第4話 サンドウィッチ、料理の本質

今日は1年2組と、1年13組の親睦会。


女子は男子をめぐり争うことがある。

でも、それ以外は驚くほど仲が良い。


人間は社会的動物。

特に女性は縦より横のつながりが大切なのである。


◆◆◆


Side: はると君の幼馴染



私は先日のことを謝り、好物だという高級菓子を渡す。


「体育のときボールを気絶するまでぶつけて、・・ごめんね!」


「・・うん、いいよ!でもあれは中々効きましたぞ!はははっ!」


握手をして、お互いハグをする。

13組の図書委員長にもプレゼントを用意した。


「これ、メルカッツンの原文。読みたいって聞いたわ」


「気にしなくていいのに・・・。でも、ありがとう」


「「「「   プロージット(乾杯)!!   」」」」


さっそく始めている人たちがいる。

私たちもテーブルに向かった。


「今回は立食形式のようですな。ほう、サンドウィッチですか」


「・・・この紅茶。ブランデーに合うと思う」


未成年でアルコールはダメでしょう。


「ん?このサンドウィッチ・・、美味しくないですな」


・・あら、本当だわ。


そのとき、騒ぎが起こった。


「なんだ!このサンドウィッチは!!作った者をここへ呼べ!」


「これはサンドウィッチじゃない。ただの出来損ないさ。食べられないよ」


13組の谷岡姉妹。

この姉妹は食事に関して、とても厳しいと聞いている。


「いえいえ、冷めたパンだって温めれば、ほら。出来立てみたいになる」


「「「「   さすがパン屋の娘!!    」」」」


フォローに入った子は製パン大手の社長令嬢。


「温めれば良いと言うものではない!そもそもサンドウィッチというものは、・・・・」


このままでは不味いわね。

サンドウィッチが原因だとすれば、解決策は思いつく。


だけど、ここで目立つのは得策ではない。

しかし今後を考えれば動くのが最善か。


仕方ない。


「私もこのサンドウィッチには納得できないわ」


皆がこちらに注目する。


「2時間後にもう一度来てください。本当のサンドウィッチというものを食べさせてあげますよ」


◆◆◆


「と、いうわけなの!助けてよぉ、はると君ぅ~ん!」

この策には男子の助けが絶対必要。


「えぇ?せっかくパプ君と遊んでるのに~」


「そう言うな。たしか幼馴染の音鳴なじみ(おとなり なじみ)さん、だったか」


「はい!そうですっ!」


二人が笑う。

あのあと仲良くなったらしい。


パプテマス君も一緒とは何とも都合が良い。


◆◆◆


2時間後、


そこには形の不揃いなサンドウィッチが大量にあった。

具材が飛び出した物もある。


「・・・私たちを馬鹿にしているのか?」


音鳴おとなり、キミには失望した」


「「「「   がっかりぃ~    」」」」


「スンスンスン・・・あら?・・・クンクンクン!!」


「絵麻(エマ)さん、どうしたの?」


「貴女には分からなくて?サンドウィッチが・・呼んでいるのよ」


「・・・??」


「見える、見えるぞ!私にもそれが見えるっ!」


「なんと言ういたわりと友愛じゃ。パンが心を開いておる」


「「「「   風だ、風が戻って来た!わーい!    」」」」


「これは・・。とんでもない事になるぞ」


「何か知っているの、谷岡さん?」


「ああ!見てくれは汚いただのサンドウィッチさ。しかし、~~」


「・・・みんな、どうしたって言うんだい?」


「貴女はこれを見て何も感じないの?そんなのっ!あんまりだよぉ~!(涙)」


「理解できぬと言うのであれば、卿と語ることは何もない」


「「「「   辛辣しんらつぅ~    」」」」


私は手を一度たたく。

場が静まった。


皆が答えを求めている。


ふぅ・・・。


「これは究極と至高のサンドウィッチ、

そう。はると君とパプテマス君が作ったものです!!」


・・・

・・・

・・・


「「「「   うぉォォーーーーーWRYYYYYーーー!!   」」」」




1年13組、谷岡(妹)さんの感想。


『あ・・・ありのまま今起こった事を話す。


もぐもぐっ。


サンドウィッチをたしかに持っていた。でも次の瞬間無くなっていた。

誰かに奪われたとか、そんなチャチなものじゃない。


食べたというだけ!ただだけが残るのだッ!!』



1年13組、谷岡(姉)さんの感想。


『私は姉だからな。

妹にねだられたら、ゆずるしかない。

思うところもある。

しかし、そういう時は逆に考えるんだよ。

あげちゃってもいいさっ、てね。

誰だって妹は可愛いもんだ。


もぐもぐっ。


だが、このサンドウィッチは渡さない。


絶対にだ!』



◆◆◆


Side: はると君の幼馴染(音鳴なじみ)


私は説明する。


パンと具材を用意しただけ。

はさむ工程はすべて男子が行なった。

二人は楽しそうに料理していたと。


音鳴おとなりはん。あんた、なんちゅうもん食べさせるんや!これに比べたらほかの食べもん、みんなカスやで!」


「「「「    そや!そや!!     」」」」


場の盛りあがりは上々。


「みなさん、サンドウィッチの起源はご存じですよね?」


「あぁ、もろちん。・・いや、もちろんだとも!」


「たしか男性が女性のために作ったのが始まりだとか」


「そうそう。料理が苦手な夫が、忙しい妻のために作ったのよね♪」


「仕事をしながら片手で食べられるように、だったか?」


「都市伝説だと思ってた」


「「「「    良いハナシダナァ~     」」」」



閉めに入るため、私は語った。


サンドウィッチは男女関係そのものだと。


具材は男性。

女性はパン。


二つのパンは、具材をはさんで外に出したくない。

ではどうすれば良い?


そう。

パン同士が協力し、がっちり閉じ込めるのだ。


では、今の2組と13組が協力して具材を逃がさなくできるのか?


「「「「    うぉーーーーーーん!!     」」」」


親睦会のときに調理した女子たちが泣き崩れた。

その横で見ていた女子たちが支え合う。


今回の『サンドウィッチ事件』は些細な手抜きが原因だった。


男子は来ない。

女子だけなら大丈夫だと。


また、男子の奪い合いのうっぷんもあったのかも知れない。


◆◆◆


2組と13組の学級委員長がにこやかに話す。


「こんな貴重なものを分けて頂いたこと。感謝に堪えないよ」


用事で来れなかった子たちもいる。

女性には鋼の掟がある。

戦利品は必ず分配する、である。


「ふふっ、次はお手柔らかにね」


「いやいや、こちらこそ。だが、貴女方が困ったときは力になると約束しよう」


2組と13組が、がっしり握手した。

拍手が起こる。


あちこちでも握手したり、ハグしている。

『ごめんね!』、『いいよ!』の大合唱。

お互い色々あった。


今は皆、心からニコニコしている。


今回、得るものがとても多かったと思う。


はると君とパプテマス君に感謝だ。





次回、



『  おぼえていますか?  』





男女比の歴史も、残りあと2ページ

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