ウィッチ・ザ・レスト
ボウガ
偶然と運命 シドとルカ
土手の下、河川敷
「ふっふふ……」
「今日こそ厄介ものの“シド”がいねえ」
「最弱スキル使いのルカさんよお!!」
女の子のような顔をした、肩までかる長髪に眼鏡をしたルカは、3人の不良にからまれていた。丸刈り、ドレッド、ツッパリ(リーゼント)と彼は愛称をつけている。見た目そのものを覚え、名前を憶えてやらないこと、それがまず彼の“復讐”であった。彼は決意していた。いずれ彼らを見返してやる、そのために今は耐えるとき。年をとればとるほど、知恵や知識が、腕力を凌駕する。社会とはそういった類のものだ。
(??)
ルカは空を見上げる。いま、異変がおとずれた気がしたのだ。100年前に世界をおおいつくすほどにあいた時空の裂け目、通称
《
と。
「あ、あれ!!」
ルカは空に指をさした。そこにはいまくっきりと、何か卑猥なものににた切れ目がさけている、いや、と頭をふる、あれはジッパーだ、左右に歯車がまるでジッパーのように交差し、空間をおしひらいていて、その向こうに、まるでフルイドアートのように、水にアクリル絵の具がまじって多種多様な色と模様が完全にはまじりあわず共存して幾何学模様を描くような世界がひろがっている。
(あの向こうには何があるんだろう)
ふと、情景に心惹かれ、その向こうに転生していきたい気になる。100年前に世界に落下し、異世界の街並みや、塔、球体や、幾何学的な謎の造形物たち(パラレル・アート)をこの世界に“共存”させた本体、そして時折世界を割けさせ、気象学者に新たなる難問をつきつけた“切れ目”が今、空のうえ、すぐ目の上にひろがっていた。
「おい、ふざけてんじゃねえよ、そんな手にひっかかるか」
「おまえ、なんのつもりだよ、つまんねーんだよ」
「漫画の読みすぎた、ひっかかるか」
「違う……違う《ウィッチ・ジッパーだ》」
《は??》
3人同時に驚いて振り返る。が、それと同時に、そのジッパーはしまる。だが、汚いことだが、そのしまったケツの端っこに何か、ぶら下がるものがみえた。
「何だ?あれ?」
「おい、おまえ、ふざけんじゃねーよ、何もないじゃねーか」
「いやいや、みえないのか?あれ女の子が」
そう言いかけたとき、またジッパーはひらいた、そして、その“異世界”の色とりどりの幕がおしだされ、女の子のお尻をひっぱりだそうともがいている。
「はあ?」
不良が振り返る。同時にジッパーが閉じる。
「なんもねーじゃねーか」
3度ほど繰り返したあと、あきれた不良の一人、ツッパリがルカの襟首をつかんで叫んだ。その背後で丸刈りがいった。
「いや、今振り返った瞬間何か……」
「なんだよ」
「世界が閉じたっていうか…」
そのとき、遠くから怒声が響いた。
「コラアアアア!!!!」
すさまじい勢いで走ってくる青年、ルカと同じ高校の制服をきた高校生男子。おでこに傷をもつ、こわもて気味の男が、全速力で突っ走ってくるのだった。
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