知ったかぶり。魔法(なぜ使える) デミヒューマン(透明)

《シュシュシュシュッ》

 天から降ってくる火の玉を、器用によけるシド。クランクは、何も知らずにクランクに攻撃を仕掛ける。彼のスキル“炎特化”により、彼は炎系のスキルしか使えないが、魔法そのものの力量は、魔法科の優等生にも匹敵した。

《フッフッフッ》

 たぐいまれな反射神経と、フットワークで、それをいとも簡単によけていくシド。

「仕方ねえ……」

 クランクは左手に力をこめて、術式を構築した、左手は覆い隠されその魔法陣はシドからみえない。その間もクランクは片手で攻撃をつづけた。そしてシドが、一呼吸置いた瞬間だった。

遠隔魔法ディスタント・フレイム

 その瞬間、シドの背中から火が現れ、音もなく彼にしのびよった。しめた。とクランク、しかしその瞬間、シドは背中をまるめた。

「!!?おかしいだろ!!」

「何が?」

「お前の身体能力が高いのがわかるが、どうして、背中からの魔法が避けられる

、化け物か!!」

「いや……なんとなく」

 シドは、ただ、天から降ってくる“女が放つ火”をよけているだけだ、だが、それはなぜか、相手の攻撃と同調していた、ふと気づいた。これはまさか、魔法に反応しているのではないか?と。

「まあそうだな」

 突然シドは前髪をかき分けた。そして格好つけて言い放つ。

「俺も魔法に目覚めたってワケさ」

「嘘をつくな!!」

「クランクともあろうものが、知らないのか?いまはプロの間では、リフレクトの魔法で、疑似遠隔魔法を使うのがはやっているんだよ、いや、お前みたいな不勉強な奴が知るわけがないか、“ウィッチ・ザ・レスト”の流行など」

「!!」

 頭に血が上ったクランクは顔を赤くして、怒りマークを具現化したようにひたいに血管を浮き上がらせた。

「お前に、何がわかる、知っているさ、そのくらい」

「じゃあ、気を付けた方がいいぞ」


 シドには考えがあった。自分のフィジカルで耐え抜いて“普段通り”我慢くらべをしてもかまわないが、今日は“特殊な状況”がある。クランクの魔法に“謎の少女”“ロッド”が反応するのならば、それを利用すればいい。

「なっ!!」

 クランクが驚いたのも無理はない、シドはクランクの下に潜り込んだ。格闘戦では有利な場合もあれど、魔法を使うものにとっては常識である。FPSと同じ“上が有利”

(こいつ、バカか!!)

 逃げる場がないシドにむけて、両手を広げたクランクが、両手に炎を抱えて、手底をあわせて某人気漫画のように、勢いをまして射出した。

「死ねええ!!!」

 シドは、しめたとおもった。上空で高く掲げられた“ロッド”がこちらめがけて火球を射出する様がみえた。

 シドは彼が攻撃をやめないように、自分も手のひらで魔法をためるふりをした。

「エアロ・バレッド!!」

 その瞬間、信じられない事がおきた。上空から放たれた炎は、自分をめがけてとんできたのだ。というより、空中で軌道を変えたといっていい。なんとかして避けたが、手にそれが燃え移り、なぜか炎で包まれた。

(終わった)

 そう思った。周囲からは頑丈でフィジカル強者というイメージがあるが、心の中では人を助けたり、庇ったりする時に感じる“痛み”は並大抵のものではない。また今日も魔法で打ち抜かれることに耐えなくてはならない。

「はあ」

 思わずため息が口をついてでた。しかし、目の前に広がる光景は、まったく別のものであった。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る