第3話 男女関係強化サッカー

【前回までのあらすじ】


何かいろいろあって、男子だけが友達じゃないと知ったはると君。

女子にも、今までより優しくできるようになった。


そんなある日、男子が女子に冷たく当たる現場を見てしまう。


また別の日にも・・・。


女子が泣いている。


どうする、はると君!


◆◆◆


4時限目は体育。


2組と14組、8組と13組が合同で行う。

種目はサッカー。


そう、男女関係強化サッカーである。



ルールは以下の通り。


① サッカーボールをゴールに入れると1点。

② ボールの範囲内にいる女性には攻撃を加えても良い。

③ 戦闘不能になると退場。

④ ボールは2つ。男性用と女性用を同時に使用。

⑤ 男性に触れると即失格。


有名な戦争にならい、『反地球運動』VS『地球連邦』とする。


反地球運動  2組、14組

地球連邦   8組、13組



(※)男子は強制参加。


   2組 はると君

   8組 パプテマス君


◆◆◆


Side: はると君


顔見知りの女子が救急タンカーに乗せられる。

近づくとこちらに手を伸ばしてきた。


「はると君、私を吸って・・・」


「私の・・命を吸って」


名前は絵麻(エマ)さん。

1年13組の子だ。

なぜか偶然会うことが多い。


「あなたには・・・それができる。さぁ!この機会にのっ、むぐぐッ!?」

ほかの女子たちに口をふさがれ、退場していく。



「なぁ、はると君。女とのおしゃべりは済んだかい?」


うしろから声をかけられる。

振り向くと、背の高い男子がいた。


1年8組、『海外帰りの男』パプ君だ。

会話が終わるのを待っていてくれた。


こんなに優しいのに、どうして。


転がっている男性用サッカーボールの所まで行く。

「パプ君、女子が泣いた。たくさんの女子が泣いたんだよ!」


パプ君のほうへ蹴った。


「わたしにはその権利がある」

左足で簡単にキャッチされてしまう。


「男子の足を引っ張ることしかできない女どもに何ができた?優先すべきは一握りの男子だけだ!」

ボールが蹴り返される。


ぐっ、速い!


「違う!女子の気持ちを大切にしなくて何になる!」

なんとか蹴り返す。


「優しくするだけが正しいと思うなよっ、はるとぉ!!」


「優しくして、なにが悪い!うっ!?」

返されたボールがワンバウンドして太ももに当たった。


『『『『  キャーーーーーー !?  』』』』


周りで見ている女子たちが悲鳴をあげる。


『はると君!あせってはダメ!』

『パワーがダンチだんちがいなんだよ』

『男子が競い合っている・・だと!?』

『尊い・・・』

『『『『  キャ~~~ キャ~~~ ♪  』』』』

『これほどの熱狂。・・まずいわね』

『一度火のついた乙女は、爆発だってするんだぞ!』


視界のはしに祈りをささげる女子たちが見える。


『『『『 (私のために争わないで・・、ゲヘヘッ♪♪) 』』』』


◆◆◆


ボールを何回蹴っただろうか。


「はぁはぁ」


あちこち痛い。


でも負けるわけにはいかない。

自分だけじゃない。

パプ君自身のためにも!


「分かるはずだ!女子を泣かせることが悪いことだと。男子には、パプ君には分かるはずだ!」


『『『『  キャ~~~~~~♪  』』』』


「なんだ?何と言ったのだ!?女の声で聞こえ、・・」


『『『『  はるときゅん、だいしゅきぃ~~~~~~♪  』』』』


パプ君に男の友情は通じないのか!?


「それなら!」

ボールを思い切りぶつけてやる!


『ダメよ!』


僕の狙いに気付いたのか、8組の女子が飛び出る。

周りがざわついた。


『貴女!そこをお退き!』

『いやです!だってパプテマス様は私の・・・』

『まだそんなことを言う!』

『ひとつの事にこだわって、・・そんなんじゃ疲れるだけじゃないか』

『だって、そうしないと私・・』

『ねぇ、はると君が見ている先をごらんなさい』

『・・・』

『彼ともいつかこうして仲良くなれるわ』

『ほんとぉ?』

『えぇ』


射線が開いた!


「わかるまい!女子を泣かせるパプ君には。こうして聞こえる女子の応援が!」


Go、シュート!


「女子の応援?ふっ、そんなものが役に立つものかっ!」


お腹でトラップして受け止められた。

うまいっ!


『『『『  キャ~~~~~~♪  』』』』


女子たちがどんどんグラウンドに集まってくる。

応援の声もさらに大きくなった。

運動場の外から。

体育館から。

校舎から。


『『『『  ふたりとも、がんばえぇ~~~~~~♪  』』』』


パプ君の動きが止まった。


「なんだこのプレッシャーは!?足が動かん!動け!なぜ動かんのだ!」


これは、・・スライディングをするチャンス!


