3.先生巡り

 具合が悪い日々を過ごしていた一年後、まさかの再発。

 なんとなく嫌な予感はあったけれど、動揺した。その日の会計忘れて帰っちゃうところだった。


 その頃主治医は産休中でいない。

 代わりの医師が横柄で。どうすればいいですか? なんで? どうなるの? と聞いたら「様子見でいいんじゃないですかね」イラつかれた。


 私、知ってる。医師が患者にイラつくのは、わからないとき……。


 その晩、私は海外在住のメディアによく出てくる神の手と呼ばれる医師にメール相談した。


 その晩、秘書から電話があった、帰国時に手術してやると。

 家族も知人も大喜びで盛り上がった。彼は全国の病院に拠点を持っており、秘書から指定された近場の病院に行き、弟子の先生の診察を受けた。


 まず言われたのが「僕は、彼が呼んだ患者を振るい落とす役目だ」


 ……え? なんかすごく上から目線ですけど。色々尋ねようとしたら「そんな興奮しないで。ラポールが築けないでしょ」


 ラポール!! それ一般人にわかる? ラポール、心理学用語で信頼関係のこと。私は授業で覚えてましたが、現場でも言わない。


 なんて突っ込みどころ満載な会話。


 とりあえず、ふるいには残った私ですが、半年待てど返事なし。病院にどうなっているのか問い合わせてようやく外来の受診に入れてもらえた。


 神の手は――画像を見て怒りを見せた「お前は悪性だ! ここも、ここも、ここも全部再発する」画像にはまだ何もないのに。

 

「お前呼んだのは誰だ。あ、俺か」


 診察室には静寂が訪れた。呆然としながら私は聞いた。


「……あのどうすれば」無言。神の手は私を見てもくれない。――結局、会話はできなかった。


 なにこれと呆然としながら診察室を出た。あの時の父の悲しそうな顔は今でも忘れられない。


 後で他の先生に聞いた「彼は悪性の手術はしないよ」と。


 結局、前の病院の主治医が育休明けで戻っていたのでそこに戻った。


 その先生は手術を勧めるけれど、あまりにも前回の術後が辛かった。根性で乗り切ってきた私でも無理だった。


 ――手術トラウマという言葉がある。また頭を開くなんて無理!


 後遺症もつらいしネットで探して見つけたセカンドオピニオン外来に行った。


 その先生は私の画像を見て「今後、あなたは再発してもガンマナイフ(放射線)で叩き続けなさい」だった。

 

「脳は開けるたびに少しずつ損傷していくから」と。手術を受けたくなかった私は、ようやく自分の望んだ答えを得たと思った。


 主治医の所に戻り、サイバーナイフ(放射線)を受けたいと言った。(サイバーナイフはガンマナイフを発展させたもの)


 主治医はしてきていいと言いつつ「やっている病院を知らないから自分で探して」と。


 これも謎だった。だってネットで「サイバーナイフ」を探せばすぐに有名病院の名がでてくるし、その病院からも紹介状をだしているのに。


 謎だけど、名の知られている病院に行くことにした。


 でもこれもすごく迷った。ずっと一人で考え続けた。どちらが正解なのだろう、と。手術がいいのか、放射線か。


 ――すごく怖い、という感情を味わった。


 どの先生も手術を勧める、放射線よりも確実だから。放射線をしても腫瘍は消えないから。

 正解はない、決断は自分でするしかない。でも術後が辛かった私は、放射線を選んだ。


 そこで紹介状を持って行き――放射線の先生に怒られた。


 詳しい説明はなかった。あえて言うなら「手術したほうがいい」が主な理由らしい。恐らく放射線が万能だと思うな。手術を第一選択にしろ、でしょう。


 でも、手術で二回も頭開きたい? 


 ぷりぷり怒っている先生にお願いしてサイバーナイフを受けることになった。


 そして当日、はてと思った。

 Xでは皆が受けた線量(グレイ)を書いている。私、最初のも今回もどのくらい、どこにかけるか聞いていない。


 技師に廊下で名前を呼ばれた時、聞いた。


 「私、どこに、どのくらいあてるんですか?」


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