003
タウンのカフェにサアキス、アステイル、黒薔薇姫は居た。
カフェといっても飾りに近い。
HPの回復には〈ティナト〉を使えば問題はない。
わざわざ〈カフェ〉や〈レストラン〉に入ってまでHPの回復は効率が悪い。
と、いうわけで現実世界の雰囲気を味わいたいプレイヤーや待ち合わせなどに使う事が殆どだ。
三人の囲うテーブルにティーセットが三つ置かれていた。
サアキスは一口飲み受け皿に戻すと「何が訊きたい?」と、口を開いた。
「えっと、黒薔薇姫、でいいんだよね?」
アステイルの言葉に肯定と黒薔薇姫は頷く。
「彼女の言ってたギルマスって言うのはギルドマスターの事ですよね」
「ああ、その解釈で合っている」
「アステイルはギルドとか興味ないの?」
黒薔薇姫は会話に混ざる。
「ウチはいい所だよ〜ギルマスはトッププレイヤーだし、ギルメンも二百人近く居るし〜」
「友人の誘い方、雑じゃないか?」
「トッププレイヤーって事はサアキスさんてそんなに強いんですか?」
アステイルの問に黒薔薇姫が応える。
「この〈サグディード〉では五本の指に入ると思うよ」
「あっ、肝心な事訊いてなかった。ギルドの名前はなんって言うんですか?」
黒薔薇姫は補足として伝えた。
「ギルドの名前は幻の刀から拝借してるんだ」
そして、アステイルの質問にサアキスが応えた。
「〈
†
「これがギルドの制服なんだ?」
アステイルはくるりと真新しい白と赤を基調としたコートとスカートを翻した。
「でも由、じゃなかった。黒薔薇姫は黒のゴスロリだよね。形や色が全然違くない?」
「私のはクリエイションで作ったんだ。制服着用の強制はないから会議や集会とか集まりの時くらいに着るくらいだよ」
「会議?」
「これでも私ギルドの幹部やってるから」
「幹部?副団長とか?」
「副団はライト。私はギルドの二番隊隊長やってる」
「隊長って凄くない。そんなに強いんだ!」
「それより良かったの?そんな簡単にギルド決めちゃって?」
「誘ったのは黒薔薇姫でしょ。今更言う事じゃないよね」
「そうなんだけどねっ」
「別に後悔はないよ。サアキスさん優しいし、色々解りやすく教えてくれる。それにあの疑う事しか知らない黒薔薇姫が信じてる人だからね。もしかして、想い人とか?」
「違うわよっ。尊敬はしてるけど恋愛感情じゃなくて憧れよ」
「そう、なんだ?」
「サアキスは二代目のギルマスなんだよ。ここに至るまで色々あったんだ」
「二代目?」
「そう、アルヴァンヘルムは初代ギルマス・
「その久遠さんは?辞めちゃったの?」
「リアル事情でゲームそのものを辞めちゃったんだ。まぁ、いま話しても仕方がないから追々ね」
「最後に一つ提案していい?」
「なに?」
黒薔薇姫が首を傾げる。
「黒薔薇姫って長くて面倒だから姫って呼んじゃダメ?」
「えっ、別にいいけど、そんな呼ばれ方 初めてかも」
「それじゃ、これからよろしく姫っ」
「ええ、それじゃ私そろそろ落ちるから」
黒薔薇姫はメニューを呼び出しログアウトボタンをタップ。
しかし、「ブブー」と唸り弾かれた。
「…えっ?…嘘?」
再度ログアウトボタンをタップ。
弾かれた。
「…えっ?」
「どうしたの姫?」
「ログアウト、出来ない?」
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