第50話 同罪?
僕は親切な質屋の店員さんに言われた通りお金を稼ぐために、魔物討伐クエストの受付場に向かっていた。
質屋かは受付場まではそこまで遠くはなかった。
しかし…やっぱり、腹が立ってしょうがない。
人の物を盗むなんてなんてけしからん!
僕は人の物を、盗んだことなんてない……
………………いや待て……
今僕は記憶の片隅に閉じ込めていた記憶を思い出す。
そう、それは僕の前世の小学生の頃…
その日は僕は消しゴムを忘れてしまった。その日は運悪く算数と国語のテストがあった。
いくら小学生のテストとはいえその時僕も当然のごとく小学生だ。簡単だったとしても消しゴムが必須な国語と算数だった。
そして、消しゴムを,忘れたことをテスト直前で気づいたのだ。
ところで僕が家に消しゴムを忘れたと思うと思うけど…そういうわけではない。
その日の前日の中休み、僕は数人の仲良しグループと消しゴムをぶつけ合って遊んでいた。
ルールは単純、フィールドは机の上、お互いの消しゴムを指で弾いて消しゴムを落とし合うというものだ。
当時、僕の小学校の空前のブームだったのだ。
そして、僕は消しゴムを弾く力加減をミスってしまった。
そのまま消しゴムはどこかに消えてしまったということ。
僕はその日の帰り道に文房具屋で消しゴムを買うつもりだったが、馬鹿な僕は鬼ごっこに夢中で忘れていた。
で、当日のテスト直前に買うのを忘れたのを今更になって気づいた。
絶望に打ちのめされている僕を察してくれたのか、隣の可愛い女の子が消しゴムを貸してくれたのだ。
僕はその子が消しゴムを貸してくれるのを一瞬だが、拒んだ。
なぜなら、その子の消しゴムが無くなってしまうと思ったのだ。だが、その心配は不要だった。
その子は消しゴムを2個持っていたのだ。そして、その子のおかげで僕は消しゴムをテストで使用することできた。
因みに何故か小学生一、そのテストで消しゴムを使ったと思う。
で…僕はテストが終わってその子に消しゴムを借りたことを忘れてたまま家に帰ってしまった。
今思えば、その次の日に返せば良かったのだが、僕はその消しゴムを返したくなかった。
なぜならその消しゴムは消しゴムバトルにおいてめっちゃ強そうだったから。で…結局その子に消しゴムは返すことはなかった。僕は消しゴムバトルに夢中になり、借りたことを忘れたまま。
その子は返してとも言わなかった。言ってくれれば思い出せたのだが、その子は言うことはなかった。
ただ普通に何事もなかった様に僕に接してくれていた。
で、結果として僕はその子の消しゴムを盗むのと、同じことをしてしまったのだ。
んなことを、今ふと、思い出した。
………あのことはわざとじゃない……。
僕の魔石を盗んだやつとは違う。うん。そうしよう!
僕は開き直って歩いていると何やら騒がしい。
裏路地から聞こえる。怒鳴りだろうか。
喧嘩か?それとも揉め事だろうか?
僕はそっと裏路地を覗き込む。
何やら男3人組が誰かを追い詰めている。
追い詰められているのが誰だかわからないが、こういう場合は大抵美女が追い詰められているのが鉄板だろう…。
そこで、僕が「やめたまえ!」とカッコよく参上する。
そして、「なんだテメー!」と、僕に突っ込んでくる男どもをあっという間に倒す。
そして、その彼女に「大丈夫かい」もカッコよく言う。
あわよくば彼女からお助け代を獲得できるかもしれない!
よし、決まりだ。僕の頭の中で大体のプランは確立した。
あとは実行するだけ。フッ…簡単すぎるな。
「おい!」
僕は裏路地に姿を現す。
「お前りゃ…じゃなくて…お前ら!彼しょを…いや彼女を…いじめ…ん…なんだっけ?とくにかくやめたまえ!」
終わった。
カッコよく言うつもりだったがセリフは噛むし、言葉はまとまらないし、なんてカッコ悪いんだ……。
僕は今すぐその場から逃げだしたい気分だった。
「うるせぇ!俺らはコイツに金を盗まれたんだ!」
男が追い詰めていたやつを指を指しながら大声を上げた。
ん……?盗まれた?
僕はこうやって、出て来てようやくその彼女の姿を見ることができた。
その彼女は…
いやそいつは…
僕の魔石を盗んだやつだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます