第3話 キャッチコピー

笑顔戦記second edition、ファンタジー系の物語小説である。書籍化は、されておらず、インターネットのweb掲載のみの作品だった。内容は、どこにでもありそうな勇者の物語だが、読者の間で話題になっていた。

 それは、キャッチコピーに人々の笑顔を守る思いで書いたが、失敗作とあるからだ。

 そこで、興味を持った週刊誌の新米記者の初仕事として、僕が取材に来たという訳だ。


「零式さんは、見出しのタイトルに菩薩とありますが、否定されていませんね。菩薩なのですか?」


「なかなか良い質問だぞ、いかり君」


根堀ねほりです」


「ノリが悪い奴だな。突っ込むなら、元気よく大声にしてくれ」


 零式さんは、不機嫌そうな顔になった。しかし、僕は漫才をしに来たのでは、ないのだ。


「出家とかは、したことないんだよ。菩薩という設定かな。まぁ、自分的には、本気だけど――それをどう思うかは、読者の自由だよ」


「設定? ですか……」


 零式さんは、設定と言い切った。なんだか拍子抜けした。ただの面白い、おっさんだったか。本人は、そう思っているって、いわゆる中二病じゃないか!?


「それでは、笑顔戦記second editionのキャッチコピーの笑顔を守ると言うのは、物語で楽しませる事だったのですね」


「いいや。堕天使による悪夢と魔王と魔族から人々を守りたいのだ。それと出来れば、神による裁きからも……」


 そう答えた零式さんの声と雰囲気は、今までに無く真面目で、重々しかった。

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