ダーク・タイズ - ザ オリジン

第5話

ルイは初めて経験する環境にいた。彼は肉団子を口に運んだ。

濃厚なソースと肉の香りが口の中で広がり、セロリの葉のようなものが入っているようで、油っぽさを消す甘みがあった。噛むたびに異なるスパイスが味わえた。

彼はナイフとフォークでステーキを切り、口に運ぶと、肉団子よりもさらに美味しかった。驚きの表情を隠せなかった。

「ルイ、どう？」

ルイは手を止め、空腹のためにティアの声をほとんど聞き逃しそうになっていた。

「とても美味しいです。ありがとうございます。」

（もっと本を読むべきだな。）

目の前の味覚と視覚の豪華な光景に、彼はその美しさを形容する言葉を見つけることができなかった。

「それは素晴らしいわ」

ティアは食べ終わったサラダ皿を横に置き、右手に持ったワイングラスから、透き通るような赤ワインを一口飲んだ。

「バールヴィエット家では、みんなで食事をするのが伝統なの」彼女が言った。

ルイは頷き、食卓を囲む人々を見回した。そして、彼は一つの疑問を抱いた。

「……ティア、一つ質問してもいいかな？」

彼は少し躊躇してから、彼女の名前を呼んだ。距離感など、この家には必要ないものなのかもしれない、とルイは思った。

ティアは手に持っていたナイフを下ろした。

「何かしら？」

「どうしてここには、他のバールヴィエット家の人々がいないの？」

「多少聞いたことあるだんけど、バールヴィエットは歴史もちかつ偉い人がいっぱい集まってる大貴族だったって。」

ルイが尋ねると、フィアンナは彼を見つめていた。彼女の目は読み解くのが難しい。

「歴史古い家族に否定しないんだけどーー」

「それについては……」ティアが答え始めた。

「最近の年で、バールヴィエット家の勢力が大きすぎるため、いくらかの人たちを分散させなければならなかったの。そうしないと、他の貴族たちにとって目障りになるからね。」

「それは昔からのことだ。」ティアは続けた。彼女はワイングラスを軽く揺らし、赤い液体が反射する自分の顔を見つめた。波紋の中で揺れ動く。

ザックは食卓の端に座り、話しているティアとルイを見て、指を鼻の前で交差させた。

「でも、主な理由は、数年前に家族間で争いが起きたことなんだ。不和を避けるために、多くの分家がこの屋敷を離れ、ディオンリスの中でそれぞれの場所を見つけた。」

「この家の本物のバールヴィエットには、私とフィアンナしかいないんだ。」

「私たちは主家だから、そして私が魔法士院の院長であるため、魔法士院はこの家のすぐ隣にある。」

「君が今住んでいる部屋は、元々はフィアンナの従兄のものだった。」

「彼はあいにく先月、家族と一緒にここを離れた。」

「彼らはもともと非常に優れた家族だったから、今は広場の向こう側に住んでいるんだ。」

「だから、この家を運営する人たち全員と一緒に夕食をとるようにしている。そうしないと、過去の冷たいバールヴィエット家のようになってしまうからね。」

ルイはティアの話を聞き終えて頷いた。彼は口にした肉の塊を飲み下し、肉汁の余韻を楽しむことを忘れたことを後悔した。

「それと、夜間は節約のために、この家では廊下と曲がり角にだけ数個のランプを点けることにしている。」

「夜に一人でこの家を歩き回らないようにね。暗闇の廊下で浮かぶ光点を見るかもしれないから。」とティアは真剣な面持ちで言った。

ティアは向かい側に座るザックに目を向け、ザックは眉をひそめて立ち上がり、テーブルの上に積み上げられたリブステーキに手を伸ばした。

「それは家の中を巡回する人たちよ。」と、フィアンナが突然口を開いた。

その声はルイが想像していたよりもずっと普通の女の子らしいものだった。ルイは心の中でフィアンナに謝った。彼は彼女の声をもっと無愛想で鋭いものだと勝手に想像していたのだ。

「フィアンナの言う通りね。」

とティアが空になったワイングラスをテーブルに置くと、ヘスティナが食器を置いてティアのそばに来てグラスに赤ワインを注いだ。

ルイは以前、レストランのバルクワインを一度試したことがあるが、それは良い思い出ではなかった。それでも、彼はヘスティナが注ぐ赤ワインに目を奪われた。

ルビーのような液体が細いボトルの首から流れ出る様子は心地よい音を立て、発酵した果実の香りが意外なほど爽やかだった。前回の経験とは違い、彼はそのワインにまるで脂っこい脂肪を感じるかのようだった。

