第五回『エレンロス』
「(前略)ちなみに、この端っこにいる突然現れて誰?! って感じの子はリチア・ベッティ。覚えにくいし、呼びにくいから皆、リツって呼んでるよ!」
「…………」
「あの」
リツがビンゴを揃えた少年のようにおずおずと挙手している一方で、司会のミカは番組が始まってもデスクに肘をつき、その狭間に頭を抱え込んで動かない。
居眠りをしているのでも、ガキシンジのお父さんのモノマネをしているのでもなかった。
単にいつもの
「リッちゃん、どう思う?」
「いや、どう……? 何が?! って答えますよ、私」
リツは未だ
「無茶振りにも程があるでしょ。まず議題がわからない。私のあだ名の紹介されて、どう思う……? 好きに呼んでいいよ! しかなくね? 第一、前回の時点でまず紹介からだろ。二人の(ズキューン)からのなぜ? そこにいくのかわからないオタク談義に挟まれて……」
「長いんで、次いきまーす」
「わかった。短くキレよく言ったらいいのね。オッケー、隣で人死んでますけど、何かあったー?! 救急車呼びますー?」
「…………」
「(たぶんいつものことなんだろうけどさ)カメラもう回ってますよー! いい加減にしろや、まともな……っていうか、まず番組やろう! 二人の喧嘩じゃなくて!」
「……エレンロスが辛い」
ミカが呟いた。
「は?」
「エレンロスが辛い」
ミカはそっくりそのまま繰り返した。ここで番組のタイトルが流れる。その引きを作ったのだった。
テーマは決まった。
「もうなんか本当にミカサも可哀想だし、エレンも哀しいし、二千年後……若しくは13の冬聴いて、胸が苦しい」
「じゃあ聴くなよ。もう聴くのよそう」
「あれ何万年後かのニーアオートマタみたいな世界で木の股行ったとして何になるの」
「言い方、他にあるでしょ。
「生まれ変わっても、それはエレンとミカサじゃないよね。救いたかったのは当代のエレンとミカサであって」
「それは鬼滅にも言えてしまうからやめて」とマギ。
「2Bになってもまた悲劇じゃん、石川さんに幸せになる役はやく誰か与えて……ディアネイラみたいな役……と思ったらディアネイラも意味深なラストじゃねえかよ……石川さんが何したってんだ。似合っちゃうのかな、儚い声してるもんな……」
「リアルでは幸せになったからいいじゃん。結局それが一番大事でしょ」
とマギが同情してつっこんだ。一方でリツはよくわからない顔をしている。
「あー……え、それって進撃? 最終回だったんだっけ」
「あとヒロイックエイジ。てか、私思うに、作者的には話題になってて良いことだと思うから言いにくいけどさ」
「おん」
「SNSとかで画像付きでさ、ここの! この伏線がヤバい! 凄い! とか言ってる奴らは、本当の好きじゃないんだよ」
「あー……」
マギが同情した。
「解るわ。普段はいざ知らず、今はそんな気にはなれないよね」
「そうそう。最終回直後にXで大量に流れてきたけどさ、いっさい良いね押してない。どころか、関連性ない押したわ。あの最終回見て、はしゃげたり、即座にいいね稼ぎに転向できる人とは分かり合えない」
「たぶん、ミカパイセン。作者が一番喜ぶタイプの読者ですよ。本人傷付けたいって言ってたし」
「うん、先生の思い通りに傷付いてるまさに今。最初から最後まで本当に良いように気持ちを弄ばれ続けたわ。正直マーレ編のアニメには言いたいことなくもないけど、終わりよければすべてよし。僕の戦争神曲だし。あれ知らん人は原曲最後まで聴いてほしいな。エレンの寂しさとの子さんの寂しさが合わさって最高になってるから。あれぞ表現だよ。原作の単語並べ連ねて、作品を表現した気になってる人は学んでほしい。とにかく、あの最終回は良かった。いい作品だった。本当、お疲れ様でした」
「へーそんな風に感じるもんなんですねー。なんか一瞬話題になって、一気にまた消えて、今はワンピの垂れ流しですよね」
リツが挟むと、ミカから返した。
「私はワンピの方がよく知らない。ニカのとこと映画は見たけど、普通にドラゴンボールのが良い」
「ミカは
「ダメだ……私、そういうの全然知らんのですよ。先輩方は詳しいんですね。あ、でもREDは見ました」
マギの目つきが変わる。
「はぁ? 出たー一番嫌われるタイプそれ。ワンピの映画ったらお前、Zかスタンピード見ろよ。なにREDって。あんなもんでワンピ知った気になられるの本当ムカつくだけど。あと、ルフィの幼馴染はサボとエースだけだから」
「え」
「マギは最近の推し活女子だから。ワンピはうるさいよ。私はまぁ映画だし、いいんじゃない派」
ミカがフォローする。とたんにマギが噛み付いた。
「良くねーよ。ワンピは映画からの逆輸入もあんだから、パラレルだけど、正史扱いになる恐れが生じるんだよ! 神の気まぐれで」
「私はもうその派がわからん……あ! じゃあ、先輩方の好きな漫画教えてください。読んで勉強します」
「ドラゴンボール。ナルト。ジオリジン。ぼくらの。ジョジョ……」
「ハイキュー!!。文スト。鬼滅。ワンピ。ジャンプラ! あとアプリだけど、まほやく。スタマイ」
「(覚えきれないので省略)てか、そういえば銀魂ってその中から消えましたよね。一時期実写とかも盛り上がってたのに」
「作品終わったしね。映画も完結した。最近またプロジェクトはやってるけど。実写版で吉原炎上編やってほしい」
「良いね良いね! るろ剣ばかり話題になるけど、銀魂も実写化成功してたよね」
「してた。キャストぴったりだった。ガンダムの
「……二人は、銀魂なら(映画)何見ればいいですか」
「新訳紅桜!」
「かぶった……」
カットが入った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます