第8話
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ルイとフィアンナは旅人議会を後にし、西門港へと向かう道を歩み始めた。この港は蒂都城の生命線であり、迪昂里斯が世界に開かれた門戸でもあった。西門港の独特な地形は、城門から始まり、まるで巨人が彫刻した芸術品のように海岸まで続く斜面で、都市の喧騒と大海の静けさを見事に結びつけていた。初めて見たとき、この斜面は驚きと壮大さを感じさせ、まるで大地が意図的に刻んだ通路で、蒂都城と広大な海をつないでいるかのようだった。
二人が斜面を下るにつれ、景色も次第に変わっていった。城門近くでは建物が密集し、商店や酒場の灯りが交差し、人々の喧騒と馬蹄の音が忙しい情景を描いていた。斜面に沿う建物はそれぞれ個性的で、中には鷲の巣のように斜面にぶら下がっているものや、まるで斜面から生えてきたかのように周囲の環境と調和しているものもあった。これらの建物は住居であると同時に、蒂都城と海とのつながりを象徴し、数え切れない旅人の物語と冒険の証となっていた。
しかし、彼らが歩を進めるにつれ、その音は後ろの風に運ばれていき、代わりに海風の塩の味と海鳥の鳴き声が聞こえてきた。海辺に近づくにつれ斜面はなだらかになり、港の風景が徐々に広がっていった。港では忙しい光景が繰り広げられており、船が行き交い、船員たちは荷物の積み下ろしに忙殺されていた。さまざまな言語と訛りがここで交錯し、多様で活気に満ちたコミュニティを形成していた。
ルイは前方を探索する目を向けつつ、フィアンナはこの道すがらの変化に没頭していた。彼女の目には、斜面の建物のシルエットと遠くの海水が反射する光が映っていた。
ルイとフィアンナは、海港の端に位置する丘にたどり着いた。ここからは西門港の全海域を見渡せ、遠くの空と交わる碧い海が壮大な絵を描いていた。彼らが立っている場所は、西門港にあるバールヴィエット家族の別荘で、この港町で最高の眺望を誇る岬の頂に位置していた。
この別荘はバールヴィエット本家の豪華さはないものの、その構造とデザインには威厳と歴史が刻まれていた。その壁は粗い石で築かれ、風雨に耐え抜いている。それぞれの石には、この家族の過去の物語と記憶が込められており、落ち着きと高貴さを感じさせる。
かつてこの別荘はバールヴィエット家が西門港を管理するための分家の住居であった。しかし、時代の変遷と家族の勢力調整に伴い、管理中心は港の中央にあるもっと巨大で近代的な建築物に移された。この新しい建物は港にそびえ立ち、港全体の象徴であり、バールヴィエット家の権威と影響力を象徴していた。
ルイとフィアンナは別荘のテラスで静かに立ち、海風がそっと吹き、遠くの海の匂いを運んできた。彼らの目は古い別荘と現代的な港の間を行き来していた。
フィアンナに導かれ、ルイはゆっくりとバールヴィエット家の別荘に足を踏み入れた。屋内は静かで厳かな雰囲気が漂い、彼らの一歩一歩の反響が人気のない大広間で静かに響いた。外の喧騒とは対照的な静けさと広がりがあった。
ルイはフィアンナに続いて廊下を進み、この物語に満ちた古い別荘に探求心を抱いた。彼は一人で探索したいと思ったが、その衝動を抑え、初めて訪れた場所で行動を分けるのは適切ではないと考えた。特にフィアンナに対しては、それが礼儀に反するかもしれないと感じた。
書斎の静けさの中で、時間もゆっくりと流れているようだった。ルイはフィアンナの感情の波を感じ取っていたが、どう慰めていいのかわからなかった。彼はそっと立って、この空間、フィアンナとこの場所のつながり、そしてフィアンナと彼女の父親だけの思い出に対する敬意を抱いていた。
「ここは昔、本当に賑やかだったんだ。」
フィアンナの声が静かな空間で響いた。
「でも今は、時間に忘れられた角......」
