第2話 見出しのタイトル

「零式さん、今日は、週刊春分のインタビューwith零式菩薩改の企画に応じてくださり、ありがとうございます」


「うむ。しかし、このタイトルは……」


 零式さんは、インタビュー企画の見出しを見て、少し考え込んでいるようだ。



 *****


 零式さんが沈黙してから、数分が経っただろうか? 僕には、この沈黙の時間が永遠の長さに感じる。さて、何か話しを切り出さないとな。


「んごー」


「零式さん!」


 僕が叫ぶと、零式さんの体が、ビクッとなった。寝てたのか? 考える姿に見えて分からなかったぞ。


「零式さん、寝てませんでしたか? んごーって言いましたよ?」


「何を言ってるんだ! 寝るわけないだろ、瞑想めいそうだよ! 全神経を集中するためだ。インタビュー前の呼吸法だよ。今、流行りの」


 零式さんは、びる様子もなく、そう押し切った。まぁ、追及しても仕方がない。


「それはそうと、このタイトルは、僕の作品の笑顔戦記にヴァンパイアが出てくるから、あの映画をもじったのかい?」


 あの映画? そう言われても僕には見当が付かなかった。なぜなら、タイトルを決めたのは、編集長だったからだ。僕は、考えた。零式さんは、沈黙してたから……。


「タイトルは、沈黙のホテルの方が良かったですか?」


急速潜航きゅうそくせんこう!」


 僕が答えると、零式さんは叫び声を上げて、椅子からずっこけた。そしてゆっくりと立ち上がった。


迂闊うかつだった。君は、天然ナチュラルだったか。ふっ、だが僕は、認めてやろう。若さゆえだと。まぁ、かくというキーワードがあるか……」


「えっ、はい? あの、タイトルについては、大人の事情で答えられないのです」


 そう答えると、椅子に座り直した零式さんが微笑んだ。何かおかしいのかな?


「大人の事情だと? そうか。若いが童貞でないと、ぬかしよるか!」


「ええっ!」


 零式さんの思いがけない発言に、僕は両手をペンギンのようにして、ただ叫ぶしかなかった……。

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