第8話 これぞ力技!

 「グッ、ツー……つ、強い!」

 「その程度?」


 ネインは尻餅をつく男にそう言った。


 「オラオラオラァ!!!」

 

 理性を失ったように、走り回るアルネネ。次々と盗賊を薙ぎ倒していく。


 「こい!チビ!」

 「ムッ!誰がチビだ?」


 レーンは、少しむすっとした。そして目にも止まらぬ速さで、盗賊を斬り倒す。


 「弱いね、あと私は成長を貯めてるだけだから勘違いしなでよね。全く…失礼なやつ…」


 レーンはチビなことを気にしているのである。


 「甘い!」

 「グハァー!」


  エネメシアは盗賊を切り倒した。

 

 「隙だらけです」


 エネメシアは剣に付いた血を払った。


 「お」「わ」「り」

 

 クロとシロは互いの手のひらを盗賊に向けて魔法波を放った。

 

 「魔術詠唱、"光を暗黒に示せ"ライトニング!」


 キララは強力な電気を帯びた魔力の塊を放った。


 「どこを見ている?」


 盗賊の男は、剣と剣で攻防しているラヴァに言った。ラヴァは魔王、デーモンの方を見てばっかりで、戦いに集中をしていない。


 「ぶざけるな!よそ見をしている暇があるなら死ね!」


 ラヴァに斬りかかる盗賊の男。


 「うるさいわね」


 一瞬で剣が盗賊の男の体を貫いた。そして、何度も何度も必要以上に男の体に剣を刺した。


 「口には気をつけなさい。私はデーモン様をずっと見ていたいの。邪魔をするなら死んで」


 血のついた剣を舐めながら言った。


 「ムフ、ムフフ……サンプル回収っと」

 

 死体を怪しく漁るのはフカシギだった。


 「お餅〜攻撃やねん!」


 コメコは巨大化した餅を伸ばしたものを、振り回して盗賊を殴り倒していた。


 「斬り捨て御免!」


 ヤマトは刀のような物で、盗賊達を斬り捨てた。




 ♢ ♢ ♢ ♢

 

 「ハァ、ハァ、ハァ……な、なぜだ?なぜ攻撃してこない?」

 「……いいから、私を殺すつもりで本気で来い。それともそれが貴様の本気か?」

 「ハ、ふざけるなよ!」


 魔力を最大にするザイアン。ザイアンから強い風が巻き上がる。


 デーモンに向けて斬りつけるが、突然の如くかわす。


 うーん。こんなもんか。アルネネより全然遅いし、攻撃も単純。見切るのも簡単だ。なんなら目を瞑っててもかわせる。せっかく、僕の修行相手してあげようと思ったけど、この程度じゃ、得られる経験値も知れてるな。


 「つまらん」

 「アァ?」

 

 デーモンはザイアンの剣を素手で受け止め、掴んだ。


 「ク、…クソ、放せ!」

 

 「もっと、本気を出してくれよ…」


 デーモンは剣を掴んだままザイアンに耳打ちした。


 「ふざけるなぁ!!!!」


 強引に剣を振り回す。それに合わせて、デーモンは後ろに下がった。


 「や、やってやるよ!」

 「ほう……」


 ザイアンは、手を挙げた。


 「禁術魔術詠唱!奴隷の命を奪い、強奪せよ、そして力を示せ!デッド・バルティカル」


 ザイアンの、手には強力な魔力玉が生成されていた。周りのザイアンの手下が倒れていく。


 「こ、この魔術はな、手下どもの命そのものを魔力に変え形成される魔術だ!」

 

 命……を魔力に変える…?命を犠牲にしたのか?許せない。いくら手下でいえど、命を弄ぶなんて。戦って殺し、死ぬのはどちらも自業自得だから、なんとも思わない。だが……


 「命を弄んだ罪を償え」

 「ほざけ、死ね!」


 デーモンに放った。が……デーモンも魔力玉を放ち相殺した。


 「な、なんだと……き、禁断魔術をいとも簡単に……」


 今放ったのは、あの小娘魔法使いに、放ったものを少し強化したものだ。威力が高いのは重々承知だ。


 「貴様は命を弄んだ罪…その身で償え」

 「あ、あああ……」


 デーモンは手の甲をザイアンに向ける。


 「奥義にして、究極……力技詠唱、フン!」


 デーモンの手にはとてつもなく強力で、大きな魔力玉ができていた。


 「くらえ」


 ザイアンにそれを放った。ザイアンは爆発とも共に弾け飛んだ。大きな爆風が起きる。


 ほぼ、前の時のやつと同じやり方なんだけど、うまくいったな。手に思いっきり力を入れただけなんだよね。でも今回は魔力というものを学んだから、前回よりよも強力にできた。

 

 周りを見渡すともう、盗賊は人残らずいなくなっていた。ザイアンの魔術によって、生き残っていたものも、全員死んでしまったんだろう。


 「デーモン様〜!!」

 「ムギュ」


 僕にラヴァが抱きつく。


 「く、苦しい……し、死ぬぅ…」

 「敵を残らず壊滅させました!褒めてください!褒めてくださいよ〜」


 ラヴァが強力な力で僕を抱きしめる。


 「ちょっと、ラヴァ!デーモン様を放しなさい!苦しそうよ!」

 

 ネインがラヴァに忠告する。


 「チッ!うるさいわね!」


 ラヴァはそう言って僕を離してくれた。


 冗談抜きで今日1番死にかけた。


 「なんだか、手応えがなかったな」


 レーンが言った。


 「む、全員無事だな」


 どうやら僕の下部達は僕が思ったよりも強かったらしい。


 とりあえず大魔王ギザランの命令通りに組織の一部を壊滅することができたのだった。




キャラクター紹介

コロン

魔王デーモンの手下にしてNo.005。臆病な性格であるが、優しく仲間思いである。回復魔術、移動魔術など、習得が難しい魔術が使える。

 

話終歌

気持ちをうまく伝えられない。

でも、いいの。

思ってるだけで幸せだから。

でも、望むなら。

この気持ちよ届いて欲しい。

コロン


 


 


 

 

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