第2話 男女関係強化運動会


今、一年生たちは運動会を行っていた。

そう、男女関係強化運動会である。


場所は第3運動施設。

運動場の広さだけで国立公園ほどある。

上級生たちは、もっと広い施設を使っている。


運動会の内容は以下の通り。


1年1組~14組まであるクラスを偶数と奇数で分ける。

男子も強制参加。


有名な戦争に習い、奇数を『帝国軍』、偶数を『同盟軍』と呼ぶ。


帝国軍 1、3、5、7、9、11、13組

同盟軍 2、4、6、8、10、12、14組


(※)1~6組には男子がいる。


◆◆◆


Side: 同盟軍


【同盟軍 4組陣地】


4組の学級委員長は、男子に優しく声をかける。

「ゆり君、もうすぐ2組のはると君が来てくれる。そうすれば敵をはさみ撃ちにできるわ」


「う、うん!」


現在、帝国軍の7組、9組、11組から間断なく攻撃を受けている。

ゆり君を奪うつもりのようだ。


安心させるために言ったけど救援は来ない。

なぜなら、はると君も今頃はきっと・・。


同盟軍は戦力分散の愚をおかしていた。


学級委員長は決断しなければならない。


クラスメイトたちの目を見ながら話す。

「私たちは孤立していて、相手は3倍の戦力。守るべき男性、ゆり君もいる」


みんなの目は真剣そのもの。

「男性を取られるのは好きじゃないわ。ふふっ、逃げるとしましょう」


「クスッ」とみんな笑い、士気がさらに高まった。


現状、一番厄介なのは7組のブラックジャージ・トルーパー(黒色体操服部隊)だ。

逆に9組、11組の連携はつたない。

ここを狙うしかなかった。


「今から中央突破を図ります!皆さん、ゆり君を中心として全力疾走なさい」


「「「「 いいですとも! 」」」」


「私と副委員長は、ぎりぎりまで脱出の援護にあたる!」


「いいですとも!」

副委員長がこちらを向いて笑う。

相変わらず頼もしいわね。



◆◆◆


同時刻、


【同盟陣地 10組】


「ほかの組との連絡はまだ取れないの?」


「ジャミング装置が所々あるため、通信機器が使えません!」


ドォーンッ!


「どうしたの!?」


「3組の、3組の奇襲ですッ!!」


「速い、速すぎる!」


「まるで・・風の貫花子かんはなこだ!」


(※)『北風少女ノルトウィンドメッチェンの貫花子』。

「風の」と略すことが多い。


◆◆◆


【同盟陣地 14組】


「全員、抵抗中止。5組に降伏すると伝えて」


「委員長・・」


「私はいい」

そしてぺタンっと学級委員長は座りこんだ。


◆◆◆


【同盟軍 6組 撤退中】


「1組の追撃が止まりません。いかがなさいますか?」


のじゃロリ口調な学級委員長は、それに答える。

「どうするもこうするもないのじゃ。逃げの一手じゃよ」


撤退準備をしていたのに、これだけの損害が出ている。

「ほかの組はダメかもしれんのぉ」


「はい?」

副委員長がにらむ。


「い、いや、最近ひとり言が多くていかんのぉ」


◆◆◆


【同盟陣地 2組 はると君、健在!】


Side: はると君の幼馴染ちゃん視点


「ふぅ」

現在交戦中の13組は、下位の組なのに手ごわい。

しかし、接近戦はこちらに一日の長がある。

私は迎撃隊長に自ら志願し、人望を集めるため活動している。

今は目立った功績が必要なのだ。


女性は、得るべきものが得られなかったとき、変わらざるを得ない。

自分1人だけで実行したから、作戦に隙ができた。


それなら今度はあの子を誘って計画を練ろう。

彼女となら、はると君を分け合っても我慢できる。

同じ迎撃隊長だから、この時間は休憩中のはず。


話してみよう。

・・・

・・・

・・・


・・・あの子がいない。

貴女あなたたちの隊長はどこかしら?」


それに応えるように女子が立ち上がった。

部隊の副隊長か。

たしか生真面目な子だ。


「現在、私が隊長代理を務めております」


・・・?・・!!


その意味を理解したとき奥歯を強くかんでしまった。

血の味がする。


「彼女は、あの子は・・・13組の、誰にやられたの?」


隊長代理が少しだけ視線を下げた。

「一騎打ちによるものではありません。

・・・敵の二つの部隊によって行われた各個撃破だと把握しております」


周りを見る。

ほかにもエース級の子が何人かいない。


そう、・・・あの子は袋叩きにされたのね・・・。


爪がくいこむ。

「あはははっ!それなら私を倒すときは、13組がまるごと必要かしら!!」



それでも運動会は続く・・・



(※)負けた人は運動場から退場しているだけです。


◆◆◆



♪~~~~~~


体育館内には教師たちが待機していた。

判定や安全確認のためである。


同盟軍はそこの前に集結し、挽回ばんかいを図る。

体育館を背に防壁とすれば敵は前方だけとなるからだ。


それに対し帝国軍は、「はると君の保護、救出」と言いがかりをつけ攻勢を強める。


運動会の閉幕は近い。


そして、はると君の運命は――。



次回、「異世界転生に気付かず生涯を終える、はると君!」


転生、第5851日目



『  体育館前、対戦  』




男女比の歴史がまた1ページ



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