第9話 人間の姿

 う〜ん………


 僕は鏡の前で、自分の姿を見つめる。


 やっぱりこの姿はカッコいいけど僕らしくないな……。人間の姿にすることは、できないのだろうか…。


 僕は、頭の中でイメージをする。かつて、人間だった、自分の姿……目があって、鼻があって、耳があって……って、当たり前か。


 すると、僕の体が激しく光った。目を瞑ってしまうぐらいに……。


 そして、パッと自分の姿を見て驚く。なんと、僕の姿は人間だった姿に戻っていた。


 見慣れた、冴えない顔、ボサボサな髪…かつてこんなに自分の顔を見て安堵したことはないかった。


 どういう原理かは不明だが、望み通りに僕は僕の姿に戻ることに成功した。


 「あ、あなた様……なのですが……?」

 「あ、そうそう、僕だよ。デーモンだよ、わかる?」


 僕の姿を見てネインは驚いた様子だった。


 「デーモン様……新たなる新の……いえ、神のお姿になったのですね!」


 ネインは感激しながら僕に言った。

 

 「神の?いや、人間の姿になりたいと思ってね。ちょっと頭の中でイメージしたらできちゃった」


 僕は髪を整えながら言った。ボサボサな髪の毛を整えるのは昔から難しい。ワックスなどあればいいんだけどな。あるわけないか。


 「とっても、かっこいいです!前のお姿も、今のお姿もどちらも、神秘的なお姿です!」

 「あ、ありがとう」


 意外だな。案外あっさりと。だって魔人と人間って争っているんだろ?その人間の姿になることを拒むことはないのだろうか?


 まっ…いっか、細かいことは気にしない。


 ある程度髪の毛が整ったところで、次なる目標を立てなければならない。


 ゾルデニック団と、戦ったとき思ったのが…思ったより皆んな強いのだなと思った。皆んな無傷で、ほぼ疲れも見せない。それどころかに魔物狩りに行こうとか、頭のおかしいことを言っている。なんとか、言いくるめて一旦待機してもらっている。


 カマセという幹部も大した事なかったな…。だけど、いい経験にはなったと思う。


 僕は皆んなの待機する、王室へと向かった。


    ♢

 「ム…お前は誰だ?」

 「全く、だから、デーモンだ」

 「ああ!そうだったな!姿が変わっていたから、わからなくなってしまった!失敬、失敬!」

 「いい加減覚えろよ、このやりとりは、5回目だぞ?」


 アルネネの記憶力は鶏と同じくらいのはわかった。


 「その姿は人間を騙すためになったの?」


 レーンが聞いてきた。


 「いや…騙す目的とかはないけど…」


 「しかし不思議やんな、姿を変えらるなんて」


 コメコが首を傾げながら言った。


 「きょ、…興味深いですね〜」


 フカシギは僕の体をちょこちょこ触りながら言った。


 「おい、やめろ」

 「少しだけ、我慢してください、ふむふむ…」


 僕の体を引っ張ったりつねったり、時より噛ぶりつかりたりした。


 「いっ…痛い!」

 「我慢してください……研究中です…」

 「も、もう終わりだ」


 無理矢理彼女を突き放した。


 「もう少し、いろいろ試したかったのですがね〜残念です。あ、そうだ、今度解剖とかしてもいいですか?」

 「いいわけないだろ!貴様は頭のいかれたマッドサイエンティストか?」


 フカシギに実験台にされないように気をつけなければ…


 「ああ…今のお姿もカッコいいでござます」


 僕の手をそっと握りながら、ラヴァが言った。


 「ネインに、同じ事さっき言われてたけど、ありがとう」

 「な、……ネインに先を越された……」


 ラヴァは肩を落とした。ネインに先に同じことを言われていたことにショックを受けているんだろう。


 「じゃ、……じゃあ、クールです!クール!」

 

 同じ意味だと思うが、指摘するとラヴァが可哀想なためスルーしよう。


 「ああ、ありがとう」

 「フフ♪」


 ラヴァはネインが言っていない言葉で僕を褒めることに成功したからか少しご機嫌になった様子だった。


 「さて、これからどうするか話し合おう」

 

 僕は皆んなに向けて言った。


 「そうだな、では、どのエリアにするか……」

 「デーモン様!」


 ネインが、慌てて僕に駆け寄った。


 「どうした、ネイン」

 「魔王会に招待されました!」

 「魔王会?」




キャラクター紹介

クロ・シロ

魔王デーモンの部下でありNo.006クロ009シロ。髪の色以外に見分けがつかないほど似ている。同じことを互いに言う癖がある。

 

 話終歌

同じだよ、皆んな

シロ

でも、なぜか違う

クロ

 


 

 

 


 

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