第5話  おぼていますか?

【前回までのあらすじ】


毎年、ある時期になると1年生から申請が届く。


それは『男子を共有化』すべきでは、というものである。

今年もやはり申請してきた。

教職員も慣れたもので、「実力で示せ」と申請を受理する。


これを聞き、強く危機感を抱いた男子がいた。

1年3組、『巨人要塞』ボドルザー君である。


ボドルザー君は用意周到だった。


男子たちに誤情報を発信させたのだ。

それが功を奏し、男子が所属する組を味方に引き込んだ。

1年1組じーく君だけはこれを察知。

難を逃れる。


上位組を率いるボドルザー君 VS 下位組 VS 1年1組。


結果がどうあれ、男女が争った事実が残る。


悲劇は止められないのか。


どうする、はるとく・・・。はると君はもういいや。


どうする、なじみちゃん!



◆◆◆


今回は勢力が3つ。

有名な戦争にならい、『男子軍ゼントラーディ』VS『女子軍メルトランディ』VS『地球軍』とする。



①男子軍  2、3、4、5、6、8組


②女子軍  7、9、10、11、12、13、14組


③地球軍  1組




(※)1組と3組のみ男子がいる。

   

   1組 じーく君

   3組 ボドルザー君



勝利条件 相手勢力6割の撃破


敗北条件 じーく君、ボドルザー君両名の保護(奪取)失敗



◆◆◆



ボドルザー君は捕まった。


「こ、これが女子のパワー!?デ、デカルチャー!!」


『男子軍』は指揮系統を完全に潰され崩壊した。


『女子軍』の2大派閥。

『男子完全共有』派と『憂男騎士団』派。


そのトップ二人がボドルザー君の腕をそれぞれつかむ。

ボドルザー君は両方から引っぱられ苦しそうだ。


このままであれば『伝説の大技、大岡裂き(※)』が見られるかも知れない。



(※)大好きなマンガで知った、大岡越前のお裁きのひとつ。

1人の子どもを母親2人がひっぱり勝った方が母となる、というもの。


しかして母のパワーは強く、子どもは真っ二つに裂けてしまったとか。


ござそうろう、あっぱれ!



◆◆◆


Side: 『男子軍』残存部隊、臨時総司令官


我ら『男子軍』の本陣が壊滅した。

生き残りはいなかった。


指揮系統が寸断され、一時混乱。

少なくない犠牲を払ったが、なんとか再編成できた。


現在、敵は全勢力を戦場に集結中。

今回で完全勝利するつもりか。


上位組を無礼(なめ)るなよ。


「来たか、奴らめ、来るなら来い。追い詰められた我らが何をするか見せてやるわ」


「総司令!敵主力が・・・れていきます!」


どういうことだ?


「侵攻方向を予測、座標確認。敵の目標、判明しました。・・じーく君率いる『地球軍』です!」


「なんてこったッッ!!」


「敵主力、行軍速度さらに上昇!」


「「「「   !!!   」」」」


「どんな犠牲を払ってもかまわん!『地球軍』を死守しろ、残りあと2時間22分だ!」


「・・・総司令。各組友軍に情報伝達、完了しました」


「テンションを臨界まで上げておけ。いよいよとなれば全員で奴らにぶつかる。・・皆すまんな」


「「「「 いいですとも! 」」」」


「あいつらを『地球軍』にやるわけにはいかんっ!!」


◆◆◆


Side: 音鳴おとなりなじみ(はると君の幼馴染)



