惑星 偽物の家族 フィアナ
ヨミンが使った魔法、その副作用か、巨大な虹色の球体が出来上がったかと思うと、それは緑と水に覆われた、まるで惑星のような形状になった。
ヨミンは心の中で叫んだ。
「私はまだ“自由”を手にしていない!!やっと過去から抜け出せたのに!!偽物の家族から!!!」
しかし、ヨミンの願いもむなしく、彼女は井戸の底へひきづられていく、下を見下ろすと、黒い影があった。それはまるで、古に伝わる魔王のような角の生えた黒い人影であった。
「やだ、やだ、やめてよ、やめてよーーーー!!!!助けて!!フィアナ!!!」
その時、異世界の遥か彼方にて、科学者フィアナは牢獄の檻の中にいれられていた。ボロボロの鉄の檻と、石造りの地面とを交互にみながら、ささやいた。
「ヨミン……」
その直ぐ傍に、ある男が現れた。中央で分けた髪、まるで人形じみた顔つき、下がり目に、するどくしり上がりの眉。筋肉質であり、その右手は、うろこでおおわれていた。フィアナはそれをみて、生唾を飲み込んだ。
地球地上では。クランクが、自分の顔に影がかかるのをみとめて、緑の球体を見上げていた。
「なんだ、なんだよ……まさか、こんな事って、俺が一番バカにしていた相手に、俺は、こんなに、圧倒的な“魔力差”をつけられるなんて」
「はっ……だからいったろ、クランク、真面目に努力しているやつは“思わぬ成果”を出すもんだぜ」
「っ……」
クランクは、何かを言い返そうとしたが、苦し紛れにこんなセリフを吐いて逃走した。
「お前だって、このでかい技じゃ、ひとたまりもない、なんとかしやがれ!!」
シドも、内心怖れていた。が、例によって“ブラフ”をかけざるをえなかったのだ。初めて魔法を使ったことにより、体の震えがとまらない。この上、頭上の異常な球体など相手にできない。
「お前も……早くにげろ……ルカ」
そう言い終わるか終わらないかのときだった。見上げるルカの目の前で、球体は収縮し、周囲のものを吸引しはじめていた。石ころ、枝、雑草、周囲のものをまきあげて、ついには、少女と杖さえもまきこんでいく。
「いやあああ!!!」
その様子は、ルカもはっきりとみえた。だがその球体に吸収され、また球体が圧縮され、消え去った時に、その姿ははっきりとみえなくなってしまった。その代わりに、空間に無音をのこして《ウィッチ・ジッパー》は消え去ったのだった。
「なに、いまの……シド」
《ドスン!!》
すさまじい音に目を向けると、自分のすぐ前で、シドが頭を地面にうずめていた。
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