空中ブランコ
「ふざけんなああ!!」
土手をすごい勢いで滑り降りてきた男。
「うげえ!!やべえ!!“シド”だ!!」
「逃げろお!!!」
ドレッドとツッパリは逃げていった。しかし、意外にも一人だけそこに立って残っていた。丸刈りだった。ずしんと仁王立ちをし、こぶしを握っている。
「よお、“クランク”」
「よお、シド!!」
前髪が無造作にちらがり、少し茶色まじりの髪。切れ長で鋭い、それでいてやさしさも感じるような少したれている感じの目。
《パンッパンッ》
丸刈りは、胸の前で拳で手のひらを打った。
「よお!!」
「よく逃げなかったな!」
「本気でいってんのか?それはこっちのセリフだぞ」
ルカが、あわあわと口をてのひらで覆った。彼は思った。
(この人、クランクなんて名前だったの!!あ、まずい、忘れないと)
「俺の仲間を傷つけるやつは許さねえ」
「じゃあ魔法を使ってみろよ!!!“万年非魔法使い!!”」
クランク(丸刈り)は、火の玉を拳から放った。その弾にむかって、主人公は拳をうった。
「馬鹿な!!いかな“フィジカル最強”といえど、真正面で受けるなど!!」
クランクが失笑した瞬間だった。弾は主人公の拳にはじかれた。
「リフレクト!!」
「!!?」
クランクは混乱した。なぜなら、ルカ、シドのコンビは、高校で不良にすら見下されるほどの“魔法最底辺”その二人のうちシドは、“魔法すら使えない”。つまりシドの“魔法が弱い”と比べ者にならないほどの“魔法弱者”である。しかし、その爆発的な魔力量に起因してか、謎のフィジカルの強さをもっているかれは、しつこさから周囲からこう呼ばれていた。“粘着王”と。
《ブルブル》
頭を振って、正気に戻るクランク。
その時シドは、空をみて指さした。
「なんだ?あれ?」
シドが“ソレ”に気づいたのは、ルカとは別の理由だった。シドには昔から“女性忌避能力”が備わっている。それは、小さいころから姉に道場でいじめつくされてきたからだ。そして、シドは、自分の“弾いた”火のたまが、空中に浮かぶ“ソレ”に飛んでいくのが見えた。それはやがて、彼女のお尻にぶつかった。そもそも彼女は、空間からおしりだけ出しているので、もはやそれは彼女そのものといえた。
「ひゃん!!!」
甲高い色気のある声をだしたあと、今度はお尻とは違うものが姿を現した。それは、ファンタジー作品でよくある、美しい宝石が上部にはめ込まれたようなロッドが姿をあらわした。それは光輝くと、火の玉を射出した。
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