最終話 目に映る男子はすべて友

【前回までのあらすじ】



首謀者だと思われた赤彗星せき きららは、かませ犬だった。


『真の敵はほかにいる』


彼女は不吉な言葉を残し倒れた。


男子映像の力で全回復した音鳴なじみ。

その目の前に『憂男騎士団』騎士団長が立ちはだかる。

1年7組、ヴィリエ・ド・銀河。

亡命貴族の末裔。

武門の一族。

だがそんな事は微塵も見せず誰にでも優しく接する人格者。

そんな人がなぜ?


最期の戦いが始まろうとしていた。



そして舞台裏でも・・・。


◆◆◆


Side: 1年13組、図書委員長


ボドルザー君は、調理室に男子たちがいると言っていた。

そこで何かをしているらしい。

男子、調理室・・まさか――?


考えている間に調理室の廊下まで来た。

・・・おかしい。


偵察と称し先行した1年13組女子たちがいない。

そして男性を陰から守っているはずの護衛官の姿もない。


緊急事態か?

すぐにこの事を連絡。

中を確認する余裕はなかった。


この現場に留まるのは不味い。

嫌な気配がする。

すぐに立ち去ろうとしたが・・・遅かったようだ。


立ちふさがるように目の前に女子が現れる。

見知った顔だ。


「・・・絵麻(エマ)さん、これはどういう事?」


いつもの笑顔がない。

瞳孔が開きっぱなしで感情が抜け落ちている。

まるで人形のよう。


絵麻(エマ)さんの今までの行動を思い出す。


① はると君にストーカー行為。

② はると君にサッカーでの意味不明な発言。

③ はると君特製サンドウィッチ、クンクンクン事件。


ヒエッ。

もしかして・・。


『哀れなものだな、イレギュラー。いや、よその転移者よ。』


!?

やっぱり頭のおかしい人。


・・・ではないようね。


その事を、どうして知っている!!


『お前だけが特別では無い。メルカッツンを調べたのだろう?』


メルカッツン。

彼は地球からの転移者だった。

この世界の人間には、さぞ変人に見えた事だろう。


「・・・私は元の世界に帰りたいだけ」


『本当に帰れると思っているのか?』


手掛かりはある。

ほかにも特異な人間がいるからだ。


「・・・じーく君、彼は転生者。そうでしょう?」


『さて、な。』


「・・貴女に聞きたい。この世界は何故これほど歪なの?」


『それこそお前が知るべき事ではない。』


「・・・では――」


『時間をかせいでいるつもりか?』


それもある。

しかしそれ以上に情報が欲しいのだ。


「・・・それで『よその』私をどうするつもり?」


来夢らいむはるとの記憶が戻らない。穴があってはかなわんのだ。』


何故そこまで彼にこだわる?

彼の記憶と私に何の関係が?

わからない・・。


◆◆◆


Side: 『憂男騎士団』騎士団長ヴィリエ・ド・銀河



武の道を歩んで初めてひざをついた。

立ち上がる力すらもう残っていない。

私が、敗北したのか?


辺りから歓声が上がる。

男子軍の勝利が確定したようだ。


どこからか男子たちがやって来た。

サンドウィッチケースを大事に持っている。

ここに先導したのは1年13組、か。


戦場だった周りを見渡す。

騎士団員たちが泣いている。

本当に終わってしまったんだな・・。


ん?

1年1組だけ様子がおかしい。

じーく様が焦っている。

ここまで完全に読み切った彼が?

1組は警戒態勢でどこかへ向かった。


「大丈夫?肩を貸しましょうか?」


声をかけてきたのは、音鳴なじみさん。

先ほどまで一騎打ちをしていた相手。

勝者からの情けだが、断る。

今はこうしていたい。


「戦いの中で貴女の決意も、覚悟も、道理もすべて伝わって来たわ」


・・・あぁ。

負けたのが貴女のような人で良かった。


「女子の限界を悟ったのね。でも残念。それは貴女の限界よ」


そうかも知れない。

でも、言い方ァ!


いな否否いないな、断じていな!って顔ね。でも聞いて」


思っていない。

なんなのこの人。


「男子共有制。否定はしないわ。他国で施行している所もあるし」


彗星きららさんは男子共有制を主張していた。

でもうちの騎士団は方針違うからね?

あれれ~おかしいぞ~。

この人、本当は何も理解してくれてない~。


「でもそれでは男児出産率に悪影響を与える。知ってた?」


知っとるわい!