・・・


・・・・・。


『地球軍』は、まだ無事ね。


あぁ、・・・良かった。

間に合って、本当に。


・・・。


胸と肩、それに腕に2発・・か。

退場判定は出ていない。


こんな所で倒れている場合じゃな・・い。


きっと、待ってい、る。


笑顔が。


声が・・。


もう一度、聞き・・た・・・。


もうい・・・ち・・・ど・・・・


・・・・


耳に入ってくるのは戦場の怒声のみだった。



◆◆◆


Side: 『男子軍』残存部隊、臨時総司令官



「3組が撤退を開始!」


「バカな!?敵に利するつもりか!」


「8組壊滅。・・・2組の救援は間に合いませんでした」


「味方は本組とあと数組のみ、残りの女子は全て敵です」


「我々は突出気味となり、このままでは敵軍の中に孤立します」


「10時方向より敵影!」


「防衛陣を展開しろっ!」


「間に合いません!」


「装甲部隊剥離!・・追撃さらに来ますっ!」


「きゃぁぁーーっ!?」


「リンダ!?・・・おのれぇぇぇッッ!!」


「7組の黒色体操服部隊ブラックジャージ・トルーパーが突撃陣を形成!」


「狙いは・・・『地球軍』1組です!!」


「・・・総司令」


「奇跡は起きなかったか」


「「   ・・・。   」」



『『『『 ♪~~ ピンポンパンポ~~~ン  』』』』


『これより、地球軍のじーく君から素敵な映像がプレゼントされます。皆さま、こぞって・・~~』



◆◆◆


Side:『女子軍』所属1年13組 学級委員長、副委員長



戦闘が止まった。


最大画面にされた映像には、二人の男児が映っている。

幼少期の1年5組やっ君と、1年1組じーく君だ。

二人は半ズボンでトンボを追っかけていた。


「不思議だ、この映像。ずっと昔に見た気がする・・・なぜだ?」


「我々は女子区出身。見た事あるはずございません」


思考しながらも目は「キャッキャッ」している男児を追尾している。

この映像は永久保存ものだ。


とくに男児のひざ小僧が素晴らしい。


男児・・!


副委員長はハッと気付いた。


「わかりました。我々の、母性本能が呼び覚まされているのです」


「なに!?」


「16年周期の時を超え・・・遺伝子提供者のカールチュ・・」


「いやいや、母性本能はしっくりこない。もっと違うナニかだろ」


画面が切り替わる。

今度は学ランを着ている。

たぶん中学生になってすぐの、やっ君とじーく君だ。

場所は校庭のベンチ。


やっ君が読んでる本を、じーく君が興味有りげに見ている。

やっ君がそれに気付き、じーく君に微笑む。


「「・・・」」


学級委員長は目を閉じた。

この瞬間にも貴重な映像が流れていく。


「なんだ・・・この二人は・・」


「ご存じ、ないのですか!?」


あおってくれるな。二人はもちろん知っている。場面だよ、この場面」


「・・・わかりました。これは薄い本『俗な名前だな』の2ページ目をリスペクトしたものです」


「なに!?」


「ちなみに前の映像は『トンボォ、しようぜっ!』をオマージュしたものでしょう」


「ほぉ!」


「覚えていますか。初めて見て触れたときを」


「男子×男子本のことか?」


「そうです」


「・・小学1年生の時だったな。母のベット下で発見したのだったか」


「はい。隠された女子文化『同人誌』。二人で読みふけったものです」


「10年前の話か」


「その記憶が呼び覚まされているのです」


「「・・・」」


「10年の時を超え、」


「・・再び女子文化がよみがえると言うのか・・」


「この動画編集者は我らの同胞。失うわけにはまいりません」



◆◆◆



Side:『男子完全共有派』筆頭 赤彗星(せき きらら)



「これが・・・男子映像の力かっ!!」


これさえなければ完勝していた。

なぜだ!


それにしてもこいつらはッ!!



『こちら『女子軍』所属、1年13組。これより貴組、1年1組『地球軍』を援護する!!』



援護?

今さら!?

それって、貴女たちの裏切り行為ですよね?



『 映像を見ているすべての女子に告げる。


我らの目的はただ一つ、


「共有女子」どもを倒し、再び男子たちに自由を取り戻すのだ!! 』


『 男子の笑顔を失うわけにはまいりません。 』



こいつらァァ!


絶対ほかの目的もあるだろ!私にはわかる!!


13組に呼応するように、先ほどまで味方だった組が反転攻勢してきた。


女子は流れに敏感だ。



もう、私は怒ったぞっ・・・!!!





"To be Continued"



◆◆◆




女子が夢見るその果ての


澄んだ瞳の彼のほほえみ


小さな恋から始まる大きな惚気のろけ


語り尽くせばまた朝日がのぼる




次回、最終話




『  目に映る男子はすべて友  』





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ラストまで残りあと一ページ

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