第36話 嘘つき

 僕はパドレさんの村から4時間ぐらい走り、やっと人間のエリアと魔人のエリアの境界線ともいえる、通称魔の森へ辿り着いた。


 「やっと…着いた…」


 昨日、今日含めて走りまくったから足がパンパンだ。


 久々の筋肉痛ってわけだ。


 魔の森は異様な空気に包まれていた。


 なるほどな魔の森と呼ばれるだけはありそうだ。


 パドレさんいわく、ちゃんとした道もいくつかはあるらしいけど僕は普通に入ろう。


 中は静まり返っているわけじゃかった。


 何かの鳴き声や人が泣いている音など様々な音が聞こえてきた。


 「そういや、魔物も出るだったよな?」


 僕は正直楽しみでしょうがなかった。


 アルネネに魔物がやってくる方法を聞いといて良かった。


 「魔物は自分の魔力で誘き寄せるのがいいぜ!」


 とか言ってたな…。


 ようは自身を餌として認識させるのだ。


 よし。


 僕は魔力を開放する。


 できるだけ全力で。


 とりあえず人間エリアを目指して歩こう。





 「そろそろ決着をつけないといかんなぁ」


 ゴーレン王国の、ゼーゼル王はため息を吐いた。


 ゴーレン王国とは人間のエリアの国の中心の国。


 人間エリアの国は大きく5つの国で形成される。


 「決着と…いいますと?」


 そう聞いたのは勇者の1人全能の勇者、ユーマリア。


 「魔人との戦争じゃよ」


 ゼーゼル王はユーマリアの瞳を見ながら言った。


 「……魔人のエリアへ攻めると、言うことですか?」

 「それも考えている…が、近いうちに戦争が始まるだろう」

 「あちらも同じ考えというわけですね…」

 「ユーマリアよ、来月にでも王国会議で決めようと思うが…」

 「私はいつでも闘う覚悟と準備はできております」

 「うむ…闘えば我ら人間の勝利は確実…なにかの間違いが起こらなければ…良いのじゃが…」

 「し…失礼します!ゼーゼル王…ご報告があります!」


 兵の1人が叫びながらやってきた。


 「何事じゃ…」

 「ラノール王国に、魔人の軍が迫っていると…通達がありました!」

 「…攻めてきたか…」

 「まずいですね、ラノール王国は今軍事力が薄い…」

 「あとどのぐらいでやってくる?」

 「推測ですが…あと半日の内には…ラノール王国に侵入すると思います」


 「今から兵を送っても1日はかかる…」


 ユーマリアは言った。


 「…ラノール王国が耐えてくれることを願うしかない…」

 「そうですね…」

 「直ちに軍をラノール王国に、向かわせろ」


 ゼーゼル王が兵に命令をした。


 「ラノール王国には勇者がいなかったか?」

 「…いますが…期待はできないでしょう」

 「ソルメイスか?」

 「はい。一応ソルメイスが守護としていますが…」

 「ソルメイスに期待はできないな」

 「ええ…残念ながら」

 



 


 森に入ってから2時間は歩いた。


 でも一向に魔物は現れない。


 なんでだ?アルネネの言う通り魔力を開放しながら歩いたのに?


 くそ…アルネネの嘘だったのか…。


 魔王に嘘をつくなんてなんてやつだ。


 如月影斗(ナイト・メア)は自身の魔力が強大すぎて魔物が恐れて近づいていないのに気づいてはいなかった。


 ちゃっちゃと森を抜けちゃおっと。


 「ギャーーーーー!助けて!誰か助けて!」


 森の中に何者かの叫び声がこだました。


 


 






 


 






 




 


 



 


 


 

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