第5話 医療リワークとは




 2020年3月13日、私はリワークの初日を迎えた。


 このようなリハビリテーションを自身が受けるのは初めてだ。(リハビリという意味では、子どもに付き添い言語療法やら運動療法というものを数年というスパンで見てきている)


 どのみち、このときの私の状況というのは、仕事に行くこともできず、度々の出勤訓練には失敗している。一方で、ただ家で静養していればいいという状況ではなく、何らかのきっかけをつかんでこの状況から抜け出す必要があるわけで、そのために申し込みをしたことは間違いはない。


 しかし、これまでずっと家で閉じこもっていた人間が新しいところに足を踏み出すというのは非常に勇気がいる。この点で、すでに通院している病院の敷地内。またそこが自宅から車で5分の距離というのは非常にありがたい。

 見学のときに説明を受けていたのは、毎日の開始が午前9時半。気分がすぐれなかったとしても、最悪でも家を9時15分までに出れば開始時刻に間に合うという安心感というものがある。


 リワーク、特に病院施設内における「医療リワーク」で最も重要視させるのは何か? 実は出席率なのだと教えてもらえた。もちろん、医療リワークの中でももっと「復職させること」のカリキュラムを前面に打ち出している病院もある。しかし、私が通うことになった病院でのリワークは、復職以前に「社会復帰」に重きを置いている。

 もっと後で知ることになるのだけれど、この病院でのリワークへは社会復帰や復職に一度失敗し、二回目以降という参加者が多いという。


 そのため、全員に「復職を目標」のみを与えるのではなく、「社会への復帰」のきっかけをつかませる場所なのだと。自分で出社練習を行ってみたものの、失敗しリワークにたどり着いた私もそのような部類に入るのだろうと、その事情を教えていただいたときに思った……。


 リワークというのは、言葉がそのまま表すとおり仕事への復帰を目指す一面もあるので、「病院のリハビリ施設に『模擬出社』して、『週5日間、模擬業務を行う』ことによって、病院として『日勤業務は遂行可能』という診断書を書けるようにする」とイメージしていただければ分かりやすいと思う。これがここでは最優先事項になる。




 朝9時半までに「出社」したあとの「業務」は個々に異なる。


 朝の朝礼として、予定の確認やラジオ体操と同時に、「その日のリーダー決め」や「今の気分を一言」というものがある。これはまた別の回で説明しようと思うが、非常に重要なものだということに気づいた。


 終日読書をするもの、大型パズル(概ね1000ピース以上のもの)や立体パズルを組み立てるもの、編み物をするもの、資格取得に向けて勉強をするもの、中にはラジコンを組み立てたり、ギターを持ち込んで音楽の練習をする…など、とにかく今自分ができるもの、やりたいものを行う。

(もちろん、看護師や作業療法士と一緒にその日の課題が指定され、それに取り組むケースもある)


 日々の生活については、また別の回に書こうと思うが、中には園芸療法として雑草の除草作業や、作業療法としてメンバー共同作業で一つのものを作り上げるなど、「遊び」のように見える作業にも意味がある。

 また、読書をしている横で会話が聞こえたり、楽器の音(作業療法室の別室にはドラムセットまであった!)が聞こえてくるのは、実際の職場でも想定される環境でもあり、その中で自分の集中力を維持できるかというトレーニングにもなる。


 私の初日の作業というのは、これまでの経緯(リワークを開始するにあたっての状況など)を書き出すものであった。(これも「アサーション」の一部であると後から気付いた。これも別に記述する予定)


 手描きでもPCでも構わないということであったが、(もちろん、こうして「投稿サイト」に打ち込みをするほどであるから)PCを選択し、1日かけて作成、午後にプリントアウトしてから看護師に提出した。


 これが、デイケアのスタッフ・院長(デイケアの担当医となっている)・主治医にまで連携される。


 院長や主治医にまで連携されるということは、普段の診察の時間で話しきれないことも、こういった書面に起こしておくことで、病状や今後の計画の見通しについて事前に情報を提供しておき、診察時間にその話題に集中して相談をすることもできる。


 この初日、私が感じたのは「ここにいるメンバーはみな同じ苦労をしてここにいる」ということから来る連帯感・安心感であった。最初のうちは深く詮索することもないが、みな社会に復帰するために通所しているのであって、その目標というものは同じである。


「病院のデイケア・リハビリの一部門」という位置づけのリワークなので、形としての入所式も卒業式もない。


 しかし、その緩さが逆に「自分の目標をいつまでにする」という自ら意識付けをすることに有効だと感じた。(カリキュラムが指定された場合、その方針に乗ることができれば楽だが、逆にそこから脱落してしまう可能性もあり、それでは元も子もない。ここに通ってきているのはみなそういった社会の軋轢の中で傷つき挫折を味わった人たちなのだから)


 私が入所した時には男性三名、女性四名がいたと記憶している(毎日、体調などを考慮して若干の人数変更もある)。


 初日を終えたとき、確かに産業医から聞いていたものよりは緩い。しかしこれなら自分のペースでリハビリを進められるかもしれない。


 そんなことを思いつつ午後3時の終了時刻を迎えた。




(お詫び)

 各種の療法や、病院とリワークの関係性、各種単語で「後述」や「後で知る」となっているものが多いのは、それぞれの項目一つで1話ができてしまうほど中身が濃いため、一気に書くのではなく一つ一つをじっくりと紹介していきたいと思います。今回は若干読みにくいものになってしまって申し訳ありません。

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