「でも、バールヴィエット家は注目される家族だから、この屋敷にはたくさんの死角があるわ。夜はできるだけ部屋を離れない方がいい。」

とティアは再び真剣な表情になった。少なくともルイには、今回彼女が真剣であることが分かった。

「そうよね、ザック。彼が私たちを守ってくれるけど、あまり頼りすぎない方がいいわ。」

「彼はよく夜に外出して、いつ帰ってくるか分からないの。大抵は朝になっていることが多いから。」ティアは言った。

ザックはティアの言葉に疑問の表情を浮かべた後、答えた。

「おっしゃる通りです。」

ティアは微笑みながら、再びグラスに口をつけた。彼女はまた赤ワインを優雅に味わった。

＃

晚餐の余韻の後、レストランにはルイ、フィアンナ、ティアの3人だけが残り、元の席でハーブティーを楽しんでいた。ルイはうつむきながら考え込み、深い色の水面に映る自分の姿を見つめていた。ティアが以前言った言葉が彼の頭に浮かんだ。

「エイフィはここで生活していたんだ」

彼は茶碗の取っ手をこすりながら、ここでの生活に慣れることができるのか、それが現実からどれほど遠い夢のようなものなのかを思いめぐらせた。今のバールヴィエット家はティアを中心に動いており、ルイは彼女を信じることに決めていた。

ルイは、ヘスティナが先ほど渡してくれたナプキンで口元を拭いた。ザックが新しいスーツに着替えて壁の扉から出てきた。彼は父親と同じ年頃の男性で、しかし父親よりもずっと逞しい。彼の顎には少し髭が生えていた。ザックは食卓に歩み寄り、ティアに頭を下げた。

「フィアンナ、準備して、あとで訓練場で会おう。」

「ーーああ、晩ご飯を食べたばかりだから、今日は血魔法の練習にしよう。今日は火を使って遊ぼうか。」と、席を立つ途中のザックが振り返って言った。

「うん。」フィアンナは答えて立ち上がり、椅子を食卓に押し戻した。

「ルイ、あなたも試してみる？」

ルイは自分の胸を見つめ、ベッドに横たわり息を切らしていたあの日を思い出した。胸には絶え間なく暖かさが流れ込んでいた。そして、それがエイフィが彼を去った日でもあった。

ティアが振り返った。

「見に行ってみたら？側で見ているだけでもいい。興味を持つかもしれないわ。」

「……」ルイは少し躊躇し、沈黙した。

「その日、あなたを連れて帰った時、あなたの体に少し魔力を注入したの。あなたには血魔法の資質があると思うわ。」とティアは言った。なぜか、その時のティアの笑顔はより神秘的に見えた。

「血魔法か。」とルイは独り言をつぶやいた。

「行ってみなさい。フィアンナはたぶんまだ部屋で準備しているわ。」

「彼女の部屋は君の部屋と同じ側にあるから。」とティアが言った。

彼女はテーブルに置いたハーブティーを再びカップに注いだ。

「うん、分かった。」ルイはティアの意味深な表情を見て答えた。

彼が思い返すと、フィアンナとザックの姿はもう見えず、彼が考えている間にレストランを離れていたことに気づいた。ルイは席を立ち、部屋への道を探しながら戻った。

＃

「この道だと思うけど……」

ルイは自分の地理感覚に自信を持っていた。彼はほぼ独力で家からディオンリスまで来たのだから。しかし、彼の部屋を見つけるのにはかなり時間がかかった。

フィアンナはすでに準備を整えていた。彼女は深い茶色の戦闘服を着て、髪を束ねて部屋のドアを閉めようとしていた。

「――フィアンナ。」

ルイが声をかけると、彼女は立ち止まり、近づいてくるルイを見た。

「何か？」

フィアンナは上から下までルイをじっと見た。他人から見れば失礼に見えるかもしれないが、ルイはフィアンナがそういう性格ではないと思った。

「ティアが、僕もあなたたちと一緒に訓練すべきだって。」

ルイの声はだんだん弱くなり、フィアンナの額にしわが深くなった。

「じゃあ、君はどう思うの？」

フィアンナの反問にルイは立ち尽くし、その意味を理解できなかった。

「血魔法の訓練をしたいの？無理にやる必要はないわ。」

「普通の人間でいる選択権もある。それで君を軽蔑することはないわ。それが何か問題でも？」彼女は言った。

ルイは呆然とした。彼とフィアンナは目を合わせた。確かに彼女の言う通り、それは平等な選択の実現だった。ただ、二人の身長がほぼ同じだったからかもしれないが、ルイは前者であることを望んだ。