二人は低い声で会話を交わし、その声が宅邸内で響き渡り、静寂の中にわずかな活気を添えていた。しかし、フィアンナの父親の書斎に入ったとき、空気が一変した。書斎には本やさまざまな文物が並び、それぞれがこの家族の歴史と深みを物語っていた。この空間は非常にプライベートで、思い出と感情を秘めた聖域のようだった。
フィアンナは足を止め、父親の机の上の古い本に目を留めた。その本の表紙は少し摩耗していたが、かつての貴重さが感じられた。彼女はそっと本の表紙に手を触れ、複雑な感情が目に浮かんだ。その簡単な動作は、まるで細い糸に触れたかのように、フィアンナの涙を誘った。
「この本、父さんが読んでくれたんだ。」
フィアンナの声が詰まった。
「これらの話は、まるで彼がまだ私のそばにいるよう。」
ルイはそばに立ち、フィアンナに同情と支持を込めたまなざしを向けた。彼にはわかっていた。これはただの書斎ではない。フィアンナにとっては、父親の影がまだ漂っている場所であり、その本一冊一冊、物品一つ一つが大切だった。
ルイは静かに立っていた。彼はフィアンナのために言葉を探すのではなく、ただそこにいることで支えになろうと思った。彼は知っていた、この時フィアンナに必要なのは言葉の慰め以上に、静かな同伴と理解だった。
「でも、ここがどんなに変わろうと、いつまでも私の心の一部だ。」フィアンナの声が固くなった。
ルイは頷いた、理解を示して。彼とフィアンナは、外の世界と、フィアンナだけの貴重な記憶に向き合って静かに立っていた。
すると、フィアンナはゆっくりと身を起こし、深呼吸して心を整えようとした。彼女はルイに向き直り、かすかな笑顔を浮かべた。
「ありがとう、ルイ。今日は一緒にここに来てくれて。」
彼女の声はまだ少し震えていたが、強さも感じられた。
「いいんだよ、僕もバールヴィエットの一員だから。」
フィアンナは微笑みながら頷き。
「そろそろここを出よう。」
彼女が言った。
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廊下の長窓から斜めに入る夕日が古いカーペットに映し出され、光と影が時の静けさを織り交ぜていた。ルイとフィアンナが通り過ぎると、それぞれの一歩がその暖かい光の中に踏みしめられた。
宅邸の扉が二人の後ろでゆっくり閉じられ、錠がかかる音と共に過去の記憶も封じ込められたようだった。彼らは共に宅邸を出て、目の前の景色が再び賑やかな西門港に変わった。夕日が港を金色に染め、先ほどの書斎の静けさとは対照的だった。
彼らは斜面をゆっくりと降り、賑やかな港の市場に足を踏み入れた。周囲はさまざまな露店の喧騒と人々のにぎわいで満ちていた。夕日の下の海風が塩辛い海の香りを運び、市場の香辛料と混ざり合った香りが漂っていた。遠くの波が岸にそっと打ち寄せる音が聞こえてきた。
夕日の残照が徐々に消えていくにつれ、ルイとフィアンナは蒂都城に向かって斜面を登っていった。背後で西門
港の灯りが次々と灯され、まるで星々が海面に映し出されているようにキラキラと輝いていた。
その瞬間、西門港全体が生き生きとした生命体のように感じられた。それぞれの灯りは心の鼓動のように、それぞれの海の波は自然の呼吸のように、そして街の中の人々は、それぞれの微笑み、それぞれの会話がこの夜に最も美しい記憶を織り成していた。
西門港を離れ、再び蒂都の西門に向かって斜面を登ると、ルイは時々振り返って港の方を見ていた。
夜がゆっくりと降りてきて、空には星がきらめき始めていた。街の灯りが次々と灯され、西門港の夜景が彼らの前に広がっていた、まるで星空の絵のようだった。蒂都の夜は常に神秘と魅力に満ちており、城壁内の賑やかな通りも、城壁外の静けさも、何とも言えない魅力を放っていた。
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