謝罪言葉の序列は存在しますか

「すまん、電車に乗り遅れてしまって待ち合わせ時間に遅れてしまった」


「言い訳はいいのよ。取り敢えず、私の貴重な休日の時間を15分も奪ったことについて謝罪してくれないかしら、すまんではなくしっかりとね」


「はい、すみませんでした」


「わかればいいのよ、ところで貴方は何故、謝罪の言葉としてすみませんと言ったのかしら」


「え? いや、悪いことをしたらごめんなさいをするのが普通だろ」


「そうなのよ、ごめんなさいをするのが普通なのよ」


「だから謝ったじゃないか」


「貴方が言ったのは、すみませんなのよ。ごめんなさいではなく、すみません」


「どちらも同じ謝罪の言葉じゃないか?」


「私にとって、すみませんはあまり謝罪されている感がないのよ。ごめんなさいの方が謝罪されている感じがするの。ほら、日本人ってよくExcuse Meの意味で、すみませんを多様するでしょ? だから私にとってすみませんはごめんなさいの下位互換なのよ。さらに言うと、

すみません<ごめんなさい<申し訳ございません

みたいな謝罪の言葉不等式が成り立つのよ」


「でもそれは言い方の問題じゃないのか。僕が思うに、すみませんの砕けた言い方がごめんなさい、かしこまった言い方が申し訳ございませんのように感じるぞ」


「そこは、人それぞれ感じ方が違うのだから貴方と私とで違っていても不思議ではないわ。だから今度から私に対する謝罪の言葉は、申し訳ございません、最低でもごめんなさいを選択するようにしてほしいわね」


「へいへい、わかりやしたよ。とにかく僕のせいでこれからの予定が15分遅れてしまったんだ。遅れた僕が言うのもなんだが早くお前が予約してくれた美味しいフレンチとやらの店に行こう」


「ええそうね。早くいきましょう」


目的の店に着いて店員さんに予約時間に遅れてしまった謝罪と、まだ席に座れるかの確認をした。

しかし、席は空いていなかった。予約していた日が明日の日付であったからだった。


「僕に何か言うことはないのか」


「…すみませんでした」


「そこまで申し訳なく思ってねぇな、お前」

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