が終わったときには魔力切れで足下に毒蛇がいたことに気づかなかった。当然魔力を纏うことはできない。
いつもなら対処できたのだろうがヘロヘロ状態だった。いやヘロヘロで無くても噛まれたかも知れない。
魔道士によって差はあるが転移後一瞬だが外部認識ができない。だから単独で敵の目前に現れることができない。転移した瞬間バッサリだ。
では空中に転移すればいいと思うだろうが詠唱を終わる前に地上に転落してしまう。
300メートル上空から自然落下すると約8秒で衝突だ。早口で詠唱すればなんとかなるかもしれないが、一度噛んでしまったら終わりだ。エマ婆ちゃんはそんなリスキーなことはしたくないと叫んだ。
今回は限界を超えたから魔力切れを起こしてしまった。自分から毒蛇にむかって足から崩れたから噛まれてしまった。串を飛ばすこともできないほどヨレヨレだった。
俺はすぐに治癒魔法をかけたが一向に回復せず噛まれた場所は赤黒くなり婆ちゃんの顔は青白くなっていた。この世界には血清がない。
解毒魔法が完成した瞬間だった。
この森の奥にはアンデットが徘徊していた。
目の前に200年前の戦争で亡くなった兵士のアンデットが歩いてきた。なぜ200年前かというと着けている鎧が200年前のものだからだ。浄化してみなさいというので、血清と同じイメージで浄化の詠唱をしたが、こちらに歩いてくる。
あれ?違ったかな。
そうだそうだこういうときは
俺は安倍晴明をイメージして”
「”
と唱えたらピカッと光ってアンデットは浄化された。魔法は想像力だけど言葉を発することでより確実となるようだ。光魔法の名称変更をしてもらいたい。”アンデット浄化および毒消し魔法”でどうだろうか。
ペラペラ喋る悪魔だった。
俺はお喋りは好かん。女でも一緒だ。俺と同種の人間は俺一人で十分だ。いや悪魔種か。いらないからすぐに返品した。
どうも魔力が強すぎるのか相性が悪いのか同じ悪魔しか出てこない。
「悪魔はあなたしかいないの?」
「あんたの魔力に釣り合う悪魔があちきしかいないんだよ!!」
「帰っていいよ」
「それなら何回も呼び出すな。でも契約はしてよ」
「いやだ」
悪魔は信用できないし対価に俺の命とか言われたら嫌だ。
でも本当の理由はあの悪魔を召喚すると私の身体も悪魔と同じまっ黒に変わるからいやなのよ。
だから俺は召喚魔法を封印した。一応使えることが判ったのでそれでいい。
(悪魔はそれでも次を期待していた。あの子は将来すごい魔法使いなるよ。悪魔と戦うことになったらきっと私の力が必要になるからそれまでは他の悪魔に横取りされないように唾を付けておこう)
赤い糸が消えゆく悪魔からマリアンナに放たれた。
(これで繋がった。いつでも呼び出してよ。ふふふ。楽しみにしているわ。人間どもよあちきより弱いやつらが現世に出ようとして画策しているからいつか復活してしまうわよ。あんたらの魔法はわちきたちには無力なんだから、まあ今だけ楽しむことだね。ああ、でも貴方だけは違うわ。わちきを無限牢獄から出してくれたのだから貴方だけには従うわ。わちきの勘は当たるのよ。必ず私を必要とするときがくるわよ。ああ、待ち遠しい。)
悪魔が現世に来るには人の身体を乗っ取るか、現世の人間の魔力の供給を条件に契約を結ぶことだ。並の魔法使いであれば悪魔に魔力を吸い取られて結果として命を失ってしまう。だがマリアンナほどの魔力があれば蚊に刺されたほどの魔力ですむのだがこのときのマリアンナはまだ勉強不足だった。
エマ婆ちゃんの容姿が60歳代後半から20代後半になったので「クシカツ姉様」と呼んでみた。
俺はヨイショは得意なのだ。
「どうして私のファーストネームを知っているの?」
「?……」
串カツの長ようじをいつも口に入れているからだけど?
「私はクシカツ・エマ・イイナが本名よ。ババアになってから若い子に多い名前のクシカツは恥ずかしくて、エマと名乗っていたのよ」
「そんなことないでちゅよ。クシカツ姉様のほうが似合ってまちゅよ」
だってどうみても串カツの棒にしか見えないよ。
「でもこの身体だったらまたクシカツと名乗ってもいいわね。これからはまたクシカツで通すわ」
なぜか喜んでもらった。本人がそれでよければいいけどね。
「あなたのように氷を魔法で作ってもいいけど、もっとおいしい氷があるのよ。チビット辺境伯領はインキナ共和国とフタマタ商業国家の両方に国境が接していることは知ってるわね。あそこに何処よりも高い山脈が見えるでしょ。あそこの頂上の火山に大陸竜が住んでいるという伝記があるの。誰も行くことができない場所だから事実かどうか判らないけどね。その手前の山脈には多種類の飛竜がいるのだけど、そこに万年氷があるのよ。それがとてもおいしいの」
「私も軍にいた頃に軍事訓練であの場所に行ったのよ。そのときに上官に命令されて転移魔法で取ってきたのよ。二人でワインに万年氷を入れて上官だったチビットに何度もイカされたわ。間違ったわ。行かされたわ」
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