アイマイ エタニティ・ロッド ビークウルフ

「何いってるんだよ、ルカ?」

「何って、君こそ何をいっているの?」

「いや、ホラ、ここにいるじゃないか、お前好みの美少女が、まるで二次元からでてきたみたいな」

 毛穴一つない白い肌、透き通る瞳、ツヤのある感じ、まるで全くの二次元から生まれてきたような……。あまりに美しさに、シドは目をそらした。

「たしかに僕は空の上で、少女のか、下半身をみたけれど、でもそれが美少女だとは……」

「なにいってるんだ、ここにいるじゃないか、ふれてみろよ」

 そういって、ルカの手をにぎり、少女の肩に触れさせようとした瞬間。

「何もないけど?」

「何もって……幽霊じゃあるまいし」

《ヒュンッ》

「あ……」

 シドはようやく状況を把握した、少女は肩をすぼめて、自分の背後に隠れたのだった。

「本当にみえないのか?」

「みえないけど?」

 少女のほうは、それに驚くこともなかった。

「エタニティ・ロッドは何を起こすかわかりません、体を透明にすることくらい、可能かもしれません、むしろこれは好都合です、“彼ら”に追われている以上……」

「彼らって?」

「ビークウルフですわ、詳しいことは、のちほど」

 少女は自分に体をよせてくる。

「ちょ、ちょっと」

 その様子をみていたルカはより一層、奇妙な目でシドをみた。

「シド……こんな事いいたくないけれど、君が魔法を使えたことは、幻ではない、それは僕も信じている、けれど君が今みているものは……間違いなく幻だと思うよ」

「いや、ここに本当にいるって」

「でも、証明できないじゃないか、証明できないものはない……悪いけど、妹の事があるし、僕は返るよ、今日は本当にその……ありがとう!!」

 バックを背負って、さっさとルカは立ち去ってしまった。

「おい、嘘だろ!?こんな事って」


 シドは再び自分の手をみつめて、魔法を使おうと試みた。だが、一切魔法は発動しない。

「フレイム!!フレイム!!!」

 全く動作しない。いったい、どうしてなんだ。落ち込んでいると、少女は川に珍しそうに手を突っ込むといった。

「何をそんなにきにしていますの?あなたは、特別ですわ、魔法なんて使えなくても」

「いや、そうじゃなきゃ、この世界で生きていくのは厳しいんだよ、変わってしまったこの世界じゃ」

 少女は、丘をのぼった。そして街並みをみて気付いた。塔の形をした、幾何学模様が刻まれた建造物。そして種々の異様な形の建造物が、この世界のあちこちに点在していた。それを見て、少女は思い出した。

(ウィッチ・ノヴァ、100年前に、私の故郷の星の建造物が一度にジッパーに吸い込まれた事件……本当だったのね、本当にここに、故郷のものが“転送”されてきていたんだ)

 緻密にたてられたビルや、家屋、建造物の画一的なデザインの中に、まるで文明が崩壊した世界の建造物のようなもの、苔むした、自然と一体化したような建造物が並ぶ、それはまた、別の意味で壮観な光景だった。そして落ちていく夕日をみながら、少女はつぶやいた。

「今日泊まる家、ありませんわね」

「へ?」

 



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