波乱の異世界で最強の魔王を目指します

第4話 魔法とは何ぞや？

　「お疲れ様でした。あなた様」

　そう言って、いかにも魔王が座りそうな、椅子に腰掛ける僕の肩を揉んでいるのは、ネインだ。

　そっと僕に甘く朗らかな香りが鼻に通っていく。つまりいい匂いってことだ。

　「まあ、肉体は、全く問題ないけど、精神的に疲れたかな」

　　いきなり、魔王に転生したんだ、そりゃ心も疲れるでしょ。疲れない、心が鋼みたいなやつもいるけどさ。僕の心はせんべいみたいに柔らかい。なので、すぐパキッと折れてしまう。

　「あとの下部達が、集まるまでゆっくりと休んでください」

　「ああ、そうだったね。そろそろ集まりそう？」

「ええ、次期にここに来ると思いますよ」

　しかし、あらためて思い出すとすごく、頑丈だな、この体。あの、チビ小娘の魔法を、直撃しても、かすり傷一つもない。おまけに、ちょっと力んだら、とてつもない紫色の玉とかできるし。やはり魔王なんだな。

　だけど、なんで僕が転生する前の魔王はこれだけの力があるのに、随分と弱いもの扱いされてたんだな。

　そういえばあのチビ魔法使いがなんか言ってたっけ？

　「近いうちに魔人と人間の大戦争が起こる。だからあんたも戦う準備をしておいた方がいいわよ。あんたも強いけど、それでも勇者には敵わないかもしれないわよ」

　って言ってたな。

　勇者か……まあ、多分とても強いんだろうな。そのうち僕を殺しに来たりするんだろうか…。嫌だな。

　でも、力の使い方とか慣れといた方がいいよな〜。よし、ちょっと特訓しよっと。

　「ねえ？ネイン、ちょっと特訓に付き合ってよ」

　「あっ、はい！私でよければ！」

　「チッ」

　なんか、ラヴァが、舌打ちしてた気がするけど、まあいいや。

　ということで、特訓のために、城から少し離れた荒野にきた。本当に、城の周りは何もないんだな。ひどいもんだ。畑とか作ってもありだな。

　「まあ、ここなら少し暴れても大丈夫でしょ」

　「そうですね」

　「じゃあ、ネイン。僕にいろいろ教えてよ、魔力とか」

　「わかりました」

　そう言ってネインは、瞳を閉じた。そして、魔力と呼ばれるそれを体にまとった。ネインの体から、青い炎のようなものが溢れ出ている。

　「それが魔力か」

　「はい、これが魔力です」

　「魔力は、生命のエネルギーそのものみたいなものですね。魔力が、あれば魔法、魔術などが使えますよ」

　「おお！いいね」

　「また、魔力による覚醒……つまり能力的なものも付与されます」

　「それって、特殊能力的なやつ？」

　「そうです、例えば私なら、一定の、体術、剣術、体力、強度などを、底上げできます」

　「ふむふむ、なるほど、じゃあどうやって魔力をまとえるの？」

　「心を沈めて、一気に解放するイメージです」

　「よし、やってみるか」

　僕は心を沈めた。まあ、沈めるって意味が正直理解できなかったから、とりあえず頭を空っぽにした。そして、力んだ。すると、魔力が溢れ出した。魔力が高すぎて荒野に強風が吹いた。

　「さ、さすがですね。凄まじい魔力量です！」

　ネインは、僕からでる、強風に耐えながら言った。

　「うん。悪くないね。で？どうやって魔力を留めるの？」

　「今やった手順を、逆にしてください」

　手順を逆……まあ、心を沈めればいいのか。

　僕は心を沈めた。魔力が収まった。

　「ありがとうね、理解したよ」

　「次は魔法についてお教えします。魔法とは魔力を変化してあらゆる物質や物体へと変化することができます。魔法は基本的に詠唱を唱えて発動します」

　魔法か……。あのチビ魔法使いもなんか喋りながら魔法を発動してたもんな。

　「詠唱って絶対？」

　「魔法を発動するだけなら詠唱はなしでも発動できます。しかし、威力や効果などは詠唱時に比べて大幅に弱ってしまいます」

　「そっか、なるべく詠唱した方がいいだね」

　「はい」

　詠唱か…めんどくさいな。というか僕にその詠唱が覚えられるとも思わないし…。

　「実際に魔法を発動してみましょう。まず私を見ててください」

　ネインはそう言うと手を前に出した。

　「魔法詠唱…炎の燈よ力を示せ」

　ネインの手から炎の玉が形成されていく。

　「火炎玉」

　ネインは火炎玉という魔法を荒野に放った。

　荒野は小さい範囲に燃え盛った。あの火力なら放っておいても時期に火は消えるだろう。

　「魔法のやり方はこのとうりでございます」

　「おっけ、やってみるよ」

　僕はネインと同じように手を前に出して魔力を練る。

　「魔法詠唱…炎の燈よ力を示せ火炎玉！」

　するととてつもなく大きな火炎の玉ができてしまった。

　「わわわ……これど、どうしよう……！」

　「あああ…ど…どうしましょう？」

　僕は焦って前に火炎玉を放ってしまった。

　とてつもない威力だった。案の定荒野は燃え盛ってしまった。

　「や……やばい！燃え盛ってる！」

　「ま……まずいですね！私にお任せを！」

　ネインは魔力を練り言う。

　「魔法詠唱！大地の水よ、その液を浸せ！水流波！」

　ネインの手から水流が放たれた。何とか炎は消化された。

　「あ、危ないところだったね。あのままだったら火の海になってた。ありがとうネイン」

　「いえ、ですがすさまじい威力でしたよ。素晴らしいです！」

　「ネイン、いろいろ教えてくれてありがとうね」

　「お役に立てて、幸いです」

　「じゃあ、戻ろうか………ァ？」

　何が起きた？

　そう言っていた次の瞬間、僕に向かって、赤髪の女の拳がお腹に目掛け突っ込んできた。

　「グッ……ウェ…」

　「ハァーー！」

　そのまま僕は後ろに、殴り飛ばされた。何が起こったか理解するまで数秒かかった。

　「痛たた……」

　「デーモン様！大丈夫ですか？」

　そう、痛かったのだ。この体になって初めて痛みを感じた。今までどんな攻撃も全く痛みなど感じなかったのに…

　「おいおい？どうしたんだよ、デーモン様、いつもなら、ヒョイとかわすのにな？直撃なんて、らしくねーなぁ？」

　そう言ったのは、赤髪の堂々たる姿勢の女性だった。

キャラクター紹介

ナタネ

魔人の中の上級魔法使いである？魔王になりたいと日々修行を積んでいるとされている。基本的な魔術を使える。究極魔法ジ・アルドラを使用可能。実の正体は物語の終盤でわかるだろう。

　話終歌

任せられたらやってあげるわよ。

ナタネ