第4話 壊したい
信者の日課は仏壇に拝むことから始まる。
振り子の音を鳴らしながら、1時間ほど手を合わせること。
なにその無駄な時間?
それから休日は、隣町の『銘葬滝』で修業を行う。
神から認知されるには、人が内から発するパワー。ソレを高める必要があるらしい。
そして最後に、夜のやる事。写真上の教祖を一時間、崇める事である。
今度は仏壇という抽象的な物でなく、教祖というれっきとしたものである。
だからこそ信者は教祖を溺愛している。
それぞれに理想の教祖を描く、その理想に好かれるために日々、偽りの善行を続ける。
ははっ、滑稽だ。
その溺愛してた教祖が事故であっけなく他界したんだよ?
たった一日で。いや、即死だから一瞬か。
……しかし、多分、これだけじゃ宗教は歪むことは無い。
幹部が有能すぎるが故、システムが雁字搦めにされている。
少しの動揺で解けないように……。
~~~~~~~~~
「宇橋様……。飲み物はお茶でいいですか?」
「……いらない」
「で、では高い紅茶をお持ちします!」
目の前では信者の正装をしたトワがお湯を沸かしていた。
……ここはトワの家である。
もちろん、僕は来る気なんて無かった。
しかし、強引にも家に引きずり込まれると、僕の足を少し焼いた。
ライターで。
もちろん歩けない僕は、椅子に座らせっぱなし。
「紅茶……お熱いので、私が冷ましておきますね!」
そういうと、トワは完成した紅茶をフー、フーと息をかけてテーブルに持ってきた。
熱さ気にしているなら、僕の足の裏焼かないでよ、痛いじゃん。
トワの目をチラッと覗くと、そこには感情がまるで黒く渦巻いてる彼女の姿があった。
……まごう事なき、美女だけどさ……。
ここの宗教に来るのが間違いだったんだよね。乙
「ほら、口開けてください」
口をこじ開けられた僕は、生温い紅茶を喉に押し込まれた。
一体僕は何をやっているのだろう……。
これは誘拐か?誘拐だよね。
「何か思いつめた表情で……お疲れでしょう?私が……体を流しましょうか?」
本来、トワの持つ綺麗なブルーの瞳は僕の姿を鮮明に映し出していただろう。
しかし今は濁り切っていて、ただただ先が見えない恐怖感が押し寄せてくる。
あぁ、地獄。
その時、ドアがバタンと開く音がした。
「ト、トワ!!お前は一体何をしているんだ?!その、教祖様の息子を……!!」
動揺している男性。
どうやらトワのパパらしい。
ここは一家そろって僕の家の信者だっけ?
「心から……あ、愛したかっただけなのよ!あの時救われた恩を、返すために!」
トワは一生懸命に言葉を並べた。
……その結果が監禁にあるのかぁ……怖いね。
教えは人の心をここまで惑わすらしい、最悪の展開だ。
「だ、大丈夫ですか?お怪我はありませんか?」
そんな我が娘を突き飛ばして、震える声で訪ねてくる、トワのパッパ。
そこに僕は貼り付けの笑顔で答えた。
「はい、私は神様なので。全然無事ですよ」
決めた。僕の宗教壊す。
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