「いつもいつも裏から見ているだけで、女子を泣かせて」


汗をぬぐう。


「許せないんだ」


心に代えても、体に代えても。


応援が耳から身体に入り込んでくる。

この万能感。

女子パワーですべてが満たされていく。

そうか。

このまま任せれば良かったんだ。


「みんなに僕の身体を貸すよ!」


『『『『 !? 貸すってどゆこと!?どゆことぉ~~~~~~!?  』』』』


女子が叫ぶ。

僕も叫んだ。


「泣かせた女子たちにあやまれ!うぁぁぁぁぁぁぁーーーっ!!」


足にみなぎるパワーがサッカーボールを弾き飛ばし、パプ君まで貫通した。


「はっ?おいっ!?ぐっ!ぐわぁおぉぉぉぉぉぉぉぉぉー!?」


はぁはぁ。

・・・。

・・・。

やばい。

・・・悪質スライディングだ、これ。


どんな様子か見上げると、苦痛にゆがむパプ君と目が合った。


「このまま・・わたしだけが、びるわけにはいかない。おまえの危険行為も、一緒に詫びてもらう・・ぞ・・、来夢らいむ はると・・・!」


パプ君はそう言って意識を失った。


え?えっ?


『『『『  キャーーーーーー !?  』』』』


異変に気付いた女子たちが駆け出している。


・・あぁ。


パプ君の身体が、


倒れこむ影が、・・どんどん広がって、い、くっ・・・?。



(※)幼馴染ちゃんがここで助けた場合。

 → ifルート 『いつもそばにキミがいた』

   ハッピーエンド


◆◆◆


その頃、幼馴染ちゃんは・・。



Side: はると君の幼馴染



「3人ひと組になって、1人づつ撃破しなさい」


「「「「 はい! 」」」」


ゴール前まで順調に制圧が進んだ。


「ふぅ。さて」


目の前で女子がうずくまっている。

13組の図書委員長だ。


「従う気になりましたか?」


知略に長ける人が丁度欲しかった。


この子が加われば仲間は5人となる。

はると君を囲いこむ日も近いわね。


「・・貴女にそんな決定権があるとでも?」


まだ抵抗するのか。


「口の利き方に気を付けてもらおう!」


もう一度サッカーボールをぶつける。

その憐れむ目がとても不快だ。


いいわ。


いつまで耐えられるのかしら。


ボールを蹴る。


大きな影が図書委員長を守るように立ちふさがった。

「お早く。今のうちに!」


この女子のことは知っている。

背と胸と声が大きいだけの腰ぎんちゃくだ。


図書委員長が足を押さえながら遠ざかっていく。


「ちぃっ!」


狙いを定めボールを蹴ったが、目のまえの肉壁に阻まれた。


でかいだけの無能のくせに、何度も何度も受け止める。


ボロボロになっても不動のまま。


何がそんなに面白いのだ。

笑顔を絶やさずにいる。


「よせやい、痛いじゃないか」

しまいには舐めた口を聞いてきた。


だったらそこをどけば良い。


サッカーボールを蹴る。


しばらくして、それは立ったまま動かなくなった。



図書委員長は13組に合流し、射程圏外へと逃げ延びていた。

どこか遠くから、喧噪だけが聞こえてくる。


「私と来てくれれば・・くっ!」


◆◆◆


Side: ???? その①


男子が救急タンカーに乗せられる。

私はこの光景を一生忘れないだろう。


!?


はると様が意識を取り戻し、・・た??


「・・ふぁ。・・大きなおっぱいが跳んだりはねたりしている!あははっ、大きいぃ!」


はると様が・・、はると様がっ・・!


「あれは、Gカップかな?・・いや違う、違うな。Gカップはもっとバァーってゆれるもんなっ!」


人類の希望、男性の革新。

はると様は革新、革新・・だった。


どんな女性にも優しく接する性格。

私たちはそれに甘え過ぎたのだ。


「動きづらいなぁ、ここ。うーん、降りれないのかな。おーい、誰か降ろして下さいよ。ねぇったら」


私たちは、いや、私は変わらなければならない。




Side: ???? その②



あれが、はると君の幼馴染か。


ナンバーワンとしてこびり付き、おのれの力を過信する俗物め。

お前のような女がいるから男子が汚染されるのだ。


男子を汚染から守らなければならない。

今ならまだ間に合う。


誰もできないと言うのなら私がやろうではないか。


男子完全共有制、劣悪女子排除法。


ここに宣言する!



◆◆◆



4時限目の体育は終わった。


皆が心地よく運動できた事だろう。


しかし、


この合同サッカーが、分岐点であったことを知る者は、まだ少ない・・・。




次回、



『  サンドウィッチ、料理の本質  』




見てください!

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