第35話
椅子に座っていた紅葉が立ち上がって、無言でにじり寄ってきた。前髪の隙間から鋭い眼光が覗いている。心霊的な恐怖ではなく、捕食されるかもしれない恐怖に松寿は曝された。
逃げなければ。
松寿は立ち上がりかけたその時、紅葉の背後に見える壁掛け時計が松寿の目に飛び込んできた。極限状態の松寿の脳裏に、弟と幼馴染の姿が浮かんだ。今日、松寿の母親は帰りが夜中になると言っていた。父親はいつも帰りが遅い。今自宅に楓がきていたら、親のいない家に梅寿と二人きりということになる。
「…紅葉、俺帰るわ。送ってもらえる?」
「え?」
「悪い、話しはまた今度で。まじで、今すぐ帰んないと」
竹彪と彩葉と食事に行ったあの二人が、竹彪と彩葉の話を聞いたり目の前でイチャイチャされた今日の今日、一線を越えてもおかしくない。松寿の真剣な表情に紅葉は頷き、扉の外へ声をかけた。一緒に玄関へ向かう。
車に乗り込み、押し黙る松寿に紅葉も無言だった。松寿はひたすら、『間に合え』と『とりま逃げ切った!』の2点のみに脳を支配されていた。
そして木村邸。松寿と梅寿の実家である。
梅寿の部屋で、梅寿と楓は言葉少なくベッドに並んで腰掛けていた。二人は他愛のない話を繰り返しながら、もじもじと行動に移せずに膠着状態が続いていた。
梅寿はもじもじしながらもバキバキになっていた。さっきの竹彪からの贈り物もあり、臨戦態勢で準備は万端だ。いつ行動に移すか、どう誘ったらいいのか。ここで動かなければ男が廃ると梅寿が悶々と考えていると、指先に何かが触れた。いつの間にか、楓が距離を詰めてすぐ横に座っていた。楓の指が梅寿の手をなぞる。
「ウメちゃん…ちゅー、して、いい?」
楓は首まで真っ赤になっている。楓は梅寿の顔を覗き込んで梅寿の手を握った。楓の唇がゆっくり、恐る恐る近づいてくる。梅寿は待ちきれず、唇を重ねて貪った。驚いて逃げようとする楓の腰を抱いて密着する。何度も吸い上げてから舌でなぞると、楓はやっと薄く唇を開いた。梅寿は舌をねじこむ。
「んっ!んん、んぅううぅ?!」
楓は目を開いて梅寿を見た。幼い頃からずっと一緒にいたが、ここまで顔を寄せることなんてなかった。長いまつげも混乱している大きな瞳も、近すぎて少しぼやけて見える。楓の温かい腔内を堪能しながら、梅寿は楓をベッドに押し倒した。ずっと元気になっている下半身が楓に当たってしまうが、かまっている余裕はない。キスをしたまま楓の制服のシャツをたくし上げていくと、楓は大きく口をあけた。
「や、ウメ、ひゃっ…ちゅーだけ、らめ、」
舌を絡め取られながら、楓は必死に訴える。梅寿がやっと口を離すと、楓は大きく肩で呼吸をしながら這っていく梅寿の手を掴む。楓の小さな手は梅寿を止めようと、必死に力を込めていた。
「や…優しく、するから」
楓の、梅寿を引き剥がそうとしていた手が止まった。梅寿も力を込めて己の手を止める。力を込めすぎて震える梅寿の腕から、楓の手は離れていった。楓は目を閉じて、小さく頷いた。楓の小さな手は顔の横で固く握られている。楓が可哀想なほど震えているが、梅寿は止まれなかった。楓のシャツのボタンを外し、中に着ているTシャツを捲りあげるとまた一つ見慣れない布が見えた。そういえばさっき話していた、これが楓のブラジャーのようだ。レースをあしらった華美なものではない。色気のない幼さの強調されたブラに、梅寿の脳内で何かが引きちぎれていった。自己主張の少ない控えめな膨らみが、目の前の布の中に隠されている。鼻血が噴き出しそうになるのをこらえて手をかけると、楓がびくんと体を揺らした。
「「あっ」」
梅寿が慌てて手を動かした弾みで、ブラが上にズレた。楓の控えめなおっぱいがあらわになった。見覚えのある薄ピンクの突起が張り詰めてそこにある。梅寿が手で覆うと、控えめだが確かに柔らかい膨らみがあった。
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