「いや、血魔法を使いたい。」とルイは答えた。

「じゃあ、ついてきて。」とフィアンナは頷いた。彼女の表情は相変わらず無表情で、感情を読み取ることはできなかった。

「でも、まず服を着替えて。それは私のいとこのものだから。彼が残りの物を取りに戻ってくるかもしれないわ。」と彼女は言った。

「わかった、今すぐ着替える。」

ルイは言って、フィアンナの部屋のドアから離れた。数歩歩いたら、自分の部屋に着いた。ドアを押し開けると、その重さが手のひらに伝わった。

「ザックはもう訓練場にいるわ。」とフィアンナが廊下の反対側から言った。彼女は壁にもたれて、ルイが部屋に入るのを見ていた。

ルイはクローゼットのような部屋に来た。それはいくつかの大きな衣装棚が組み合わさっている小さな部屋だった。彼は目の前の衣装棚を開けると、革の匂いが漂ってきた。

目に飛び込んできたのは数多くのブーツで、ほとんどがふくらはぎまである戦闘用の靴だった。多くの靴先には傷がたくさんあり、ほこり一つない状態だ。定期的に誰かが清掃しているのだろう。

足元で何かに蹴られた。角には古い革製の靴があり、足の裏を覆うためだけのものだった。血魔法の訓練には戦闘靴は必要ないだろうとルイは自分に言い聞かせた。自分に高級なものを履く資格があるかどうかも考慮していた。

彼は衣装棚を閉め、左手にある別のドアを開けた。ほとんど空っぽのその空間には、少数の衣服がハンガーにかかっていた。中央には歩いて入れるほどの通路があり、フィアンナが着ていた服と似た服を見つけた。サイズを確認し、それを着ることにした。

彼は服を着て、軽く足を引きずりながら部屋を出た。少し不満そうなフィアンナが見えた。それから、フィアンナとルイは無言で長い廊下を歩き、そして、訓練場っていうでっかい建物についた。

＃

劇烈な音が地面を震わせ、高いドームを持つ建物が揺れ動いた。

「ルイ！」

ザックが訓練場の隅から全速力で駆けてきた。彼はまず魔力を燃やし、目の前の煙を風で掻き分けた。

「ルイーー！」

ザックは砂場の中央に横たえるルイを見つけた。ルイの口からは黒煙が吐き出されており、彼の体から焦げた匂いが漂っているようだった。

ルイは全身が灰で覆われており、まるで暖炉で完全に燃え尽きた炭のようだった。彼は焦げた穴の中でゆっくりと頭を回し、ザックが自分を見ていることに気づいた。ザックの顔には慌てた表情が浮かんでいた。

ルイは耳鳴りだと気づいた。頭の中でまだ騒音とめまいが鳴り響いており、ザックが何を叫んでいるのか分からなかった。

ザックは天井から落ちてきた焦げた梁を越え、ルイの側にしゃがみ込んだ。

「ルイ、大丈夫か？」

ザックが言った。彼はルイの上半身を持ち上げようと手を伸ばしたが、再び引っ込めた。彼は自分の行動が相手に二次的な傷害を与えてしまうのではないかと恐れていた。

「うん……」

ルイがうめき声をあげながら、ゆっくりと身体を支えた。

「生きているようだなーー何よりだ！」

ザックは言い、すぐに嬉しそうな表情に変わった。

「何が起こったかわかるか？」

ザックは焦げた周囲のエリアを指差し、崩れたドームを見上げるようにルイに合図した。

ルイは首を振った。罪悪感が湧き上がってきた。彼は火の光が爆発するのを見て、その後意識を失ったことしか覚えていなかった。

ルイの衣服はほとんどが欠けており、露わになった肌は黒い灰の層で覆われていた。ただ、彼の明るい瞳だけが残っていた。

その時、彼はまだ他の感覚を感じることができなかった。体はまだ振動から離れていない。

「ーー」

ルイは大きく息を吸い込もうとした。同時に、視界が徐々に回復し始めたが、周囲の景色を完全には見えなかった。彼は訓練場の端で静かに立っているフィアンナに気づいた。

「ルイ？」

ザックがルイの手首をつかんだ。

「何が起こったかはわからないようだな。」

ルイは彼に差し出された腕に沿って立ち上がり、話しているザックを見た。

「俺が説明しよう！」ザックが言った。