第38話 一撃当ててみろ

 「修行?」


 僕はソルメイスに聞いた。


 「はい…修行というか…試練というか…」

 「…試練?」

 「はい…今僕はラノール王国の守護を任されてるのですが…その王国の王女様にキツく言われまして…」

 「キツく言われた?」

 「はい…ソルメイスは弱いのだから修行でもして来い!と…」

 「はは…」


 やっぱ王女様ってドギツイんだな…。


 「そして、王女様に与えられた試練は…ある洞窟の地下に咲いている翡翠の花を一輪摘んでくることです」

 「洞窟?」

 「はい…この先の洞窟にその翡翠の花が咲いているのです。しかし、洞窟には強い魔物がいるというので…僕1人じゃ…心細いというか…」

 

 強い魔物だって?


 行くしかないでしょ!


 おっと、素直にOKしちゃダメだな。


 なぜなら今僕は漆黒のエンジェルのリーダーナイト・メアだからね。


 「フン…まあ、協力してやってもいいだろう」

 「本当ですか!」

 「ただし!条件がある…」

 「条件……ですか?」

 「ああ…この私に一撃でも入れることができたら協力しよう」

 「…メアさんに一撃…」

 「そうだ…貴様勇者なのだろう?貴様の本気を見たくなったもんでな」

 「はい…一応そうですが…いくらなんでもメアさんに一撃いれるなんて…」

 「無理だと思うならそこまでだ」

 「…や、やります!やらせてください!」

 「その意気だ…」


 僕とソルメイスは一定の間合いをとる。


 「剣を抜け…言っておくが出し惜しみはするなよ、初めから全力でかかって来い」

 「は…はい!よろしくお願いします!」


 ソルメイスは剣を抜いて構える。


 ソルメイスが僕に突撃する。


 だが遅い。


 僕はソルメイスの剣を受ける。


 「遅いな…」

 「クッ…」


 ソルメイスは連撃を僕に振るう。


 全て剣で受け止める。


 「その程度か?」

 「ツッ…まだです!」


 ソルメイスは僕から一定の間合いをとった。


 「魔法詠唱…光よ激しく輝け!ライトシャイニング!」


 ソルメイスから激しい光が輝いた。


 なるほど…目眩しか。


 「だが…」


 僕はソルメイスの攻撃を受け止めた。


 「目眩しはいい判断だ…だか私には通用せんぞ!」


 僕はソルメイスを蹴り飛ばす。


 「グッ…カッ…ハ!」


 ソルメイスはうずくまる。


 僕はゆっくりと近づく。


 「ガッカリだ、貴様がこんなに弱いとはな」

 「まだ…やれます!」


 ソルメイスは立ち上がった。


 「ライトシャイニング!」


 また目眩しか。


 魔法詠唱をしていない分すぐに視界は治った。


 「小細工ばかりもう飽きた」

 「じゃあこれはどうですか?」


 「魔法詠唱…敵の自由を奪え!制限せよ!バインドエス」


 僕は動けなくなった。


 「拘束魔法か…こんなものすぐに解いてやる」


 「魔法詠唱…灯火の炎…清らかな水輪…自然の緑陽…融合魔法…3種の革命ファイターリーン!」


 僕に向かって炎、水、草の属性を、合体させた魔法を放った。


 「なかなかな魔法だ…が…」


 僕は一撃で魔法を斬り裂いた。


 「その程度の魔法は私には通じんよ」

 「……そんな…」


 僕は一瞬でソルメイスの前に接近する。


 「ハッ…!」

 「遅い」


 僕はソルメイスを蹴り飛ばした。


 「ゴッホッ…ハッ…」

 「貴様の実力はもう十分わかった…つまらん…もういい貴様を殺すことにしよう…どう死にたい?選ばせてやる」

 「だったら僕の首を斬ってください」

 「わかった…望み通りにしてやる…」


 僕はソルメイスに近づいた。


 「かかりましたね…」

 「!?」


 僕がいる地面が光った。


 そしてそのまま光の魔法に包まれた。


 「罠魔法…ジガエルムーン…踏むと魔法が発動します」


 「まあ努力賞といったところか…」

 「え?あっ?嘘」

 「罠魔法…いい線だったが俺のスピードならかわせるのだ」

 「はぁ…罠魔法をかわす人なんて始めてですよ」

 「終わりだな」


 僕はソルメイスの首を掴み持ち上げる。


 「クッ…ハッ…」

 「そうだ…貴様を殺した後ラノール王国も滅ぼそう…」

 「な…そんな…こと…」

 「貴様の王女も皆殺しだ!」

 「ふざけるな!」


 ソルメイスの魔力が跳ね上がった。


 僕の手からソルメイスは離れる。


 「そんなこと僕がさせない!」

 「うん…いい魔力だ…いいだろう合格だ」

 「は…?えっ?」

 「合格だと言ったんだ」

 「まさか…今までのは…」


 そう。力を出させる方法といったらこの方法が1番だろう。


 圧倒的な絶望と、怒り、そしてキッカケがあれば多少なりとも力は上がる。


 「…僕を試したんですか…」

 「まあ、そんなところだ」

 「酷いですね…」

 「貴様の力を出させるにはしょうがないだろ?」

 「…そうですけど…」

 「約束通り貴様の試練だかを手伝ってやる」

 「一撃をいれてませんけど…いいんですか?」

 「一撃をいれるなんて不可能だろ?」

 「…やっぱり酷い人ですねメアさんは」



キャラクター紹介

ソルメイス

7人の勇者の中の1人。弱強の勇者。勇者なのだがその実力は一般兵ほど。基本的な戦い方や少し高度な魔法は使用可能。



話終歌

弱いからといって戦わないものは本当の弱者だ

弱いからといっても戦う者は強者である

ソルメイス

 

 


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