「私に付いてきなさい。男女ともに理想の形を見せてあげるわ」


どうした急に!?


「それには貴女の力が必要。

ふふっ。まずはお互いを知るために友達から始めましょう?」


そう言ってこちらに手を伸ばし、握手を求めてきた。


友達?

トゥンクッ!


いや何かおかしい。


でも。

・・・でも、

この人ならやるかも知れない。


彼女の方へ手を伸ばす。

すると手を握られ引っ張りあげられた。

そして改めて言われる。


「これからはズッ友だょ!」


ん。

んっ?

まぁいいか。


「いいですとも!」


その手を握り返した。


◆◆◆


Side: 音鳴おとなりなじみ(はると君の幼馴染)


ズッ友騎士団長ヴィリエちゃんをやっつけた。


くっ!


フルパワー、100%中の120%。

それを超えたひずみか。

それとも男子映像ドーピングの副作用か。

知性がすごく下がって・・いやそんなはずない。


わかったのだ。

やはり暴力、暴力は全てを解決する・・・!!


「音鳴さん、そろそろ男子たちの所へ向かいましょう」

ズッ友のヴィリエちゃんがうながす。


「もう!なじみちゃんって呼んでっ!」


ヴィリエちゃんがびっくりしている。

何でそんな顔するの?


それより、どこもかしこも祝勝祭り。


ひときわ騒がしい所がある。

また、1年13組~!


犯人は谷岡姉妹。

口論している。

学校で一番仲が良いんじゃなかったの?

原因はサンドウィッチ。

男子たちが一人一人自分で作ったもの。

その味のわずかな違いを議論、そして論破。

それが発展し、たたのケンカになった。


「姉さんそれを渡して!そうすれば悪いようにしません!」


「嘘つけ!悪いようにしない?いつも美味しい所を持って行って!」


「そんなことありません!」


「8歳と9歳と10歳の時と、12歳と13歳の時もずっと・・我慢した!!」


「な、何を・・?」


「あんたのお強請ねだりだろ!!」


「えぇっ・・??」


「親睦会のときもだ!結局3分の2を持っていきやがった!

あんたはそうやって何でも持っていく!次は許嫁が欲しいってか!」


「そんなに、我慢してた、の・・・!?」


「これをくらえよやー!」


谷岡(姉)さんが隣りにいた女子を投げ飛ばす。

女子を投げるなんてとんでもない!


投げ飛ばされた女子の顔が近づいてくる。

あれ、あなた。

飛ばされても笑顔を絶やさないの?

すごいすごい!


いつもならサッと避けるだろう。

でもあの笑顔をみたら、ね?


来いやぁ!!


ズッ友がびっくり顔。

そしてかばおうとする。


うぐぅ!


やっぱり暴力は良くない。

こんなに痛いんだもん。


これは大きな収穫だ・・・!


次に生かせ・る・・・



◆◆◆


【登場人物】



音鳴なじみ


来夢はると


じーく君


やっ君


1年2組学級委員長


1年2組のみなさん


あの子


1年13組学級委員長


1年13組副委員長


1年13組、不敗の図書委員長


1年13組のみなさん


ゆり君


1年4組の学級委員長


1年4組の副委員長


1年4組のみなさん


1年7組、黒色体操服部隊


1年7組のみなさん


1年9組のみなさん


1年11組のみなさん


1年10組のみなさん


1年3組のみなさん


1年14組の学級委員長


1年14組のみなさん


1年5組のみなさん


1年6組の学級委員長


1年6組の副委員長


1年6組のみなさん


1年1組のみなさん


1年2組、隊長代理


第3運動施設体育館内にいた教師たち


『海外帰りの男』パプテマス君


1年13組、絵麻(エマ)さん


1年8組のみなさん


学校のみなさん


1年13組、不動さん


???? その① (ヴィリエ・ド・銀河)


???? その② (赤彗星)


1年13組、谷岡(姉)さん


1年13組、谷岡(妹)さん


1年2組、製パン大手の社長令嬢


『巨人要塞』ボドルザー君


『男子軍』残存部隊、臨時総司令官


リンダ


10年後の来夢なじみ


10年後の図書委員長


◆◆◆


作者    ヴォーダン



Thank you for you


◆◆◆





10年後



Side: 来夢らいむなじみ(はると君のお嫁さん)


ここは男性特区の高級住宅街。

高校からの友人と歩いている。

友人とは、元1年13組図書委員長。

家が近いのだ。


今、向かっている場所は児童公園。

長女はお気に入りの靴を履いてご機嫌。

次女はベビーカーに乗せている。


元図書委員長の次男も一緒だ。


「男性アイドルグループか。うまくいくといいわね」


元図書委員長がそう言う。


私は高校を卒業後、大学に通いながらアイドル事務所を設立。

副社長のズッ友ヴィリエちゃん、そして仲間たちと奮闘した。

『男性アイドル部門』を立ち上げたときは批判が凄まじかった。

本当にさまざまところが妨害してきた。

暴力?

そんなチャチなもの高校1年で卒業している。

もっと有効な手はいくらでもあるんですよ。


「男性アイドルの確立。これだけで何年もかかってしまったわ」


「貴女じゃなければ出来なかった仕事よ、なじみさん」


「名前で呼ばれるより、名字の方が好きだわ」


「はいはい。ご馳走さま、来夢らいむさん」


「はいは一回」


「ふふっ、お母さんが板についたわね」


あれから。


はると君をわからs・・分かり合って結婚した。

そして二人の女の子に恵まれた。


上は6歳。

下は2歳。


図書委員長はもっと早い。

高校卒業後、すぐ結婚。

相手はあのじーく君だ。

何と男児ばかり3人も出産。

そのため?要人警護が付いている。


アイドルうんぬんより、そっちの方がすごいと思う。


私たちは黄金世代と呼ばれている。

元13組の学級委員長と副委員長は市議会議員。

製パン大手の社長令嬢は海外支社の副社長。

谷岡姉妹は陶芸と美食、婚活の有名研究家。

赤彗星せき きららさんはボドルザー君の第一婦人兼代表取締役社長。

ほかにも元13組の笑顔絶えない不動産会社――

確か、4組の――

まぁ便利なコネだったので遠慮なく使わせてもらった。


過去を懐かしんでいると、長女がそでを引っ張ってくる。


「お母さん!あのね。うまく男子とお話できないの・・」


その男子とは、図書委員長の次男君だ。

先ほどまで先行して前を歩いていた。

長女と同い年の6歳。

女子と話すのが恥ずかしいのだろう。


「ふふっ、それは困ったわね」


「笑い事じゃないもん!」


「そうね。そういう時は――」


「うわ!男子だぁ!かっこいい男子がいっぱいいるぅ!」


長女が突然走り出した。

公園はまだ先なのに目が良いのね。

長女ははると君と私の良い所だけを集めた集大成。

見目はとても良い。


次男君のほうを見る。


「・・・」


次男君はもしかしたら長女が?

あぁ、何てこと。


長女よ、油断は女子の最大の敵よ。


そう。

ライバルはすぐ近くに・・・。


「ママ!・・とママぁ!」


次女がベビーカーから顔を出した。

この子は図書委員長も『ママ』と呼ぶ。


「あらら、次女ちゃん目を覚ましちゃったのねぇ♪」


図書委員長が嬉しそうにあやす。

娘が欲しかったと言っていた。

・・・世の女性が聞いていたら何と言うか・・・。


おっと話が逸れた。

次女は最初から寝てなどいない。


この子は長女が離れるのを待っていたのだ。

愛くるしい笑顔が何ともワザとらしい。


「こっちぃ・・ここぉ」


舌足らずで次男君を呼ぶ。

うまい手だ。


次女と目が合った。

なるほど。

ベビーカーから降ろしてあげる。


小さなその手は目に映る男子へまっすぐ向かう。

そして、


次男君を見事にホールドした。


2歳でもやはり男子を求めるのね。


その目は男子を一生懸命映している。


『目に映る男子はすべて友』


自分の子のため、

いえ、

全ての女性のために、そういう世の中にしていきたい。





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最後まで読んで下さり、ありがとうございました!

この作品は本来、最初の1ページの読み切りでした。


しかしコメントを頂き、感動のあまり続けてしまいました。

(評価や応援もありがとうございました!)


「評価をもらうと嬉しい」というのは真実ですね!


さてこの作品はオマージュとリスペクトの産物です。

しかし唯一作者が心がけたものがありました。

それは『悪役にも救いを』です。

でもこれは本来あるべき姿を捻じ曲げる行為。

やはり葛藤と矛盾が、ががが。


おっと、話が長くなりそうなのでこの辺で。


やっぱり最高アニメや最高マンガは最高でした!!

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