ちょっとお話しましょうか、くだらない話を

秋野旭

インスタの方が聞きやすいって本当?

「なぁ、僕ら知り合って3ヶ月くらい経っているのに連絡先を知らないのって変じゃないか?」


「そう?私は別に貴方の連絡先を知りたいなんて思わないけれど」


「僕が知りたいんだ」


「どうしてもと言うなら連絡先ぐらい教えてあげてもいいわよ。ほら、私のLINEのQRコード、女子のLINEのQRコードよ。読み取りなさい」


「はいはい、どーもありがとよ」


QRコードを読み取ってLINEを交換する。


「連絡先交換について疑問があるのだけれど、気になる異性にLINEは聞きにくいからってInstagramを交換するって人、いるじゃない?」


「ああ、よくいると思う。僕の友達とかがそのタイプだ。ナンパする時とかいきなりラインを聞くのは成功率が下がるからって理由でインスタ交換を持ちかける、よくある話じゃないか」


「それってみんなの共通認識としてInstagramの方が知らない人に知られても問題はないということになるでしょ? でもそれってやっぱり変だと思うのよね。結局はよく知らない人、というか友達になるかも怪しい人とも気軽に連絡先を教えられるのだから」


「そう言われると、どこかおかしいと感じてしまうな。実際に僕もインスタなら交換してもいいかなという気持ちになる」


「今の時代、LINEはあまり利用しなくてInstagramのダイレクトメッセージ機能で話す、なんてこともあるらしいじゃない。若者の〇〇離れ特集としてテレビで流れていたわ」


「ああ、それなら僕も見た気がする。結局、メッセージを送り合うだけならDMの機能で全て解決してしまうもんな」


「だから、この共通認識ってLINEがメッセージアプリケーションとして王座に君臨していた時代、Instagramが写真を投稿するためのアプリケーションとして思われてた時代に生まれたものだと思うの。時代の流行とか文明の進化とかが著しく発展している今の時勢からすると、時代遅れの認識ではないかしら。既にLINEを利用する時代が淘汰されていてもおかしくはないはずなのに」


「確かにそうかもしれないな。でもこの認識も数年後には新しいメッセージアプリが生まれて、それを使うのが主流になってラインもインスタも使われなくなる日が来るのかもしれないな」


「そうね、時代の流れは一瞬だもの」


「ところで、僕たちはラインを交換したわけだけど、ついでにインスタも交換しないか?」


「私、Instagramをやっていないの。あんな自己満足の他人の日常を見せられるだけのアプリケーションをインストールしたくないわ。スマートフォンの容量がもったいないもの」


「……お前みたいな人がいるから、LINEは淘汰されなかったのかもしれないな」

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