クリーチャー 魔法道具
高校、3時限、魔法術の授業、校庭を利用しての特訓だ。シドはやけに気合がはいっていた。
「今日は大丈夫だ!!」
「お前は無茶しなくてもいいんじゃ?」
「魔法道具をつかった練習をすればいいのに」
そんな忠告を無視して、
「スゥー……」
息をすって呼吸を整えた。今なら、昨日の調子を思い出せるならきっと、能力を発揮できるはずだろう。
「ハアアアアアア!!!」
炎の魔法を手からだした。気合は十分だ、熱気が腕をつたう。
「オオオオ!!!」
歓声がわく。
「……」
しかし、たしかに熱気はわいた。いつもと違う様子は見て取れた。だが炎は発生しなかった。
「ぷっ」
「ぷぷぷ」
漏れ笑いは、しだいに大きな笑い声へと変わっていく。
「あはははは!」
「気合はみとめるがよ!!気迫でまさか音盛っちゃったよ!!」
「オーラは見えたぞ!!炎のオーラが!!」
悔しく顔をゆがめて、額から汗をながしていると教師が肩にてをあてていった。
「まあ、きにするな、努力でどうにもならないこともある」
「いや、俺は本当に……」
口答えしようとしたとき、背後から笑い声がきこえた。
「ぷ、ぷぷぷ……あはははははっ!!」
「おい……お前まで」
「す、すみませんつい、なんだかかわいらしくて」
「くっそ」
なんでなんだ。昨日は使えたのに、そのことがわからずに、その日はずっと頭をかかえていた。
昼食、同じクラスのルカがいつものように自分の席にこなかった。何かあったのだろうか?弁当をとりだし、ヨミンの分までフタにとりわけ、割りばしをわたす。
「ゆっくりたべろよ」
そう発言して気づいた。
(やばい、ずっと俺、一人でしゃべってた?ヨミン相手に)
教室の目は、男女問わずじーっと自分へそそがれている。
「なあ、あいつ、ついにいかれちまったのか?」
「女のコに興味ないと思ってたけど、もしかしたら、本当はむっつりだったのかも、顔はカッコイイのに残念ね」
「魔法が使えないのがそこまでショックだったのか、中二病発症したんじゃね?悪魔にとりつかれているのかも」
そうか。トイレに行くときも、無駄にちょっかいをかけてきているときも、やめろ、とかついてくるな。とか、普通に独り言をいっていたのだ。そりゃ怪しがられるにきまってる。
「シ、シド……」
寂しく食事をしていると、ルカが傍にたった。
「ああ、ルカ!!やっときてくれたか」
「メールで、知り合いの医者の連絡先を教えておくから、いってみて、大丈夫、普通の医者で、もし精神的な問題なら、別の医者を紹介してくれるから」
シドは涙を流して、心の中で叫んだ。
「ルカ~」
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