第4話 悪役令嬢、鈴木元気。 42歳、男性。

この惑星は地球のように美しい。

いや、

魔法と自然が調和し、それ以上かも知れない。


通称、『こいばな』

恋と華が咲き乱れる世界、ローズガーデン。


◆◆◆


【大陸歴476年 3月2日】


中央大陸北西。

平和な時代に軍事強化を進める国家。

ローゼラント王国。


今、王都オプシュタットで卒業パーティーが開かれていた。


平民から高位貴族。

そして王族。

それに国外からの留学生や官僚、代表者までいる。

さまざまな華が舞う美しい会場。


そんな慶事のなか、悲劇が始まろうとしていた・・・。



「ローゼラント王国王太子、

アーダベルト・ノイシュバン・フォン・ローゼラントは、

ダンケ・ゼア・グート侯爵令嬢との婚約をここに破棄する!」


演奏はすでに止まっている。

皆の視線が一点に集中していた。


「そして国家転覆、および反逆の罪で、ただちに処刑する!」


「・・・え?」

ダンケ・ゼア・グート侯爵令嬢はあまりの事に気絶した。

衛兵たちが場外へ運び出していく。


阻止しようと多くの者が動いたが・・・。


意識が戻らぬまま処刑され、彼女は死亡した。


◆◆◆


【数日後の深夜・・・】


※※ 死後強まる死に戻りスキル、発動! ※※


『 間に合ったな 』



「どこがだよ!」


直接脳内に聞こえる神々しい声。

それに悪態をつく少女。


ここは教会地下の死体安置所。

少女は先ほどまで、首と胴が離れていた。

スキルの力でよみがえったのだろう。


王都の美しい街並みは戦火で焼け落ちていた。

この教会も地下以外は灰となり何もない。


ダンケ・ゼア・グート侯爵令嬢。

いや転生者、鈴木元気。 

42歳、男性。は言い放つ。


「おまえ、俺をこの世界に転生させた神だろ?ふざけんな!

死んで全部思い出した!しかも女にしやがって!」


『 半分は当たっている。耳が痛い 』

(※)神の言葉は変換機を通しているため、ふざけたように聞こえる。


「てめぇ!!バカにしてるだろ!

何が聖剣だ。この少女の体に変なもの生やしやがって!

しかもスキルは文字化け。少女がどれだけ苦しんだか・・。くそっ!」


『その説明をする前に、この世界の状況を理解する必要がある。

少し長くなるぞ』


「聞くと思うか?アホだろ、おまえ」


『・・・。』

「・・・」


『 ここで来たか! 』

「何がだよ!」


月明かりを背に、そこには銀髪の美しい少女が立っていた。


「わたくしは、リーゾン公国、第二公女ナッファ・バ・リーゾン。

神託により、貴女を我が公国へお連れいたします」


◆◆◆


神の意志は彼女(彼)に伝わった、と思う。


軍事大国ローゼラント王国の政変は序章に過ぎない。

こののち、大陸全土を巻き込む大戦が始まる。


転生者、鈴木元気。 

42歳。男性。


現在16歳。


男性としての記憶が戻り、男性のように振る舞う。

しかし脳や体は女性のままだ。

徐々に意識が女性へと変わっていくだろう。


『男性が好きになってきたんでしょ?うけるw』

『女性についてはどう思う?ねぇ、今どんな気持ち?』


神託をするたびに彼女(彼)は怒る。

変換機のせいでうまく伝わっていないのだろう。


無視されるようになった。


だが、教会に来たら話を聞いてあげよう。

何かを成し遂げた時の、天の声でもいい。

王様になって困ったときは、もちろん相談に乗るつもりだ。


ネット通販スキルは、文字化けして使えない。

復活スキル『死後強まる死に戻りスキル』はすでに発動済み。

しかし、性剣エクスカリバーが彼女にはある。


がんばるのだ、がんばるのだ。


※※ 神はすべて見ている。


※※※ 神は見届けることしかできない。


※※※※ 神はそのうち、次の異世界転生へと意識が向かった。




"To be Continued"

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