第35話 栄光

 「ギザラン様……ッ!あとは…お任せ…します……」

 

 バリゲードはその最期の言葉を言い力尽き倒れた。


 バリゲードは戦い敗れた。


 「バリゲード、お前の栄光はこの先語り継がれるだろう…よくやった」


 ギサランは最期まで戦士のしての役目を真っ当したバリゲードに賞賛を送った。


 「まさかギザラン…大魔王直々に登場ですか…」


 「貴様はアサシンだな?軍最強が訪ねてきているんだ、当たり前だろ」


 「どうせ後々闘うんですから…今やりましょう」


 アサシンは剣を構える。


 その剣先は数十メートルから見下ろすギザランに向けられていた。


 「やる気か?」

 「ええ、殺る気満々ですよ」

 「やる前に一ついいことを教えてやろう」

 「なんですか…?」

 「ラノール王国に魔王を送った」

 「……それは本当ですか?」

 「まあ、嘘だと思うならそれも良い」

 「…もし本当だとしたら、一刻も早く戻らなければならない…今ラノール王国は勇者も軍隊長も手薄ですからね」

 「どうする…?因みに移動魔法は使えないように細工しておいた」

 

 ギザランは企みを浮かべる表情で語った。


 「…………わかりました…今回は引きましょう」

 

 アサシンは剣を納める。


 「次は戦争で会いましょう…」

 「安心しろどうせ早く会えるさ」


 「ラノール王国に行きますよ」

 「えー今から行くのですか?」


 コココは不満そうに言った。まるで、まだ遊び足りない子供のように。


 「ラノール王国に使いが送られている可能性があります…戻らなければ王国が危ないのです」

 「でも今から行っても早くても1日はかかるのです…」

 「ですから急ぐのです…」

 「わかりました…」


 渋々コココは承諾した。


 アサシン率いる人間の軍は去っていった。


 「もう、来た意味がないじゃない?せっかくおめかしして来たのに!」


 魔王の1人、ニーナは激怒する。


 「落ち着けニーナ…全く…最近の若いもんはすぐ感情的になる…」


 そうため息を吐いたのは魔王の1人、ボゾナゾ。


 「すまないな2人とも、万が一争いになるかもしれなかったのだ」


 ギザランは2人に謝罪する。


 「ギザラン様が…そう言うなら…」


 ニーナは、仕方なく承諾したようにしながら言った。


 「ワシは別に構わんよ」


 ボゾナゾが髭を伸ばしながら言った。


 「ところで、誰をラノール王国に送ったんじゃ?」


 「……それはな……」






 「ん……んん…」


 何かの痛みで僕は目覚めた。


 「痛ててて…」


 パドレの家にはベッドが一つしかないので、自動的に僕が床で寝ることになった。そのため背中を痛めてしまった。


 現に今目覚めたのは背中の痛みのせい。

 床で寝たんだから当たり前だ。いつもはフカフカのベットで寝ていたのでこんな痛みは初めてだ。改めてベッドのありがたさをしみじみ感じた。


 僕は軽く肩を伸ばして起き上がった。


 パドレはまだぐっすり寝ていた。


 「さて、今日出発しないと」


 僕はとりあえず人間のエリアに行く予定なのだが、少し寄り道をしてしまっていた。


 「朝食でも軽く作るか…」


 僕は簡易的なキッチンで、朝食を作ることにした。


 卵…謎の肉…野菜。


 この世界は僕の世界にあったものはいくつかある。


 例えば卵、そして野菜などがそうだ。


 僕はフライパンの上に卵を落とし…焼く。


 そしてフライ返しで卵焼きを作った。


 僕はこう見えて料理はできる方だった。簡単な料理は作れる。


 野菜はレタスがあったので軽く水洗いした。


 朝食は完成した。


 机の上には卵焼きとレタス…そしてなんか、あったパンを添えてある。


 簡易的な朝食だからこれが精一杯だ。


 因みに昨夜はパドレが一撃で倒したフレイムドラゴンのステーキだった。


 ドラゴンを初めて食べたが、驚くほど美味しかった。


 身は柔らかく口に入れた瞬間旨味とともに口の中で弾ける。肉汁と良質な脂のハーモニー。

僕の人生で1番美味しかった肉と言っていいだろう。


 今度ドラゴン狩りでもしようかな?


 ドラゴンの肉が余っていたが、朝食にステーキは胃が重いと思ってやめた。


 おっと、そろそろパドレを起こすか。


 「パドレさん〜朝ですよ」


 僕はパドレを譲りながら言った。


 「ん…ああ、おはよう…メア」


 メア…?あっそっか僕は今はメアだった。


 「朝食を作ってくれたんだね」

 「まあ、簡単なものですけど…」


 パドレと朝食を食べる。


 「これは……」


 パドレが卵焼きを見て呟く。


 「ああ、卵焼きがどうかしたんですか?」


 あっ……


 僕は今更気づいた。


 僕はかなり変わっていて焦げが好きなのだ。


 というか僕の家族はなぜか焼くものには焦げてでてくる。


 真っ黒……まではいかないが、一般と比べて焦げている部分は多い方だろう。


 そのせいか焦げているものが当たり前になり、癖になってしまった。


 えっ……とドン引きするかもしれないが生まれつき食べていたら自然と馴染むものなのだろう。


 そしてこの僕が作った卵焼き…めっちゃくちゃ焦げている!


 6、7割ほどだが焦がして作ってしまった。いつもの癖だ。


 つい如月家でも1番焦げが特に好きな妹に出す感じで作ってしまった……


 妹なら喜んで食べだろうが……


 「ん……これは………」


 パドレが焦げた卵焼きを一口食べて言った。 


 まずい…雲行きが怪しい。


 パドレは食べた瞬間フリーズしている。


 きっと美味しくなくて怒っているのだろう。


 「あの…すみません…僕…つい焦がしちゃって……美味しくないですよね…」


 僕は恐る恐る謝罪した。


 「……懐かしい……な……美味しい…」


 パドレは思い出したかのように言った。


 「えっ…お…美味しいですか…?」


 なんてことだ…パドレも相当変な舌をお持ちになっている…


 「うん……美味しいよ…卵焼きなんて久々に食べた気がする……」


 パドレ少し嬉しそうに言ってくれた。


 「……焦げがお好きですか?」


 僕はパドレに問う。


 「好きだったと思う…今思い出した感じだ…」

 「……お口に合いました?」

 「うん………」


 そしてパドレは美味しそうに卵焼きを食べたのだった。

 

 「もう、人間エリアに戻るのかい?」

 「はい。朝食を食べ終わったら向かおうと思います」

 「気をつけなよ…特に魔の森はそこら辺の兵隊じゃまず命を落とす…」

 「パドレさんが入ったらどうです?」

 「僕レベルだと大丈夫だけど」

 

 まあ、パドレが大丈夫なら僕も大丈夫だろう。


 「まあ、魔の森を真っ直ぐ通るだけならそんな強い魔物とは出会わないだろうね」

 「わかりました…真っ直ぐ行きます」

 「幸運を祈ってるよ」




 「パドレさんお世話になりました…ではまたどこかで…」

 「うん…気をつけて行ってきな」  

 「はい…」


 なんだろう少し心虚しい。

 

 「一目君を見ることができてよかったよ」

 「僕もパドレさんと出会えてよかったと思います」

 「またね」

 「ではまた…」


 僕はパドレに別れを告げ、人間のエリアに向かった。




 「まさかまた会えると思わなかった……

 か———…」


 パドレは名残惜しそうにそう呟いた。


 


 







 





 






 


 




 


 

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