第15話 それから…
あの復職判定会議を無事に通過し、今の私は2020年7月1日から一企業人として社会復帰を果たしている。
ここまで来る間には、本当にいろいろな方々にお力添えをいただいた。
前章で「表面上」と敢えて表記したのは、「内面的」に言えば「うつ病」というのは前にも触れたように一生付き合っていかなければならない病でもあるからだ。
今でも定期的に通院したうえで、毎日の服薬は欠かせないでいるし、その結果制服を脱ぐことになり、今では内勤職場にて現場の社員の支える側の事務方業務に就いている。それはそれで、これまで現場ではあまり詳細を知ることもなかった各種規定などを調べながら回答するという、常に自らも勉強するというような分野に携わっているので、現場を知った上で企画・事務を学ぶ機会だととらえ、悲観することも全くなく過ごしている。
逆に今の仕事をするようになってから、いかに現場にて事務手続きが中途半端に運用されているかという裏側も見えてしまい、それらを是正していくのも、今後の私の大仕事の一つでもある。
年齢や入社歴は全く違えど、以前に一緒になって働いていた仲間が同じような病気と診断され、休養したのちに退職されているケースをみると、心が痛むと同時に、彼らが新しい道に踏み出したことを温かく見守るというのも、業務外ではあるが今後も連絡を取り続けていきたいと思っている。
今回のような心の病というものは、この時代いつだれが発症するか分からないほど日常なものになってきた。(本当はそれが異常なことであると認識する必要はあるのではあるが、それを真に理解するためには、「自分が罹患してみないと」分からないであろう)
こういったストレスフルな社会の中で、体調を崩すことは決して珍しいことでもないし、恥ずるべきことでもない。それまで必死になんとか自分をつなぎとめていたものが何かの拍子にぷっつり切れてしまう、いわば喪失感を味わうなんてことは、だれにでもあることであって、その発病をしたからといって、とがめられるべきものではないからだ。
ただ、残念なことに、日本の社会においては「発病したほうが悪い」という考えを持っている人が多いこともある程度の事実として頭の中に入れておかなくてはならない。
そんなときに、労働者が不利にならないように、きちんと法律で決められていることを職場側も、罹患した側も知識として持ち合わせていないとならない。
うつ病になった社員が会社、しかも自分の部署にいることを好ましくないと考える方も少なからずいるかもしれない。
しかし、うつ病を理由に辞めさせたいと考え直ちに社員を解雇した場合、社員から解雇が無効であるとして、従業員であることの地位確認や損害賠償を請求される事例も普通に増えてきていることに目を向けるべきだ。
特にうつ病を発症した原因が会社の業務に関連したものである場合は細心の注意が必要である。
労働基準法第19条1項を要約すると、社員が病気を発症した原因が業務に関連すると認められる場合は、社員が療養のために休業できるようにすること、療養期間とその後30日間、会社は当該社員を解雇できないとある。
特別な例外もあるが、この基本をしっかり押さえることで、労使双方が回復・復帰を待つのか、それとも別の道に送り出す(歩き出す)方向にもっていくのか、話し合うことが必要であること。このステップを片方の意見だけで進めては絶対にならない。ろくな結果にならないことは先の裁判・判決を見ても明らかであるのだから。
私自身も、一応医師からは「寛解」という状況にいるが、まだまだ道半ばであり、これがはっきりと「完治」するとは思っていない。(現状「病気」を受け入れている身としては、その方が気が楽なのだ)
しかしながら、同じような苦しみを持つ方と一緒になって愚痴や時には弱音を吐きつつも、少しでも心が落ち着いた状態の毎日が過ごせるような世の中に代わっていくこと願いつつ、今回のエッセイを締めたいと思う。
不定期の連載にも関わらず読んでくださった皆さまに深くお礼を申し上げたい。
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